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日本人を貧困に落とす“認知バイアス”の恐ろしい仕組み

 神樹兵輔

2024年1月24日

今回は「市場の歪みならぬ認知の歪みで、私たちの人生は大損させられている!」というテーマでお届けしたいと思います。ただでさえ、日本人は、年々貧しくなる一方です。2023年のGDPは円安のせいで、停滞するドイツにさえ追い抜かれ、第4位確定の見込みです(IMFの見通し)。昨年2023年末に内閣府が公表した2022年の1人当たり名目GDPは、経済が低迷するイタリアにも抜かれ、32位に転落です。先進7カ国(G7)の中でも最低を記録することになりました。


市場の歪みならぬ認知の歪みで、私たちの人生は大損させられている

かつて1人当たり名目GDPで、常に1位を保ってきた人口の少ないルクセンブルク(約66万人)に次ぐ2位だったこともある日本(1988年と2000年)は、GDPシェアにおいても世界の17.6%(1995年)を占めたこともありますが、今や世界シェアはたったの4.2%です(2022年の米国約25%、中国約18%)。

また、相対的貧困率は、厚生労働省が20237月に公開した「2022(令和4)年国民生活基礎調査」で、2021年の相対的貧困率が15.4と示されました。

経済協力開発機構(OECD)が公表している各国の貧困率と比較すると格差社会の米国や韓国よりも高く、国民の6人に1人が貧困であり、子どもの8.7人に1人が貧困です。

ちなみに、相対的貧困率は、世帯の可処分所得(手取り収入)を世帯人員の平方根で割った中央値の半分以下の割合を示します。

つまり日本の貧困線(単身者世帯124万円、親1人子1人の2人世帯175万円、親1人子2人の3人世帯215万円、親2人子2人の4人世帯248万円)未満の年間所得の世帯に相当します。こうした貧しい日本を構築してきたのは、経団連・大企業から毎年20数億円の政治献金をもらい、大企業徹底優遇での賃金下落政策を採り続けてきた反日・売国・世襲・金まみれの自民党と、その補完勢力でしかないカルト教団輩出の下駄の雪政党・公明党の長年の政策に起因するものです。

しかし、国民の3割近い人たちが腐りきった自民党を支持し、有権者の半数しか投票に行かない日本ですから、この政治体制はまだまだ続くでしょう。野党も腑抜けのどうしようもない議員の集まりだからです。そうなると、これからも貧困率はさらに上昇を続ける日本ですから、極力無駄遣いを避けて、将来の老後の資産を蓄える必要があるでしょう。ゆえに、人生で大損させられている「事象」について、しっかり考えておく必要があるのです。

 

誰もが経験済みの「市場の歪み」

一般に、私たちの経済社会は、「価値の尺度」を表わす「お金」との絡み合いの世界です。

あなたにとって価値のないモノが、ある人々にとっては非常に価値のあるものとして高値で取引されることがあり、またその逆もあることでしょう。これは誰もが経験済みのことです。経済学では、こうした現象を「市場の歪み」と表現します。

同じモノであっても、地域によって人によって価格差が生じることをいいます。

経済社会では、つねにこうした「市場の歪み」や「人々の思惑による価値の増減」が生じているのです。

たとえば、有名な事例として、江戸時代の紀州出身の紀伊国屋文左衛門が挙げられます。

紀州のミカンが大豊作で暴落し、一方の江戸では海が荒れてミカンが入らず高値を付けていたことを知り、船を調達し、ミカンを積んで嵐の中に江戸に向かわせ、大儲けした逸話があります。

また、三菱財閥の創始者・岩崎弥太郎は明治政府が紙幣統一のために各藩の藩札を買い取るという内部情報をもとに暴落していた藩札を買い占め、明治政府の新紙幣と交換して財を成し、政府に食い込むことで財閥を形成していった事例もあります。

さらには、1992年ハンガリー出身の米国人ジョージ・ソロスの事例も驚異的です。

ソロスは、英国ポンドの欧州域内固定相場が高すぎるとポンド空売りを仕掛けてポンドを暴落させ、莫大な富を得て英国のユーロ導入を阻みました。これらは、いずれも「市場の歪み」に目を付けた「鞘取り」で、大儲けした事例として歴史的にも非常に有名です。

 

「認知の歪み」は気づかぬうちに私たちの脳を侵奪する

ところで近年では、「合理的に行動する人間」を前提とした従来の経済学に、「人間は非合理的に行動する」という心理的な概念を融合させた「行動経済学」において、さまざまな興味深い事象が明らかにされるようになっています。

「市場の歪み」ならぬ、「認知の歪み」なのです。実際、多くの消費者は、気づかぬうちに不合理な行動をとっています。

たとえば合理的な思考では選択されないはずの、市場価格よりもはるかに高額の商品が売れる分野があります。

皮革製品や、時計、クルマなどの高級ブランドと呼ばれる一群の商品や宝飾品、美容関連の市場なのです。

実用としての本来価値ではなく、「見せびらかしたいウェブレン効果)」といった欲求に支配された高価格帯市場を見事に形成することに成功しています。

このように経済社会には不思議なカラクリ、面白い現象が溢れ返っているのです。

そんなカラクリの一端にも通じておけば、モノの見方、お金の効用についての理解もすすみ、人生を豊かで面白いものに変えていくことも出来るのではないでしょうか。

「ヒューリスティック」や「認知バイアス」とは何か?

