インドの急成長を日本人はまだ知らない
投資家は未来の「デジタル超大国」に賭けたほうが確実性が高いと言える理由
鈴木傾城
2024年3月6日
インドで「デジタル・インディア」が強力に進められている。
インド政府はデジタルで国家強靱化を怒濤のごとく押し進め、デジタルでの一帯一路をも考えるようになっている。
インドをデジタル超大国にする壮大な計画
すでにインドは中国を抜いて世界最大の人口14億2,860万人を抱える国となっており、しかも若者が多く、生産年齢人口の割合が上昇する「人口ボーナス」期に入った。今後すさまじい内需拡大と高度成長時代が続くことが確約されている国だ。
民主主義を標榜する国であり、今後の急速な経済成長により、近年ますます注目を浴びている国となっている。このインドを率いているのがナレンドラ・モディ首相だが、強力なリーダーシップが評価されて、今年は3期目の政権確保を目指して選挙を戦っているが、恐らく圧勝する。
モディ首相はヒンズー至上主義であり、グローバル社会はここに嫌疑を抱いているのだが、国の伝統や宗教を守りつつ、経済成長も加速させる柔軟性をモディ首相は持っており、国民の支持は厚い。このモディ首相の、インド経済を牽引し未来を拓く一要素として挙げられるのが「デジタル・インディア」の概念だ。
インドはまだインフラとしては未成熟な地域が多い。特に農村はそうだ。モディ首相はここを改善していくことでインドを知識集約的な国家に変革していくという目標を掲げ、この「デジタル・インディア」のキャンペーンを強力に推し進めている。農村部に高速インターネットネットワークを敷設し、インターネットユーザーを拡充し、スマートフォンを普及させて、デジタル・リテラシーを向上させて、インドをデジタル超大国にする壮大な計画が「デジタル・インディア」だ。
アメリカの巨大企業のCEOは、MicrosoftもGoogleもAdobeもIBMもMasteCardも、CEO(経営最高責任者)はインド系であるのを見ても分かるとおり、インド人はデジタルと相性が良い。シリコンバレーの2割の企業はインド系の人材が重責を担っているという調査結果もあるが、それほどインド系とデジタルは相性が良い。
モディ首相の「デジタル・インディア」はまさにインド人の得意を徹底的に伸ばして国家を強靱化するという思惑もある。
フィンテックが急激に広がっているインド
「デジタル・インディア」では、今後すべての政府サービスをオンラインにすることも目的とされている。
税金の支払い、公共料金の支払い、教育、就職活動にかかる書類、ビジネス活動全般、国民の健康管理、旅行の予約、鉄道チケットの予約、出生証明書、病院の料金支払い、学位証明書、診断、勤怠、職業訓練、パスポート等々、あらゆるものがデジタル化し、全インド人がデジタルでアクセスできるようになる。
インドは汚職、脱税も多い国だが、これもデジタル・インディアでブラックマネーの撲滅としてデジタルが活用される。
現在、インドではこのデジタル・インディアによって、フィンテック(Financial Technology)が急激に広がっており、通貨や決済自体も急速にインド社会を変えていこうとしている。フィンテックは、伝統的な金融サービスに革新的なデジタル技術を組み合わせ、新しいサービスや取引方法を提供する分野であり、これがデジタル・インディアの一翼を担っている。
インドは「遅れた国」という印象を私たちはずっと持ち続けているのだが、「デジタル・インディア」によってインドは急激に変わっていこうとしており、私たちの印象は10年後には大きく変わっている可能性がある。それほど、インドのデジタル化は急激に進んでいる。インドの人口は14億人だが、すでにインドの携帯電話の契約数は11.5億となっている。
移動電話サービスの人口普及率は83.1%、63.5%は4Gサービスを利用している。このスマートフォンの普及により、インドの消費者が容易にデジタル金融サービスにアクセスできるようになり、銀行口座を持たない人々にも金融サービスが提供されるようになったのだ。これが、インドのフィンテック市場の拡大を牽引している。
