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「カジノ建設」のために大阪万博を“不正利用”か

維新が湯水の如く使う1兆円の血税

2023.09.26 

by 神樹兵輔

当初の予定より約1年遅れの2030年秋頃の開業を目指し、整備計画が進む大阪IR計画。

反対の声も多く聞かれるカジノを含むIR建設は、推進派の主張通り地域に活力をもたらすことになるのでしょうか。

投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹さんが、「今すぐ中止すべき」としてその理由を解説。計画を強力に進める維新の会の暴走を止めることこそが必要との持論を展開しています。



☞ もはや「日本破壊の会」。今すぐ止めるべき維新の会のカジノ計画

当初は、カジノだけが、やたらとクローズアップされていたのですが、さまざまな議論を経るうちに、「カジノを含む統合型リゾート施設」という構想に落ち着いたという顛末だったのです。カジノで海外からの富裕層の観光客を呼び込み収益を上げるとともに、国際会議場や展示施設といったMICE施設」を中核として、ホテルやショッピングモール、レストラン、アミューズメント施設、劇場、映画館、スポーツ施設、温浴施設などを一体的に構成した複合観光集客施設が、「IR」というわけでした。

ちなみにMICE施設」とはMeeting(会議・研修・セミナー)、Incentive tour(報奨・招待旅行)、Convention(各種学会、大会、国際会議)、Exhibition(展示会)の頭文字をとった造語です。

参加者が多いため、一般の観光旅行に比べて消費額も大きくなることが期待されるといいます。

日本でも米国のラスベガスやマカオ、シンガポールのような集客施設を作って、国際観光の推進に役立てたい──というわけなのです(世界では140以上の国、地域でカジノそのものは解禁されており、先進7か国のG7でカジノが非合法なのは日本だけです)

しかし、この「統合型リゾート」ですが、なぜ、つねに一緒にカジノがくっついてくるのか──ということが、議論を大きく左右してきました。

それもそうです。日本にはすでに公営ギャンブル(競馬・競輪・競艇)があるうえ、民営ギャンブルのパチンコまであります。

また、近年ではオンライン・カジノゲームも盛んです(日本から接続してオンライン・カジノを行うと賭博罪になり、50万円以下の罰金もしくは科料となります。また常習者は3年以下の懲役となります。日本では発覚しづらいせいか少ないものの、それでも毎年十数人が検挙されています)

ただでさえ、ギャンブル依存症にかかり、借金苦に陥る人が多くいるのに、ブラックジャックだのポーカーだのといったカードゲームや、ルーレットなどのテーブルゲームにまで博打の種類を増やし、新たな射幸心を煽る必要性など、どこにあるのか──という懸念と反発の声を呼び起こしてきたのでした。

また、別の言い方をすれば、近年海外のカジノには、ものすごく多く備わっている数字やマーク合わせのスロットマシンなどは、すでに日本のパチンコ店でもお馴染みのマシンであり、パチンコをさらに普及させてどうする──といった声までを惹起させたわけです。

「カジノ」は呼び水にすぎないという理屈も横行!

統合型リゾート施設には必ず「カジノ」を併設させる──というのには、それなりの理由がありました。

カジノが上げる収益で、全体の施設の整備・運営を賄うためでもあるからです。

たとえば、カジノ成功のお手本とされるシンガポールですが、独立・建国の父と称される故リー・クアンユー元首相は、開発独裁で国を繁栄に導いてきたものの、カジノについてはずっと反対していました。シンガポールでカジノが解禁されたのは、このリー・クワンユー首相が事実上の政界引退を果たしたあとの2005年のことであり、実際にカジノがオープンしたのは2010年でした(統合型リゾート施設「マリーナ・ベイ・サンズ」、「リゾート・ワールド・セントーサ」の2つが開業)

シンガポールは、もともとアジアの中核的な国際都市としての自負もあってか、経済的、観光的な地位の低下にはことさら敏感でした。

とりわけ、すでに1930年代からカジノを中心とした観光政策をとり続けてきたマカオ(ポルトガル領から1999年中国返還)が2000年代に入ってから急激に隆盛していくのに、大いに刺激されたともいえるでしょう。

実際、マカオは、中国返還後の本土からの中国人たちの渡航の増加もあって、カジノ収入においては、2006年に米国のラスベガスを抜いて世界一にまで躍り出ています(現在は中国のゼロコロナ政策のあおりを受けてボロボロ状態です)

そこで、シンガポールもマカオを見習ってカジノを解禁し、観光事業をさらに強化するべく、カジノ解禁・実施へと大きく舵を切ったのでした。その結果、2つの統合型リゾート施設の開業後の2010年には、シンガポールへの海外からの来訪者数がいきなり前年比20%アップして1160万人となり、その後2019年には1910万人にまで伸びていきます。また観光収入は、カジノ開業前の2009年の90億ドルが、カジノ開業後の2010年には140億ドルに急伸し、2018年には200億ドルに達し、GDP6を占めるまでに到ったのでした。

