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元国税OB怒りの2択クイズ「社会保険料が上がり続けるのは〇〇〇」


丸に入るのは?

ア「少子高齢化のせい」イ「値上げしやすいせい」さあどっち

2024.04.18

 by 大村大次郎

すこし簡単すぎたでしょうか?クイズの正解は、もちろん少子高齢化のせいです。

我が国の若年人口減少は今後も止まらず、社会保障給付の増加は避けられません。

そのため日本政府としては――って、え?違う?そんな説明はデタラメだって?じゃあ、そしたら、もう一揆しかなくないですか……というわけで、実はこのクイズの正解はイ「値上げしやすいせい」でした。元国税調査官の大村さんによると、「少子高齢化社会において社会保険料がアップするのはしかたがない」との国の説明は真っ赤な大ウソしかも社会保険料の大幅値上げは富裕層優遇政策以外の何者でもないというのです。


「憲法違反状態」にある国税庁

2023年の暮れ、自民党のパーティー券裏金問題が発覚しました。この問題は、自民党の派閥のパーティーにおいて、所属議員にパーティー券のノルマを課し、そのノルマを超えた分については所属議員にキックバック(代金の返還)をしていたというものです。

しかもキックバックを受けた所属議員は、その代金を政治資金収支報告書に記載しておらず、裏金化していたのです。政治資金規正法違反だけではなく、脱税の疑いもあるという大事件です。

この裏金問題について国税庁は「キックバックされたお金に残額があれば申告しなければならない」と国会で答弁しました。

つまり、政治資金として支給されたものだから、政治資金として費消されていなければそれは所得として申告しなければならない、ということです。

国税庁は、そうはっきり述べたにも関わらず、裏金議員たちのキックバックされたお金について、費消されたかどうかをまったく調査する気配がありません。

国税は、一般市民に少しでも脱税の疑いがあればすっ飛んで調査をしに行きます。

しかし、国会議員の場合は、かなり濃厚に脱税の疑いがあるのに、まったく動こうとしないのです。

これは、「法の下の平等」をうたった憲法にすら違反する重罪です。国税庁は憲法違反状態だともいえます。

その一方で、国民には増税につぐ増税を繰り返してきました。特にサラリーマンの税金、社会保険料は、本当に高いです。

 

江戸時代の年貢より高いサラリーマンの税金

現在、サラリーマンの方々の給料には、莫大な税金、社会保険料がかかっています。

平均的なサラリーマンの方で、所得税がだいたい10%、住民税が10%です。つまり、税金だけで20%も取られているのです。

そして、それに社会保険料がかかってきます。社会保険料は、健康保険と厚生年金を合わせて約30%です。この30%は、会社側と折半して負担するという建前になっています。

が、会社としては人件費の中でこれを支払うので、社員にとっては、本来、自分がもらえるべきお金から支払われているのであり、自分が負担しているのと同様のことになります。

税金、社会保険料を合計すると約50%なのです。しかもこれに消費税が加わります。

消費税は、収入のうち消費に回す割合が高い人ほど負担が大きくなる逆進税です。

収入のほとんどを消費に回す人は、収入に10%の税金をかけられているのとほぼ同じになります。

つまり、所得税、住民税、社会保険料、消費税などを合わせると50%を超えるのです。これ、あまりに高すぎませんか?

この負担率は、江戸時代の農民の年貢よりも高いのです。

江戸時代は4公6民などと言われていますが、実際の徴税はそれよりも緩かったことがわかっており、だいたい3公7民くらいだったと見られています。

このように「百姓は搾り取れるだけ搾り取れ」と言われていた江戸時代の農民の方が、今のサラリーマンよりも、税は安かったようなのです。

 

