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日本を“低賃金国家”にしたのは誰か


さらに賃上げすれば減税という「泥棒に追い銭」の末期的政策まで実施へ

神樹兵輔

2024312

今回は「日本を低賃金国にしてきた自民党と経団連が、今度は賃上げすれば法人税減税という『泥棒に追い銭』政策の笑止千万!」というテーマでお届けしたいと思います。日本の労働環境を見渡した時、賃金が低いのは日本人の労働生産性が低いからだという人が多くいます。しかし、これは本当でしょうか。日本は「おもてなし文化」で余計なサービスが多いから、労働生産性が低いのだ――などという人もいます。しかし、本当に本当でしょうか。 これはただの数字のトリックにすぎないことに気づくべきです。

日本の労働生産性は低すぎる?

労働生産性は、おおむね次のような2つの計算式で導き出すのがふつうです。

物的労働生産性=「生産物の量 ÷ 労働量」
付加価値労働生産性=「付加価値額(売上 − 仕入れ)÷ 労働量」

ちなみにこうした計算式で導き出された日本の労働生産性は、2022年の公益財団法人・日本生産性本部のデータによると、1時間当たりの購買力平価換算の付加価値額が52.3ドル(年間85,329ドル)、OECD加盟国38カ国中30位に相当します。

日本の労働生産性は、非常に低い順位になっているのです。

これはポルトガルやハンガリーといった旧ソ連のワルシャワ条約機構を結んでいた東欧7カ国などと同水準なのです。

ただし、2021年の「製造業」に限定した労働生産性は、もう少し高く94,155ドルで米国の約6割の水準でした(OECD加盟国の中では第18位)。ちなみに、かつての日本の「製造業」に限定した労働生産性は、1985年以降の円高もあって、世界のトップクラスを2000年代の初頭まで続けていたこともあります。

さすがに「モノづくり大国ニッポン」という時代も謳歌していたわけです。

たとえば、日本の製造業の労働生産性は1995年と2000年にOECD加盟38カ国中では第1位でした。

しかし、05年に第7位、10年に第10位、15年に第14位、21年に第18位と次々に順位を落としていきます。

また、この頃の日本の「一人当たりGDP」も常勝1位の小国ルクセンブルグに次ぐ2位(1988年と2000年)や3位レベルで推移していました。そして、日本人の賃金水準も同様につねに10位以内の上位ランクを維持していたのです。

さらに付言すれば、スイスに拠点をおくビジネススクールのIMD(国際経営開発研究所)が毎年発表する「世界競争力年鑑」の総合力で、日本は1989年から1992年の4年連続で、世界第1位でしたが、その後は30年以上凋落を続け、2023年版の最新の年鑑では過去最低の35位に落ち込んでいます。

これらのデータが何を意味するかといえば、1985年の「プラザ合意」以降に円高不況に見舞われてから、金融緩和に舵を取った日本はバブルを謳歌したものの、90年のバブル崩壊以降は坂道を転がるように「失われた30年の道」を歩んできたことが如実に窺える傾向だったのです。とりわけ当初の「失われた20年」を経たのちの、201212月就任の故・安倍元首相以降のアベノミクスの円安政策によっては、さらに急速に日本の国力を衰退させたことが顕著な傾向となっています(ただし、輸出大企業の売上という業績は円換算では好調に推移)。

実際、「1人あたりGDP」は安倍政権の2013年以降から、世界で20位以下に落ち込んでしまい、ずっと横ばいを辿っています。

アベノミクスがいかに国力を衰退させる弊害をもたらしたかが鮮明なのです。円を安くして、大企業の見せかけの売上のみに貢献したのです。故・安倍元首相は、アベノミクスの2019年までの7年間で雇用が499万人増えたと胸を張りました。
しかし増加の7割は、賃金下落をもたらすにすぎない非正規雇用労働者でした。

 

「賃下げ政策」と「デフレ」と「円安」の悪影響

ところで、そんな日本の労働生産性ですが、業種によっても大きな差があります。

金融保険業や不動産業は高く、小売業やサービス業などの人手を多く必要とする業種は低いのです。

これは、考えてみれば当たり前でしょう。扱うモノの金額の大小を比べれば明白なのです。

デフレが30年近くも続く日本では、モノ自体の価格が安いのですから、賃金も横ばいで、労働生産性も低くなります

また、企業規模別にみても、中小企業よりも大企業のほうが、労働生産性は高いのです。これも売上規模を考えれば合点がいくでしょう。しかも、日本は法人数約400万社のうち、中小企業数が99.7%を占めます。大企業はたったの0.3%しかありません。

