おがわの音♪ 第60版
中国に工場を作って中国から輸入する「自殺パッケージ」で日本は壊れた
2016年10月13日
日本の「対中直接投資」と「対中輸入拡大」の組み合わせは、国内の雇用を奪い、国民の所得を引き下げ、デフレを長期化させるという最悪のパッケージだった。
対外直接投資とは、要するに「雇用の場を国内から外国に移す」ことである。
工場などの資本が外国に移ると、当然ながら国内から雇用が失われる。
さらに、外国からの製品輸入とは、国内総生産であるGDPの控除項目になる。
外国からの輸入が増えれば増えるほど、GDPは減る。すなわち、国内の「所得」が縮小してしまう。
それでは、対外直接投資と製品輸入の組み合わせはどうだろうか。
つまりは、「国内の市場で消費される製品を生産するために、外国に工場を移転する」というケースである。
上記のケースは、国内で雇用が減ると同時に、輸入増で国民の所得が減少する。
雇用が減れば、所得が減るのは当たり前なのだが、同時に「輸入増」によりGDPが削られるという点がポイントである。
例えば、対外直接投資の目的が「日本以外の国々への輸出拡大」というケースもあるわけだ。
その場合、確かに雇用は失われるが、輸入増による所得縮小は起きない。あるいは逆に、輸入が増えたとしても、旺盛な国内需要が満たされるだけで、雇用は失われないというケースもあり得るわけだ。
ところが、対外直接投資で日本国外に工場を移し、さらに外国の日系工場で作られた製品を日本に逆輸入するとなると、国民経済としては二重の被害を受けることになる。
しかも、国内需要が「旺盛ではない」デフレ期にこの組み合わせを推進されると、最悪だ。
まさに、日本の対中直接投資がそうだったのである。
我々日本国は、対中直接投資を増やすことで、日本国内への資本の投下を削減。
当然ながら、日本国民ではなく、中国における中国人民を雇用。
必然的に、各種の技術も中国に供与。中国で生産された製品を輸入することで、虎の子の「需要」までをも献上するということを続けてきたのだ。
1997年の橋本緊縮財政以降、我が国の需要の総計である名目GDPは全く増えていない。
2015年度の名目GDPは約500兆円で、未だに橋本政権期を下回っている。
全体の需要が増えないデフレ期に、我が国は外国、特に中国からの輸入を増やした。
すなわち、需要の一部を中国に供給した。これが、どれほど愚かなことか。
例えば、対中輸入がピークに達したの2012年の数字は、約1890億ドル(約18.9兆円)にも達している。
GDP統計上、輸入は「控除項目」だ。
12年の中国からの輸入分、国内で生産が行われていれば、我が国のGDPは4%近くも拡大していたことになる。
別に、重商主義的なことを言いたいわけではない。
それにしても、デフレーションという問題を解決するため、国内の「雇用」や「需要」を拡大しなければならない日本が、両者まとめて中国に渡してしまったことは間違いないのだ。
結果的に、日本国内ではデフレ脱却に必要な投資(資本の投下)が伸びず、需要不足は終わらなかった。
国民の貧困化も続いた。
日本の「対中直接投資」と「対中輸入拡大」の組み合わせは、国内の雇用を奪い、国民の所得を引き下げ、デフレを長期化させるという最悪のパッケージだったのである。
おがわの音♪ 第59版
WEBマーケティングの舞台で起きている茶番
2016年10月22日
クライアントがわかっていないのも残念だ
電通が女性新入社員の過労自殺問題に揺れています。
10月14日に東京労働局が労働基準法違反の疑いで東京の本社に立ち入り調査に入ったのに続き、各地の労働局も複数の主要子会社を立ち入り調査したことが18日に明らかとなりました。
日本のウェブマーケティング業界は問題だらけ!?