カジノは統合型リゾート施設全体の3%を占めるにすぎませんが、リゾート施設全体の収益の7580%を占めているのです。

そして、カジノが占める収益割合は、リゾート全体の成功によって年々下がるともいわれています。

たとえば、ラスベガスは当初全体の7割を占めていたカジノ収益の比率が、今では地域全体の繁栄で、3割程度にまで減っています。

統合型リゾート全体が成功すると、カジノからの税収アップや、国全体の観光収入のアップがもたらされ、国全体を潤すまでの規模で収益が向上する──というわけなのです(シンガポールのGDPは、2010年から2022年までの13年間で2倍に成長しました)

ゆえに、統合型リゾート施設においては、当初からのカジノの設置が、施設全体を牽引するエンジン役ともなり、ひいては国家収入を増大させるほどの効果がある──というわけなのです・・・これが、カジノを統合型リゾート施設において、スタート時点からけっして外せない理由ともなっているのでした。

日本でのIR事業候補地は事実上「大阪」ひとつになった!

さて、日本での「カジノを含む統合型リゾート施設」の行く末ですが、その後どうなってきたのでしょうか。

IR法では、日本において3カ所のみのカジノ開業が認められることになっています。

そこに名乗りを上げた自治体は、東京・台場、愛知・常滑、大阪・夢洲、和歌山・マリーナシティ、長崎・佐世保ハウステンボス、北海道・苫小牧、千葉・幕張、神奈川・山下ふ頭……などがありました。

しかし、コロナ禍もあって東京と愛知は誘致検討自体を中断、その他の自治体は議会の反対やら、さまざまな諸事情で誘致申請自体を見送り、事実上の撤退と見込まれているのです。残ったのは、アジアに近いというメリットのある九州の「長崎」と、関西国際空港に近く、2025年の万博とセットで絡められた「大阪府・市」の2地域が区域整備申請を行ったのでした。

そしてその結果、最終的に20234月に「大阪府・大阪市」が、国から唯一正式に「カジノを含む統合型リゾート施設」としての設置の認定が下ったのでした。

しかし、ここにきて大阪府・市は大きな問題を抱え込んでいます。その実施場所がヤバイからに他なりません。

2025年万博とIR整備を行う予定地である「夢洲(ゆめしま)」そのものの問題が大きくせり出してきたからです。

まず万博のほうですが、参加国からのパビリオン建設の手続きが大幅に遅れ、はたして2025年に万博を開催できるのか──という瀬戸際問題が生じているとともに、そもそもゴミ捨て場だった夢洲への交通アクセスの悪さ(埋め立てた島・夢洲に通じるのは「夢洲大橋」と「夢咲トンネル」の2ルートのみ)と地盤の悪さ(液状化懸念や土壌汚染)がネックになっており、解決が見通せなくなってきているのです。そして、問題はそれだけではありませんでした。

夢洲の開発そのものにあたっての様々な開発費に関わる疑惑までがクローズアップされるに至っているからです。

 

2025大阪万博」と「統合型リゾート開発」で1兆円を超える税金投入が無駄になる可能性も!

大阪府と大阪市といえば、「大阪維新の会(2010年結成)」と「日本維新の会(国政を目指し2012年結成)」の牙城です。

大阪維新では、大阪府議会の議席で単独過半数、府下の18の市議会で議会第一党、大阪府知事と市長の他に20の地域自治体で首長を選出しています。

また「日本維新の会」は現在衆参で62人の国会議員を擁する国政政党にまで躍進しています。

2008年に大阪府知事に初当選した橋本徹氏は、その後に大阪府と大阪市の二重行政や二重投資からくる弊害や無駄の解消を図るべく「大阪都構想」を掲げました(前任の大阪府知事・太田房江氏が提唱した「大阪都構想」とは考え方が異なるとして、太田氏自身は維新の「大阪都構想」を支持しなかった)

そして2回もの住民投票(2015年と2020年に大阪市を廃止し特別区設置の可否を問うた)を実施したものの、それでも実現に到らなかったことでも知られます。

しかしながら、関西地区での「大阪維新の会」と「日本維新の会」の人気は絶大なものがあります。

「身を切る改革」とかの思い切りのよいスローガンが、大阪人には受けるからなのでしょうか。

東京の人間にはちょっとわかりませんが、なぜか関西での人気がものすごい──ということには感心半分ですが、訝しくも思わされるのです。

しかし、「大阪万博」と「カジノを含む統合型リゾート施設」の両方を実現するのに、産業廃棄物や土砂などのゴミを集めて埋め立てた「夢洲」を選んだことには大いなる疑念を掻き立てられます。「なんでやねん?」ということなのです。