総労働者数は約70%が中小企業で働く人で、大企業で働く人は約30%です。さらにこうした雇用労働者数の約6,000万人のうち、正規雇用6にすぎません。

そして、賃金が低く有期雇用の非正規職(パート、アルバイト、契約社員、派遣社員、嘱託社員など)4なのです。

これは、雇用労働者の2.5人に1人が非正規雇用労働者ということになります。

時間給で働く人が増えるほどに、「楽してテキトーに過ごそう」という人も増えるのが当たり前です。

忠誠心も、はたらかないからです。こうしたことが労働生産性を低める要因のひとつでもあるのです。

 

日本の「労働生産性」アップのための議論の不毛さ

ちなみに1989年(平成元年)の非正規は、雇用者の20%でしたから、この約35年ほどで、非正規雇用は40%と2倍になっているのです。賃金がその分圧縮されてきたのは明白でしょう。

バブル崩壊以降、経済的苦境に陥った日本では、企業側が労働者の賃金を圧縮することに、どこもかしこも熱心に取り組んできたことが窺えるのです。

労働生産性を上げるためにはどうすればよいか――という議論もありますが、長時間労働の是正や、年功序列賃金の是正、機械化、ITなどのデジタルツールの活用、時間給ベースの賃金体系の是正……などなどが取り上げられています。

しかし、これらの議論は、教科書的対応策ですが、根本的な陳腐さも内包しています。

つまり、要は労働生産性の計算式の分母の人件費を減らせば生産性は上がるわけですから、逆に言えば、賃金がアップし、売上もアップすれば労働生産性も上がるのです。

また、日本は失業率が低いのですから、そのぶん労働生産性も低くなってくるのも当然なのです。

経団連の意を受けて自民党政権がすすめてきた「賃金下落政策」によって、日本の労働者の生産性が低くなるのは、ドル換算の購買力平価で比べれば、極端な円安もあるので当たり前の話だということになるのです。

勤勉で真面目な日本人労働者に何らかの責任や問題があるわけではないのです。

後述しますが、政治献金スポンサーの経団連の命令を受けた自民党の「賃金下落」政策によって、日本人の労働生産性は下がるべくして下がってきたのです。

なにしろ、中小企業では「人手不足」ですが、大企業では「人手余り」というのが現状です。

すでに、日本の労働分配率は大企業では40%以下の苛酷さですが、中小企業では限界値の70%前後もあり、中小企業の賃金引き上げは非常に難しい状況にあります(日本経済新聞2024125日付)。

ちなみに 労働分配率は、「人件費 ÷ 付加価値額」で導かれます

つまり、日本の労働生産性は、実感でとらえても、世間で騒ぐほど低くはないのです。要するに賃金が低すぎるのです。

アベノミクスの円安政策で輸出大企業が儲けたのに比して、労働者に対しては非正規雇用を増やして人件費を抑え、20239月時点の資本金10億円以上の大企業の内部留保(利益剰余金)は、過去最高の528兆円にも積み上がらせたのが、日本の労働生産性の低さの元凶なのです。

これは、2012年末の第2次安倍政権発足時からの大企業の今日の内部留保額が1.64倍に増えたことでもはっきりしています。

ちなみにこの間の賃金上昇率はたったの1.12倍です。ここ数年の物価上昇で、実質賃金が大幅に減少してきたというのも、しごく当たり前の話なのです。

 

経団連の命令で自民党が行った労働法制の改悪と消費税率アップが日本の成長をストップさせ、国民を貧窮化させてきた

そもそも、日本の労働法制と税制体系をおかしくさせてきたのが、利潤追求第一の大企業団体である「経団連」なのです。

経団連は、毎年のように自民党の政治資金団体(国民政治協会)に20数億円を政治献金として寄付しています。

また、別途に大企業は20億円前後を自民党の国会議員らが代表を務める政党支部向けにバラ撒いています。

2022年の実績では、自民党は企業・団体献金を政党本部及び政党支部に合計55億円も得ているわけです(この他にも税金が原資の政党交付金が自民党に年間約160億円交付されています)

自民党議員は、ただでさえ国会議員としての高額報酬(年間5,000万円強)と高待遇(公設秘書3人の給与や経費タダの国会事務所費などなど)を得ているだけでなく、他にもくだんの派閥の政治資金パーティーで裏金を億単位で生み出してきていたのですから、呆れるばかりなのです。ゼニの亡者といってよいでしょう。