一方、電通といえばほんの1カ月前の9月23日にインターネット広告にかかわる不適切な取引が明らかになっていました。
広告の掲載期間がずれていたり、広告が掲載されていなかったりという不適切な疑いのあった案件が633件、111社分にも上った問題です。過労自殺問題の波紋が大きすぎて、このことが記憶に残っている人は少ないかもしれませんが、電通のもうひとつの問題はウェブマーケティングが抱える課題を問い直すための契機のひとつであり、風化させてはいけません。
拙著『ウェブマーケティングという茶番』でも詳しく触れているように、これまで10年以上にわたって、500社以上のウェブマーケティングにかかわってきた私から見ると、電通の一件に限らず、日本のウェブマーケティング業界は問題だらけです。
現在、ウェブを活用した広告宣伝費は年間1兆1594億円に上り、新聞、雑誌、ラジオの広告費を合計した額をも上回っています(2015年、電通調べ)。
ウェブマーケティングは、テレビCMや新聞広告などの媒体と異なり、数十万円の費用から利用できるサービスもあるので導入が比較的容易です。また動画をアップしたり、SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を介して顧客と双方向のコミュニケーションを図ったりなど、活用の幅も広がり続けています。
近年は、膨大なデータに基づいた精度の高いマーケティングが可能になるなど利点は枚挙に暇がありません。
ところが、ウェブマーケティングに投資したもののまったく効果が感じられないと不満を抱えるケースが山ほどあります。
「高い費用を掛けてウェブに広告を出しても、売り上げは増えなかった」
「契約した広告代理店は毎月請求書と内容の薄いレポートを送ってくるだけ」
「報告書を読んでも、担当者に聞いても、今何をしているのかよくわからない」
「営業はしつこいぐらいかけてきたのに、契約したとたんに対応が悪くなった」
ウェブマーケティング業界は、クライアント(広告主)のこのような恨みにも近いような不信の声であふれかえっています。
実はそれも当然です。
なぜなら、相手に知識がないのをいいことに、当たり前のサービスさえ提供していない事業者が業界にはびこっています。
下請けに丸投げで担当者は素人同然の広告代理店、ホームページを作りっぱなしで効果検証もせずに制作費を請求する制作会社、グーグルやヤフーの検索順位だけにこだわっておカネを浪費させる SEO(検索エンジン最適化)会社などが、確実に存在しています。
おがわの音♪ 第58版
この20年で2割もダウン。なぜ日本人だけ「賃金」が上がらないのか?
政府側の人間は、よく「我が国にはお金がありません。
ですから、みなさんから止むを得ず消費税を徴収させていただきます」と国民に説明します。
しかし、これは真実なのでしょうか?中部大学の武田教授は、政治家や官僚たちが自分の利権や私腹を肥やすために、消費税や国債などを使って国民からお金を吸い上げている、と断言。その恐るべきカラクリを解説。
おがわの音♪ 第57版
結局「IOT」で何ができるようになるのか
2016年4月9日
モノ同士がつながり合うってどういうこと?
IoT(モノのインターネット)で社会や生活はどう変わるのか。
そのコンセプトをユビキタス(どこでもコンピュータ)として提唱し続け、著書『IoTとは何か』にまとめた東京大学大学院情報学環の坂村健教授に聞いた。
おがわの音♪ 第56版
パナソニックの車載電池がなぜ世界の自動車メーカーに選ばれるのか
パナソニックが、電気自動車やハイブリッドカーに搭載される二次電池の生産を加速させている。
パナソニックは円筒形、角形の車載電池を開発・製造し、電気自動車の黎明期から自動車メーカーとともに開発にあたってきた。車載電池のリーディングカンパニーとなった今、その技術力は他社の追随を許さない。
パナソニックはさらなる未来を見据え、より優秀な人材を確保することで、車載電池事業を磐石なものにしようとしている。
おがわの音♪ 第55版
文字や音に色が見える!1000分の1の特殊な知覚現象「共感覚」とは?