インドでは中央銀行が決済システムを作った
インド政府はデジタル・インディアを支援するため、デジタルインフラの整備やデジタルアイデンティティの推進などの取り組みを進めている。
また、フィンテック企業への規制緩和も行い、新たなイノベーションや参入が促進されている。
これにより、伝統的な金融機関とフィンテック企業が共存し、競争が促進されている。
インド政府はキャッシュレス社会が推進しているのだが、ここに政府は「デジタル・インディア」運動の一環として導入されたのが、統一支払いインターフェース(UPI)だった。これによって、スマホと銀行口座を直接繋げることで支払いができるようになった。このUPIを構築したのはインド決済公社であり、この決済公社の中心になったのがインドの中央銀行(インド準備銀行)である。
これを見ても、インドは政府から中央銀行から民間から、怒濤のごとくデジタル化に向けて突っ走っているのがわかるはずだ。2024年7月に新しい紙幣を発行すると言って昭和の古臭い価値観で動いている日本政府とはまるっきり違う。
デジタル・インディアを押し進める今のインドは、とにかく最先端に目が向いているのである。
かくして、政府主導のデジタル決済の急速な普及は、小規模な取引から大規模なビジネストランザクションに至るまで、あらゆる経済活動に影響を与えているようになりつつある。
小売業者は現金の管理や取引の容易さを追求し、企業は効率的な経費管理を目指してデジタル決済を採用している。
さらに、インドのフィンテック企業は個人向け融資や投資プラットフォームなど、従来の金融機関が提供していたサービスに新たなアプローチをもたらしている。
例えば、デジタル・レンディング(個人向けのデジタル融資)は、従来の融資プロセスを簡素化し、審査結果の迅速な提供が可能になっている。これにより、低所得層やクレジットヒストリーのない人々にも融資が行き渡り、新たな経済主体が生まれつつある。
インドの成長に賭けたほうが確実性が高いと思っている
インド決済公社が構築した堅牢なシステムは、インド国内だけで使うのではなく、他国にも「輸出」することでインドは「デジタル」の分野で影響力を広げようとしている。このシステムは、異なる国や文化にも適応可能な柔軟性を備えている。そのため、国境を越えることが可能なシステムなのだ。
ネパールもこのシステムを取り入れ、国内でのデジタル決済の効率向上や金融取引の円滑化を図っている。
この「システムの輸出」は、インドのデジタル経済の成功を背景に、他国においても同様の利便性やセキュリティを提供することで、国際的なビジネスの拡大を図るものだ。中国の一帯一路とはまったく違った方法で、インドはデジタルの分野で一帯一路を広げようとしている。
さらに他の地域にもインドの包括的なデジタル化のパッケージが提供されるようになっていくと、途上国を中心にインドのデジタル経済圏ができあがるということになる。
現在、日本人はインドが「デジタル・インディア」でこれまでとまったく違う国に変貌しようとしていることにまったく気づいていない。たしかにインド国内を見ると、まだ以前と何も変わっていないように見えるかもしれない。国民の所得もまだ低いままで、インフラは整っていないようにも見える。
ところが、インドは政府が強力に押し進める政府は「デジタル・インディア」運動によって、リープフロッグ型発展が起こっているのである。
リープフロッグ型発展とは、新興国や発展途上国が従来の技術や経済モデルを飛び越え、最新の技術や手法を採用することによって急速に発展する過程を指す。
インド政府は意識的にリープフロッグ型発展を進めているとも言える。
日本は裏金つくりしか興味のない低能な政治家ばかりが集まって国を30年も成長させることができないで没落していこうとしているのだが、インドは逆でこれから爆発的な成長を手にしようとしている。
あと数年でインドはGDPでも日本を抜くだろう。
最後までお読みいただき、有り難うございました。 ☚ LINK
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