社会保険料は上げ放題

現在の税金、社会保険料は、江戸時代の農民よりも高いと述べましたが、特に社会保険料の高さは目に余る、と言えます。

というのも、税金と社会保険料の計算方法は、かなり違います。税金は、収入から、様々な所得控除を差し引き、その残額に対して税金が課せられます。

サラリーマンの場合は、「給与所得控除」で収入の約30%が控除され、基礎控除、社会保険料控除、扶養控除などでだいたい100万円以上が控除されます。

そのため、年収500万円の人でも、課税所得は300万円くらいになるのです。

この300万円に対して税率がかけられる、だから税率が10%と言っても、実際は年収の6%程度になるのです。

しかし、社会保険料というのは、そういう「所得控除」的なものがほとんどありません。年収500万円の人の場合は、500万円そのものに社会保険料が課せられるのです。

だから、500万円の約30%(事業者と従業員の負担の合計)がそのまま社会保険料として取られてしまうのです。

この社会保険料の大きな負担は、サラリーマンの生活を圧迫してきました。しかも、です。この社会保険料は、近年、急激に上げられてきたのです。

サラリーマンの健康保険は、2002年には8.2%でしたが、現在は10、0%です。

しかも、40歳以上の場合は、介護保険の1.58%が加わっているので、合計で11.58%となっているのです。つまり20年前は8.2%だったものが、現在は11.58%になっているのです。20年の間に、実に4割近い値上げです。

また厚生年金は、1980年までは会社と社員の負担分を合わせて9%程度、2004年には13.934%でした。

しかし、近年急激に上昇し、2017年以降は18.3%になっています。1980年と比べれば倍になっていますし、2004年と比べても4割近い値上げです。

高額所得者の所得税は、バブル期に比べればかなり下げられてきているので、社会保険料だけがこんなに上げられているのは異様です。

 

社会保険料が上がり続ける理由は「上げやすいから

なぜ社会保険料だけが、これほど急激に上げられたのかわかりますか?少子高齢化のため?いえ、違います。

もし少子高齢化で財源が必要だというのなら、一方で高額所得者の所得税を下げられてきたのは説明がつきません

正解は「社会保険料というのは、上げやすいから」です。

国民は、「税金を上げる」というと非常に反発します。しかし、税金と同じ性質を持つけれども、税金と名のつかないものに対しては、けっこう鈍感なのです。

特に社会保険料の場合は、「少子高齢化のために値上げは仕方がない」と宣伝すれば、国民は簡単に信じ込んでしまいます。そのため、これほど無茶な上昇となっているのです。

 

富裕層は社会保険料が上がっても痛くもかゆくもない

そして、社会保険料ばかりが増額されるのはもう一つ大きな理由があります。それは社会保険料の値上げは、富裕層にほとんど負担がないということです。

このメルマガでは、何度も、昨今の日本は富裕層優遇の政策ばかりを行ってきたとご説明してきました。社会保険料の値上げも、富裕層優遇政策が大きく関係しているのです。

富裕層にとって、社会保険料はいくら値上げされてもほとんど関係ありません。

現在の社会保険料は、原則として収入に一律に課せられています。たとえば厚生年金の場合は約8%です。

しかし社会保険料の対象となる収入には上限があるのです。たとえば厚生年金の場合は月65万円です。

つまり65万円以上の収入がある人は、いくら収入があろうが65万円の人と同じ額の保険料しか払わなくていいのです。

となると、毎月650万円もらっている人の保険料というのは、0.8%になります。普通人の10分の一です。

そして、月収が650万円を超えれば超えるほど、社会保険料負担率は下がっていくのです。

つまり、社会保険料というのは一定の収入を越えれば、収入が多ければ多いほど、負担率は下がるのです。

なぜこんなことになっているのでしょうか?社会保険料の掛け金があまり多くなると、見返りの方が少なくなる、というのが、表向きの理由です。

しかし、そもそも社会保険料というのは「国民全体の生活を保障するために、各人が応分の負担をする」というものです。

だから、人によっては掛け金よりもらえる金額が少なくなっても当たり前なのです。

 

政官財によって仕組まれた「社会保険料爆上がり」

掛け金に応じて見返りがあるのなら、それは社会保険ではなく、ただの金融商品です。だから富裕層の社会保険料率が低い、というのは絶対におかしいのです。

しかし、政治家や官僚にとって富裕層は大事なスポンサーです。政治家には莫大な政治献金をしてくれるし、官僚には美味しい天下りポストを用意してくれます。

だから、昨今の日本では富裕層優遇政策ばかりが採られているのです。その結果、社会保険料が爆上がりしているというわけです。

社会保険料の負担率をいくらあげても富裕層はいたくもかゆくもありません。上限以上は払わなくていいので、負担率の増減は富裕層にはまったく関係ないのです。 

これが所得税であればそうはいきません。所得税率が上がれば、富裕層の負担もあがります。だから、所得税は上げずに社会保険料を上げているというわけです。

――(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報2024416日号より


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