世の中には音が見えたり、色が聞こえたりする「共感覚」という特質を持っている人がいるということはご存知でしょうか。 あの人気お笑い芸人「ドランクドラゴン」の塚地さんがその特質を持っていると話題になっています。
おがわの音♪ 第54版
馬脚を現した習近平、反撃の李克強。激化し始めた中国最後の決戦
2016.10.09
9月以降、中国の李克強首相が急に外交の表舞台に立つようになり話題を呼んでいます。
評論家の石平さんは、中国の政争の場とも言われる北戴河会議で習主席が各方面から批判され、共産主義青年団派の力が戻ってきたためではないか、との見方を示しています。
おがわの音♪ 第53版
カゴメの失敗。トマト企業はいかにしてブランド崩壊を乗り越えたか?
企業にとってブランドイメージ、ブランド力とは金銭に換算できない強力な資産である、と言うのは店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さん。 ところがそのブランドをかつて自らの過ちで崩壊させてしまったのが、あの「カゴメ」です。
なぜそのような失態を犯してしまったのか、そしてそこからどう復活したのかについて、佐藤さんが詳細に記しています。
おがわの音♪ 第52版
閉幕したシーテック、実は「大激変」していた
テレビ見本市の時代は終わった、次はIoTだ
2016年10月8日
10月4日から千葉・幕張メッセで開催されていたアジア最大の家電見本市「CEATEC JAPAN 2016」(以下シーテック)が4日間の日程を終え、同7日に終了した。 突然ではあるが、昨年までのシーテックはいわば「ジリ貧状態」にあった。リーマンショック前の2007年10月は895の企業・団体が出展したが、昨年は531まで減っていた。
2000年に開始して以来、最低の数字だ。来場者数も同じく2007年の20万5859人をピークに減少、昨年は13万3048人と過去最低を更新した。つまり、出展者数も来場者数もピーク時の6割前後まで落ち込んでいたのである。出展者数は2010年と2012年、来場者数は2010年と2014年に前年比プラスに転じたことがあるが、長期的な減少傾向に歯止めがかかっていなかった。
おがわの音♪ 第51版
日本株は「大きな転換点」にさしかかっている
相場の神様が語った「針の落ちる音」とは 平野 憲一 :ケイ・アセット代表、マーケットアナリスト
2016年10月9日
「桐一葉落ちて天下の秋を知る」――。
わずかな前兆を見て、その後に起こる大事を察知すると言うことわざだが、これは立花証券の創業者の故石井久氏(1923-2016)が、若いころ、株式新聞社の記者時代に石井独眼流のペンネームで、1953年(昭和28年)のスターリン暴落を当てた時の記事の大見出しだ。
「権利落ち」を早めに埋めた、相場の意外な強さとは
その後石井独眼流は相場の神様とも最後の相場師とも称されたが、今年4月に92歳で亡くなるまで40年以上に渡って薫陶を受けた筆者の師である。
師は晩年、同じ意味の「針の落ちる音を聞け」と言っていた。さらにわかりやすく言えば、チャンスや危険は音もなく忍び寄ってくるということなのだが、今がまさにその時期なのかどうか。昨今の動きの中で探った。
先月9月27日(3月期末に本決算のある企業などを中心に、配当の権利がとれる最終日)の、海外を含む相場環境の中での日経平均139円高は「予想外」の強さだった。
権利落ち日だった28日の218円安は、当日の環境と権利落ち分 推定115円を考えるとほぼ予想通りだったが、翌29日の228円高は再び「意外」な強さを示した。
権利落ちを1日で埋めると「相場は強い」(上昇する)とよく言われる。
今回は1日で埋めることは出来なかったが、10月4日の「意外」な円安で、日経平均の引け値は1万6735円65銭となり、明確な権利埋めとなった。投資家は配当落ち分を埋めて初めて、配当をもらった感覚に浸れる。
マーケットセンチメントには、大きな要素だ。
為替も1ドル100円台が続きなかなか円高から脱出できなかったのに、「意外」な原油高も理由にしながらスルスルと、一時104円を付けた。 原油価格が為替を左右させるのは事実だが、原油価格の上昇は、シェールオイルの増産を呼ぶことから、それは原油価格の上値が限定的なことを意味する。 簡単に円安を呼び込めない構図のはずが、それを考えると「意外」な感じを受ける。
おがわの音♪ 第50版
ゴルフをすると認知症予防になるって本当?!