いかにカネ儲けのためだけの自民党政治であり、国民の権利や幸福をないがしろにしてきた政治屋・犯罪集団であるかが明白なのです。

自民党が、とりわけ「経団連」に頭が上がらないのは、政治献金やパーティー券と称する、こうした一見合法ワイロの存在があるからなのです。

いかに自民党議員が、利権・口利きのカネまみれマシーンとなっていることこそが存在理由でしかないのが、よくわかるのです。

つまり、自民党には、もともと日本を導く「政策」などは、まったくなく、外交と軍事は米国の言いなりで、税制や労働法制は経団連の言いなりになっていれば、それでよいだけの政党にすぎないのです。

その経団連さえ、所詮はサラリーマン大企業経営者の集まりにすぎません。ラットレースとゴマスリで必死にサラリーマン組織を這いあがってきただけの存在なのです。

自分の経営者としての任期中での利潤追求を追い求め、自民党政府に、自分たちの経営成果の見栄えがよくなる、都合のよい政策だけを要求しているわけです。

それが、日本の内需を失わせ、ひいては大企業の首を絞める結果を招くのも必然なのに、利潤追求のために労働者の賃金を下げる政策を自民党に要求し、消費税率アップを図って法人税率を下げさせてきたのです。

現役時代の賃金が低ければ、老後の年金が不足して、生活保護で補填しなければならなくなります。

そんな貧困老後を生み出し続けてきたのが、経団連と自民党・公明党の連立政権なのです。

そして、そうした要因を導いてきたのが、1986年施行のピンハネ労働解禁の「労働者派遣法」であり、89年導入の逆進性による貧困者課税を可能とした「消費税」であり、93年導入の途上国労働者を奴隷のようにコキ使える「外国人技能実習制度」であり、国民を貧困化させる一連の「賃金下落政策」という元凶だったわけです。

 

派遣労働者は「人件費」でなく「外注費」で処理できるので使い捨てに

1985年にニューヨークのプラザホテルに先進5カ国(G5=米・英・仏・西独・日)の財務相・中銀総裁が集い、米国の「ドル高是正」と「各国の内需拡大」の申し合わせにともない、日本はその後急激な円高を容認したため、輸出大企業を筆頭に「円高不況」に見舞われます。

この時に合理化を迫られた大企業が、かねてから賃金抑制を狙い、経団連を通じ自民党政権に命じてつくらせたのが1986年に施行された「労働者派遣法」でした。

これは、労働基準法を通じ、戦後禁止されてきた「中間搾取(企業と労働者の間に第三者が介在し賃金を横取りすること)」を合法化し、間接雇用による低い賃金の有期雇用労働者を、企業内に正規雇用労働者と同時差別的に併存させる――という天下の悪法だったのです。つまり、もともと当時から偽装請負で違法な派遣労働行為を行っていた、今日に連なる大手派遣会社の犯罪業務を晴れて法律で認めてやったのです。

これによって生まれたのが、いつ首を切られるかわからない有期雇用の派遣労働者であり、法定福利厚生や交通費支給もない脆弱な労働者の立場だったのです。

本来なら賃金を正規の労働者よりも3割から5割アップすべきなのに、派遣労働者は、一般の人件費を削る形で派遣会社のピンハネ(マージン率)を3割から4割も認めてやるカタチの低賃金でスタートさせたのです(2019年の厚労省の調べでは30.4%の平均ピンハネ率で、このうち派遣会社の営業利益率は5.9%)。

正規雇用になりたくてもなれなかった人たちは、こうして低賃金で働かせられるようになり、当初は厚生年金も健康保険も自腹という待遇を余儀なくされていったのです(現在は派遣会社と折半で加入)。

ここからパートやアルバイトといった非正規雇用が、どんどん大きく広がっていく流れをつくりました。

当初の派遣は、タテマエは専門性のある13職種の限定のはずが、自民党政権の得意技の「小さく生んで大きく育てる」がごとく、その後の改悪に次ぐ改悪で、何でもありの派遣業務をはびこらせたのでした(この専門性は最初から嘘っぱちで、単純事務仕事をファイリング業務と称していた)。

この制度によって、派遣先企業は、派遣労働者を迎えるにあたって、大幅に人件費が削減できるようになりました。

もとより、派遣社員は直接雇用でないため、人件費の概念には入りません。

派遣先企業と派遣会社との取引のため、派遣会社にまとめて支払う経費は外注費として処理されるからです。

 