経済学に認知科学を融合させた「行動経済学」という分野で、2002年にノーベル経済学賞を受賞したのは、イスラエル出身の米国の心理学者ダニエル・カーネマン博士でした。

カーネマン博士は、私たちの脳がどのような思考経過をたどって「判断ミス」や「過ち」に導かれるかを研究しました。

それが今日、「ヒューリスティック」や「認知バイアス」といった言葉の広がりとともに、人間の行動理解に大きく貢献してくれているのです。 ※) 認知バイアスとは、私たちが意思決定をするときに、先入観や経験則、直感などに頼って非合理的な判断をしてしまう心理傾向のこと。

人は、物事をとらえる際、その多くを直感で判断しています。

瞬間的、無意識に考える脳の「システム1」を機能させ、「これはオトクだから買おう」とか、「危険だから近づくのをやめよう」などと判断し、行動に移しているのです。

これは、私たち人類の生存戦略に直結する、極めて重要な脳のはたらきです。

しかし、簡単に「直感」で判断できず、「熟考」を要する事柄の場合もあります。

「どうやってこの商品の売上を伸ばすか」とか、「この人と結婚すべきか」といった問題に直面した時です。

こうした場面で人は「システム1」の直感に導かれつつ、論理的かつ理性的思考を行う脳の「システム2」を起動させて考えます。

こちらは脳に多大な負荷がかかり、「システム1」が「速い思考」、「システム2」が「遅い思考」と呼ばれるゆえんです。

ところで、こうした「システム1」にも、「システム2」にもそれぞれのはたらきにおいては欠陥があります。

「ヒューリスティック」とは、「経験則」ともいいますが、主に「システム1」での判断の際、複雑な問題を「簡便な事例」に置き換える作用のことを指しています。

速く答えが出せるものの、置き換えた事例が適切でない場合もあり、これが「システム1」の欠陥といわれます。

そして、「システム2」にも欠陥があります。

睡眠不足や二日酔いだと十分なはたらきができません。面倒なので「システム1」の答えに便乗する怠惰なケースもあるでしょう。

こうしたヒューリスティックへの過度の依存や、ある特定の状況下で起きる「認知の偏りや歪み」のことを「認知バイアス」と呼びます。その数は百以上もあるといい、私たちは、この脳の独特の「クセ」や「偏り」によって、人生にも多大な影響を受けているわけです。

「行動経済学における消費行動」とは?

前述の通り、私たちの意思決定には、「脳のクセ」や「偏見」があり、それらを「認知バイアス」と一括りにしています。

こうした行動経済学の概念中の柱ともなる学説が「プロスペクト理論」です。

別名「損失回避の法則」とも呼ばれるものです。

これは「人は目先の利益を求め、損失は回避したい」という人の性向です。

「プロスペクト理論」には、「価値関数」と「確率加重関数」が用いられ、この2つの関数が「認知に歪み」をもたらす要素となっています。

たとえば、価値関数は「10万円もらった時の嬉しさよりも、10万円を落とした時のガッカリ感」のほうが喜びの2.25倍も感情に影響が及ぶとされます。

また、確率加重関数は、人は「高い確率を低く、低い確率を高く見積る」という性向を示し、「志望校の合格確率35%」と宣告された受験生でも、「オレはイケルはず」と楽観視したり、「手術の成功率は99%!」と告げられたのに「ひょっとして失敗するかも」などと不安になります。これらは確率40%を境に起こる現象とされています。

一般に、人は買った株が上がると、目先の利益を確定したくて早く売りたくなり、下がった場合は「また上がるはず」と損失を確定せず、売らずにいて、もっと下がり「塩漬け株」にしがちです。

これもプロスペクト理論で説明できる性向です。

また、毎月家賃を払うのがもったいないからと、思い切って35年ローンを組んで5,000万円の新築住宅を買う人もいます。

35年という長い年月や、5,000万円という大金のローンをうまく払い続けられるのかどうか――といった確率のほうは、かなり低く見積もってしまう残念な人が多いわけです。

人生には「認知バイアス」に惑わされた「無駄遣い」がいっぱい

つまり、「認知バイアス」に惑わされて、人生には多くの無駄な消費をしてしまう――ということでもあるのです。

それは「モノの原価」を冷静に考えないことが1つ目には上げられるでしょう。

もう1つは、「見栄」や「一過性の向上心」に因るからです。

人生の5大無駄遣い、といわれるのが「マイホーム」「マイカー」「教育費」「保険」「美容関連」です。

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マイホームは長期のローンに縛られ、完済時はボロボロです。マイカーは車体費用より維持費がベラボーです。

教育は本人に見合っていないことが多いでしょう。

また、生命保険は加入費用の多くが広告や人件費に費やされ、いざという時の補償が少なすぎ、都道府県民共済のほうが「コスパ最高」という事実を知らない人が騙されています。

そして、最後の美容関連ですが、原価数十円の安い原材料の化粧品を、バカ高い値段で買うこと自体が狂っています。

百均の化粧品と中身が変わらない事実を化学的にも知るべきでしょう。

他にも「高級ブランド品」信仰がありますが、本物と区別のつかない精緻な偽物が本物の半額以下で製造販売されている事実を知ることと、アウトレットモールで5割引きや7割引きで売っても、十分な儲けが出ていることを考えれば大いなる無駄遣いといえるでしょう。

こうした無駄を控えて、せっせとタネ銭をつくり、投資を行い資産形成に励むべきなのです。

そのためには「認知バイアス」に陥っていないかを、まずは自分自身でよく検証してみることです。

私たちの生活の周辺をよーく見渡してみましょう。

そこに到れば、いかに無意味なこと、無価値なことに大金を注ぎ込んでいるかも、次第に明らかになるはずだからです。 




 

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