適度な運動が認知症予防にいいことは以前からいわれてきたが、さまざまな運動の中で、高齢者に人気の高いスポーツの一つ、ゴルフが認知症予防に効果があるかもしれない可能性が出てきた。
これを証明するために、国立長寿医療研究センター、東京大学、杏林大学、ウィズ・エイジングゴルフ協議会が共同研究を行う。この研究の参加者募集説明会も兼ねたシンポジウムで、本研究の主任研究者である国立長寿医療研究センター予防老年学研究部・部長の島田裕之 さんが講演を行った。
その講演内容を基に、運動およびゴルフの認知症予防の可能性について紹介する。
おがわの音♪ 第49版
ホンダを世界企業に育てたヒューマニズムとロマンチシズム
技術への飽くなき探究心で産業立国ニッポンを牽引してきた本田技研工業。
静岡の一町工場が世界的な大企業にまで成長した秘訣は、本田宗一郎と藤沢武夫という「経営オンチと技術オンチ」の2人が守りぬいたある約束と、そこから生まれた企業文化にありました。
ホンダ・ストーリー、感動的ですらあります。
おがわの音♪ 第48版
本田宗一郎と松下幸之助とは、なぜ「従業員のトイレ」にこだわったのか
一時期世間でも「そうじ術」や「断捨離」がブームになりましたが、誰もが知るカリスマ経営者たちははるか昔に
「3S(整理・整頓・清掃)」の重要性に気付き、それを実践していたようです。
一見経営とは関係なさそうな「3S」がいかに重要かについて記されています。
おがわの音♪ 第47版
交通弱者に自動運転は必要か
2016年9月1日
「自動運転よりも、乗り合いタクシーを税金でやってくれた方がうれしいねえ」
自動運転に関する国の検討委員会に参加するある識者は、地方の高齢者へのヒアリングで出た意見に思わず頷いてしまった。日本は2020年に無人運転車両を用いた特定地域での輸送サービスの実施を目指している。
ヒアリングはこのサービスへの需要を調べる目的があった。
無人運転といっても、これは「完全自動運転を意味するレベル4ではなく、レベル2でしかない」(国交省関係者)。遠隔とはいえ監視がつき、ヒトのコントロール下に置かれるためだ。
日本が加盟するジュネーブ条約は運転手のいない自動車を認めておらず、改正に向けた議論が進められている。
今春には運転者は中にいなくてもよいとする解釈も示された。日本が示している未来像はあくまで条約が現状認めている範囲のものだ。2025年をめどとする完全自動運転車の市場化に向けて、弾みをつける狙いがある。
地域の社会問題にスポットを当てて自動運転の利点をアピールする手法は、自動車産業が大衆車に軸足を置いている日本からすれば当然のことかもしれない。
しかし、冒頭の高齢者の言葉が示すように当事者のニーズを適格に捉えているかは別の問題だ。
もちろん交通弱者にとって、地域の足が充実することは大歓迎だが、それなら親しみ慣れているタクシーの方がよいという訳だ。将来的には無人運転輸送が有人タクシーよりもコストが下がり安全性も上がる見通しがあるからこそ、こうした施策が進められるわけだが、
「運転手のいる車に乗っている方が安心」という思いがぬぐえない高齢者が多いのも頷ける話だ。こうした日本の国民性とも言える志向が自動運転普及の課題になると見る関係者は多い。国交省の関係者も「日本人は4000が2000になっても納得しないだろう」と話す。4000とは日本での交通事故による死亡者の概数。
仮にこれがレベルを問わず自動運転の普及により実現したとしても「日本人は2000人死者が減ったのではなく、2000人が自動運転にひき殺されたと捉えるのではないか」 自動車メーカーにとってこれは大きな足かせだ。
極論を言えば、自らの技術力により2000人の命を救ったとしても、2000人の死亡に関わる過失犯になってしまう可能性すらあるからだ。「そのため4000を0にする確信ができるまで、自動運転と称して市場投入することにためらいを感じるメーカーも多いはずだ」(国交省関係者)
こうした自動運転の「社会受容性」の問題は警察庁などの検討委員会でも大きな議論になっている。