2018年に「国際博覧会事務局(BIE)」で、BIE加盟170ヵ国での2回に分けた投票で、大阪万博の誘致が決定された時点では、まだ「夢洲」は実施予定地ではありませんでした。

しかし、「夢洲」で万博をやるのだ──といきなり決めたのは、当時の大阪府知事の松井一郎氏だったのです。

狙いは、国策となる大阪万博の予算で、カジノを含む統合型リゾートの開発整備まで行ってしまおう──という意図が丸見えなのでした。夢洲は、2025年の大阪万博を行うのには不適切な場所という指摘が多かったにも関わらず、断固としてここに決めたわけでした。

何が何でも、カジノ施設(統合型リゾート)をつくるために、「2025年万博」を不正利用したともいえるわけです。

当初から夢洲は、軟弱地盤の上、土壌汚染の処理のために、建設費が莫大にかかるといわれていました。

また、夢洲に行くルートは、「夢咲トンネル」と「夢橋大橋」の2ルートしかなく、渋滞の懸念や、一日の来場者数が23万人も見込まれるのに災害時に避難出来るのか──といった問題があるのに「夢洲しかない」──として万博会場に決定したのでした。

現在、夢洲まちづくり事業だけで、約4450億円、運営費などの関連事業費が4130億円、さらに万博跡地やIR用地の液状化対策などの将来の予定事業にも2800億円もかかることが、すでに見込まれています。ゆうに、1兆円を超える血税が、これから国と大阪府や大阪市から出ていくことが予想されるのです。

もちろん、これだけでは終わらないでしょう。これからも費用が膨張し、2021東京五輪の二の舞になることは間違いない状況といわれています。

いつものことなのです。ズルズルと後から税金が垂れ流されます。

夢洲の土地に万博のパビリオンやカジノを含む統合リゾート施設を建設していくには、もともと非常に無理がある話──として当初から懸念されていたことが、いま現実になろうとしているわけです。

 

「万博」も「カジノを含む統合型リゾート施設」も即刻やめてしまえ!今中止すれば、まだ数百億円の損失ですむ!

いまどき、海外ではカジノもインターネットで行われる時代です。統合型リゾート施設をわざわざ夢洲に作らなくても、日本の各地に箱モノはいくらでもあり余っているのです。

カジノの収益を見込んでいますが、計画通りにいく保証はまったくありません。シンガポールの二番煎じの保証はないのです。

儲からなかったら、誰が責任をとるのでしょうか。

もちろん、またひとつ「負の遺産」が生まれるだけで、誰も責任を取りませんし、金額が巨額過ぎてどうにもならない──で終わりでしょう。これの繰り返しです。

2021年開催の東京五輪での新国立競技場は、建設費に1645億円かかりましたが、今後毎年の維持費が年間24億円費やされる予定です。つまり、今後50年間で、1200億円の維持管理費がかかるのです。建設費にも匹敵する額なのです。

さらに、5年、10年毎に行う施設のリニューアルや修繕費が、今後の65年間で別途294億円必要になる──といった試算が日本スポーツ振興センター(JSC)から出されています。建設費と同額に近い金額が、後世に先送りされます。

巨大施設は、作ったら終わりではないのです。こうした重大なことは、あまりにも顧みられていないのです。

大阪の夢洲での「万博」も「カジノ付き統合型リゾート施設」も、今から中止すれば、国際博覧会協会や参加国への補償金を含めても、数百億円の損害ですむと試算されています。

即刻中止すべき──という声が四方八方からも上がってきているのです。しかも、2025年万博のパビリオン建設の目途も全く立っていないのが現状です。

日本の国威だの、維新のプライドなど、へったくれもないことでしょう。

べらぼうな血税を将来にわたって、垂れ流しっ放し──となる無謀な計画など、今からでも止めるべきなのです。

国民の税金をいったい何だと思っているのでしょうか。

災害に対応するのさえ難しい、巨大な箱モノが壮大な無駄遣いの遺物となりかねない計画は、もはやこのへんで、ストップをかけるべきでしょう。

東京五輪の二の舞は避けるべきなのです。

サンクコスト(埋没費用)に呪縛され、計画したから途中でやめるのは「もったいない」という意識は捨てるべきなのです。

早く「損切り」して「撤退」するのが、将来に禍根を残さない日本の道筋といえるのです。

関西で人気絶頂の「大阪維新の会」「日本維新の会」の暴走を抑えることこそが、健全財政を取り戻す道になるはずです。

最近では、カジノ業者に貸し出す予定の「格安土地賃料」の疑惑さえも指摘され始めています。

インチキ鑑定談合で、賃料価格を格安にしてカジノ業者に貸し出そうとする疑惑なのです。

「大阪維新の会」と「日本維新の会」は、将来の罪作りな状況を作りださないことこそが、政党としての名誉を守る最善の対処法になるはずと信じます。




 

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