正社員を「派遣社員」に換えると、人件費が50%近くも削減できる

企業にとって、正社員を雇うのをやめて、「派遣社員」に切り替えたら、どれだけトクをするのでしょうか。

派遣会社が企業に営業をかけてアピールする際に使う資料の、経費が削減されて、おトクになる項目を列挙してみましょう。

・従業員募集経費(広告宣伝や紹介会社への斡旋料など)
・研修・教育費
・給与や手当および精算費用
・賞与(臨時給与)
・交通費および諸手当
・法定福利費(会社が折半で負担する健保や年金の保険料)
・福利厚生費(寮や慰安会、社員旅行や健康診断費用)
・退職金

こうした経費が、派遣社員には要らなくなります。

概算では、正社員一人を雇うよりも、派遣社員のほうが、50%程度の人件費削減につながるとされています。

しかも、正社員の場合は毎年の昇給もあるので、それ以上の負担が企業にのしかかることも容易に想像できるでしょう。

 

消費税導入で法人税率や所得税率も削減できた

さらに、経団連の命令で、1989年に3%の小さい税率から導入した消費税も、経団連にとっては、企業コストの圧縮に大いに貢献してくれました。

経団連が消費税導入を自民党に命じた目的は、法人税率の引き下げと所得税率の引き下げ、そして輸出大企業にとっては欠かせない輸出還付金の存在が大きいからでした。

 

財務省の税収の推移が載っているHPを見ていただくと、一目瞭然ですが、消費税率を上げる度に法人税率が下げられ、所得税率も緩和されてきたのです。

アップされ続けてきた消費税額の7割強がそれらの補填に回っています。

また、大企業は下請けからの仕入れ品を叩きまくって、ギリギリの安値価格で仕入れていますから、仕入れの際にロクに消費税を払っていないことが明白――とよく指摘されています。

このことは、先ごろ公正取引委員会が、日産自動車の下請け法違反事例に対して「勧告処分」を行うと決めたことが報道されたことでも、よくわかります(日産は過去数年間で下請け30社以上に一方的に自動車製造部品の納入代金を減額させ、減額幅は30億円以上にのぼるとされています)。

それなのに、輸出大企業は年間6兆円もの輸出還付金として、下請け企業にロクに払ってもいない消費税を税務署から付与してもらっているのです輸出品には消費税はかからないというタテマエによる)

6兆円といえば、消費税率換算でも、3%分に相当する大きな金額なのです。

各地の大企業本社管轄の税務署は、このせいでほとんどが赤字です。

このように棚からボタモチのような収益が、輸出大企業に入るわけですから、かつての自民党への要望として、2025年までに消費税率を19%まで上げて法人税率をもっと下げろ――と経団連が自民党に強制的に命令するゆえんだったわけなのです。

巷では、消費税率をアップさせようとする首謀者は、緊縮財政論者の財務省だ――とする指摘もありますが、財務省の役人など平目サラリーマンであり、官邸の人事権をもってすれば、いくらでも抑えの利くレベルの話にすぎません。

財務省「悪玉論」などは、経団連擁護のおかしな屁理屈なのです。

消費税率アップを図ってきたのは、自民党への年間55億円以上の有力スポンサーである経団連であり、財務省悪玉論はその目くらましに他ならないでしょう。

 

外国人技能実習制度という「奴隷労働・推進制度」

そして、毎年数千人もの失踪者を生んでいる「外国人技能実習制度」ですが、これも「経団連」の自民党への命令で、1993年にスタートさせた制度です。

これも 簡略に述べますが、技能実習生の母国での送り出し会社は、実習希望者から法外な手数料収入(実習生は100万円前後の借金を背負う)を得たのち、実習希望者を日本へ送り出しています。

こんなことを野放しにしているのですから呆れます。

日本ではどんな仕事に就くかも選べず、3年間は転職禁止という憲法違反の制度です。

しかも、賃金は安い最低賃金で、そこからさらにタコ部屋の寮費をとられ、空調費やら食費をどんどんさっぴかれます。

要するに、日本人がやりたくない仕事を、奴隷労働でコキ使う仕組みに他なりません。

これも、日本人の「賃金下押し」に大いに貢献してきた制度でしょう。安い値段で使える労働者であるなら、何でもござれ――なのです。経団連は、人権もへったくれもない大企業の団体だということがよくわかるのです。

 