しかし、どうにもこの委員会が国民に議論を呼び起こすものにはなっていないように思う。
例えば、8月に警察庁が開催した検討委員会では自動車工業会が自動運転の制度的課題について指摘。
自動運転車と通常の車両が混合して道路を走っている場合「速度を守っている自動運転車が追突される恐れがある」などとして、速度規制の見直しを示唆した。これに事故の被害者支援に携わるメンバーらが反発して議論は紛糾した。
しかし、この議事録は警察庁の公開資料には見あたらない。
記者は自動運転の促進に反対なわけでも、ましてや2000人をひき殺してでも自動運転社会を実現せよと言っているわけでもない。問題視しているのは、国が自動運転の社会的ジレンマを明示していないことだ。
社会的受容性などを課題として取り上げている資料はあるものの、上記のような生々しい具体的問題や議論を示していない。
完全自動運転が完全に社会に普及すれば、車車間通信により交通流が整理され、4000人は限りなく0に近づくという理想が描ける。しかし、そこに至るまでには、ジレンマに向き合わなければいけない。
向き合うのは国ではなく国民だ。ポピュリズムを唱えるわけではなく、自動車という極めて国民の 生活に密着した問題だからこそ、1人1人にその問題を考える動機と権利があるのではないだろうか。
おがわの音♪ 第46版
専門家が最後の警告。リーマンショック以上の危機が始まる日
経済に精通した専門家たちが、「史上最悪のバブル崩壊」が近々訪れると予測しているようです。
そのバブルとは世界中の中央銀行が行っている「金融緩和」であり、崩壊の引き金となり得るのが、かねてから『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんが言及している「中国経済の崩壊」だと言います。
遂にその日が訪れるのでしょうか? 北野さんが専門家たちの意見を引きつつ詳しく解説しています。
おがわの音♪ 第45版
ブックオフは、いかにしてクレーマーを常連客にしたのか?
苦情を言ってくるお客さんは、店側にとって怖い存在であり、正直やっかいでもあります。
しかし、店舗経営コンサルタントの佐藤昌司さんは、「何よりも怖いのは『無関心』な顧客であり、苦情を寄せてくる顧客はやり方次第でリピーターにもなってくれる大切な存在であると認識すべき」と説き、客の不満をビジネスチャンスとして捉え成功を収めたブックオフの取り組みについて紹介しています。
おがわの音♪ 第44版
年金が「最低10年加入」に短縮へ。専門家が分析した衝撃の受給額
無年金者対策として、年金受給資格期間をこれまでの25年から10年に短縮する法案が先日閣議決定されました。
これにより64万人が新たに受給資格を得ることになるのですが、一体月額にしてどれくらいの年金を受け取ることができるようになるのでしょうか。そしてその財源は? 決して分かりやすいとは言えない年金のあれこれを、わかりやすく解説。
おがわの音♪ 第43版
マック、無印が「セルフレジ」を導入するワケ
外食、小売りで導入、人手不足解消の切り札か
島 大輔 :四季報オンライン編集部 記者
2016年10月1日
食品スーパーや量販店に加え、マクドナルドやアパレルのジーユー、無印良品、CD販売大手HMVなど、外食や小売業界で、客が自身で会計、精算するセルフレジを試験導入する動きが広がっている。
日本マクドナルドが大森駅北口店ほか国内4店舗で1年ほど前から試験的に導入しているセルフレジが、8月末にSNS上で話題を呼んだ。ファーストリテイリングは、8月から導入したジーユー銀座店など、ジーユー20店舗で試験的に導入している。
無印良品を展開する良品計画は、有楽町店や恵比寿店でセルフレジ端末を一部導入済み。
時間あたりの処理客数の多さではベテラン店員の有人レジに次ぐ高い実績となっており、今後ほかの店舗でも導入を予定しているという。
おがわの音♪ 第42版
人工知能が金融を支配する日
チェスや将棋よりはるかに複雑な囲碁で人工知能が勝つのはまだ先だと言われていたため、2016年、人工知能「アルファ碁(Alpha
Go)」が囲碁の世界トップ棋士といわれるプロに勝った事件は世界に衝撃を与えた。この立役者となったのが、機械学習、深層学習といった近年の人工知能技術の急速な発展である。実は、その影響を一番受けるのが金融業界だ。
数字で構成される金融の世界は人工知能や自動取引と相性がよく、2010年、一瞬でリーマンショックを上回る株価下落を招いたフラッシュ・クラッシュ(瞬間暴落)の背景にこうした自動取引があったことは記憶に新しいが、実際に金融市場は既にロボ・トレーダーの独壇場になりつつあるという。
なお、日本はこの分野では世界に大きく後れている。
また、ヘッジファンドは人工知能のトップ研究者を IBMやアップル、Googleから次々引き抜いており、先進国の銀行支店は今後 10年で 30~80%削減されるとの予想もある。
本書ではこうした金融業界の最先端を明らかにし、人工知能の発展により変わる金融業界の未来を見通している。著者は、旧東京銀行でトレーディングや資産運用に携わり、現在は金融シンクタンクの取締役として活躍する人物。
一読すれば、いずれあらゆる業界に波及する人工知能の破壊的影響力、人間が発揮すべき付加価値、近年話題のフィンテックの本質についてなど、多くの示唆がある一冊として金融業界関係者以外にも、是非ご一読いただきたい。
表舞台と裏舞台の両方から変わる金融界
私たちにとって一番心配なことは、裏舞台のテクノロジーが人知れず超強力になって、一握りの人たちの利益ばかりが増えることだ。もし、巨額の資金でトップ研究者をひきつけるヘッジファンドが新しい手法を開発し、その手法の存在さえも明かさずに独占すれば、残りの人類は利益を吸い上げられるばかりという状態に陥る。
また、表舞台で技術の独占が起こる可能性もある。
例えば、世界中の個人や企業の信用分析について、ある一社だけが桁違いの量のビッグデータや優れた分析手法を保有し、他の金融機関はその会社のサービスに依存せざるを得なくなるような状況だ。
そう考えると、金融界の未来には大きく 2つのシナリオがある。
悪いシナリオは、破壊的なテクノロジーが独占されて、一握りの人々が膨大な利益を上げるというもの。
一方、良いシナリオは、優れた技術が広く共有化されて多くの人々が利用できるようになることだ。
資産運用や、信用リスク分析手法の情報が共有化された場合、現在のように個々の金融機関が競争を続ける意味が薄れ、公共的なサービスという色彩がより強くなるだろう。
金融という仕事は、結局のところ、お金の価値という単一の尺度しかないからだ。
例えば、自動車購入者が求める価値は外見や乗り心地など多様であり、自動車メーカーは多様な価値基準に応じた個性が発揮できる。
これに対して金融の仕事は、運用なら安定してリターンを得る能力、融資なら信用リスクを見抜く力という 単一の基準に集約され、業者ごとに個性を発揮する余地がずっと少ないのだ。
日本の良いところは、技術を独占し世界の金融界を牛耳ろうという考え方がほとんどないことと、潜在的には市民的な公共意識が高いところである。超強力なテクノロジーの出現の時代では、独り勝ちを避ける公共意識が重要なファクターになる。
だとすれば日本がなすべきことは、アメリカのヘッジファンドのまねではなく、世界に負けない水準の独自のテクノロジーを作り上げ、それをできるだけ公共の目的で使用することにある。そのためには、既存の金融機関同士の利害関係などを超越した体制が必要だ。
おがわの音♪ 第41版
ここにも家康の影。元は一つだった本願寺が東西に別れた理由
京都を代表する寺院、西本願寺と東本願寺。元はひとつだった「本願寺」は、なぜ東西に分かれてしまったのでしょうか。
東西本願寺の複雑な歴史をたどりながら、拝観がますます楽しくなる「両者の違い」を詳しく紹介しています。
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