岸田内閣の賃上げ促進税制の「泥棒に追い銭」の笑止

これまで述べた通り、さんざん日本人の賃金が上がらないよう画策してきたのが、経団連の意を受けた自民党でした。

しかしながら、マスメディアなどで、日本人の賃金が世界と比べて、あまりにも低い――ということが騒がれ始めて、安倍政権の頃から、自民党が春闘に向けて「賃上げ」をアピールするようになったのですから、お笑い種でした。

また、労働者団体の「連合」の幹部連も、この30年間何もせずに、組織率の衰退を見守るだけで、労働貴族の名をほしいままにしてきただけだったことも、自民党政権の「賃上げ」というイレギュラーな動きで、存在価値のないことがはっきりと浮き彫りになって、これまた笑える展開でした。

そして、日本国の労働者の「賃下げ政策」に執心して、自民党に命令を下していた経団連も、ここにきて「賃上げが必要」などと言うのですから、「お前が言うか!」とこれまた笑わせてくれるようになったのです。

労働者の賃金を抑えつけ続けて、500兆円をゆうに超える内部留保の蓄積に励んできた経団連が労働者の「賃上げ」に言及するなど、本当に笑わせてくれる展開なのです。

そして、そんな風潮を受けて、岸田首相は、2022年度から「所得拡大促進税制」なるものを始め、今度はさらに「賃上げ促進税制」へと名称も内容も変え、その普及に務めているのです。

ざっと内容をかいつまめば、企業区分を大企業、中堅企業、中小企業と3分類し、大企業は賃上げ率37%以上、中堅企業は34%以上、中小企業は1.52.5%以上を達成したら、賃金増加分に応じて、大企業や中堅企業は1025%、中小企業は1530%分を法人税率や所得税率(個人事業主)から控除してあげますよ――という飴玉なのです。

さらに、これには女性・子育て支援や教育訓練の状況に応じて、5%~10%の上乗せ枠までありますよ――というプラス特典までを付与した制度になっています。

労働分配率が70%以上にも及ぶ、人件費がギリギリの中小企業を支援するならともかく、税金の支援金が大きくなる大企業にまでこんな制度を導入するとは、まさしく「ドロボーに追い銭」なのです。

政治献金をくれる大企業には、ちょっぴり賃金アップをするだけで税金の大盤振る舞いがなされ、中小企業はロクに賃上げさえ出来ないのですから、これまた置き去りです。

なぜマスメディアはこれを批判しないのでしょうか

内部留保(利益剰余金)をたんまり貯め込んできた大企業にこんな支援をするより、労働者の7割を占める中小企業にこそ支援すべきです。

岸田政権の国民への「まやかし策」もいいところでしょう。

この制度を使って賃上げできるのは、労働分配率40%という苛酷な大企業ぐらいであり、すでに労働分配率70%前後の中小企業にとっては、1.5%の賃上げでもやっとのことでしょう。

こんな、まやかしで賃上げが本当にうまくいくと思っているところが、岸田首相の世襲3代目の甘いボンボン気質の思考力なのです。

こんなことをやる前に、「消費税の廃止」やら、「派遣労働の禁止」、「外国人技能実習制度の撤廃(現在さらなる改悪を模索中)」のほうこそを最初に行うべきでしょう。

大企業に向けた一斉賃上げ促進の結果、さらなる物価上昇さえも促しかねないという悪循環に陥る懸念さえもが指摘されているのです。

カネをくれない中小企業は、ほっぽらかしです。

岸田首相は就任時には「資産所得倍増」といって、その後拡充しただけの新NISAだったり、「異次元の少子化対策」といって、異次元にショボすぎるほどの児童手当拡充の「子育て対策」だったりと、どれもこれもチンチクリン政策のオンパレードなのです。

支持率が、いまだに10%以上も保たれている――というマスメディアの世論調査のほうが、よほど狂っているのではと、首を傾げざるをえない状況なのです。

1日も早い岸田首相の退陣を願うものですが、次も自民党からの首相選出では、間違いなくほぼ何も変わらないことでしょう。

やはり、だらしなくても、野党にスクラムを組んでもらい、政権交代を望む以外に、日本の未来が切り開かれることはないのでしょう。

野党の分断を図り、自民党にすり寄るばかりの労働組合の総本山・「連合」の芳野会長もとっとと退陣すべきです。

いい加減に野党にも、大局的見地での大同団結を望むばかりなのです。

それとも一部の野党のように、自民党の補完勢力として、第2自民党路線を歩くほうが居心地がよいのでしょうか。

ともあれ、選挙の時には、あきらめずに投票に行って、必ずや自民党以外に投票したいものなのです。



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