おがわの音♪ 第1533版の配信


裏金もさることながら表金こそが問題だ

パーティ裏金疑惑で抜け落ちている重要な視点

12/29()

 ジャーナリストの神保哲生が、パーティ券裏金問題報道で抜け落ちている重要な視点についてコメント。

 現職議員に対する強制捜査にまで発展している自民党派閥のパーティ券裏金問題。

 政治資金規正法に違反して支出や収入を収支報告書に記載しないことで資金を裏金化することはもちろん大きな問題だが、世の中の目が検察の捜査に注がれる中、いくつか重要な論点が抜け落ちているのが気になるそれは、現行の政治資金規正法では裏金もさることながら「表金」にも重大な問題があるということだ。



  忘れてはならないことは、今回は政治資金収支報告書の不記載や虚偽記載が問題になっているが、そもそもパーティ券の販売でどれだけの寄付を集めようが、またその一部を政治家に還流させる、いわゆるキックバックを行おうが、その金額を収支報告書に記載さえすれば、現行法の下では何の問題もなかったということだ。

 パーティ券収入というのは、早い話が企業・団体献金の抜け穴だ。

20万円以上の寄付者については収支報告書への記載義務があり、1つの団体から1回のパーティあたり150万円までしか集められないという上限はあるが、これは早い話が11つのコップには150万円という制限があるが、コップはいくつあっても構わないという制度なのだ。100社から150万円ずつ集めれば15,000万円の寄付を合法的に集められることになる。

 そもそも現行の政治資金規正法が改正された時、政治家個人への企業・団体献金は禁止することが決まっていた

これはロッキード、リクルート、佐川急便、日歯連事件等々、過去の贈収賄事件がいずれも企業が有力政治家に資金を提供し、その影響力によって利益を得ようとしたものだったことへの反省の上に立っている。そして、企業・団体献金と引き換えに国民1人あたり250円、総額で300億円あまりの政党交付金が議席数に応じて毎年、各政党に支出されているそもそも企業・団体献金はなくなっていたはずなのだ。

 しかし、政治家個人への企業・団体献金は禁止されたものの、5年という待機期間が設けられたことで政治改革熱のほとぼりが冷め、政党と政党の資金団体に対する企業・団体献金は禁止されなかったそして、パーティ券の販売という企業・団体献金の抜け穴まで作られた結果、企業・団体から政党や派閥に寄せられた寄付が合法的に政治家個人に還流されることが可能となってしまった。政党や派閥から政治家個人への寄付には事実上何の制限もないからだ。

 企業・団体献金が罪深いのは、企業・団体は何のメリットもないのに政治に多額の寄付を行うわけがないため、そこには何らかの便宜供与というリターンが伴うことが前提にあるということだ。そして、その便宜供与のために日本の経済政策や産業政策が歪められることで、単に市場での競争が阻害されるだけでなく、日本の産業構造の改革が難しくなってしまう。実際に、競争力を失い市場で競争できなくなった企業や、本来は正当化できない利権を握っている団体ほど、政治の庇護を必要とすることは想像に難くないだろう。

 1990年代の中庸まで日本は、国民1人あたりのGDPで世界でトップの座に君臨するなど、文字通り経済大国だった。

しかし、その後、人口ボーナスの解消と呼応するかのように日本は経済力を失い、今や1人あたりGDPを始めとするあらゆる経済指標で先進国の最下位グループに沈んでいる。それもそのはずで日本は産業構造改革に根本的に失敗しているからだ。

現在の日本の時価総額トップ10企業はいずれも高度成長期以前に創業された企業ばかりで、トップにGAFAMやテスラなどの新興企業がひしめき合うアメリカとは明らかな対照を成している。

 検察にはぜひ裏金をしっかりと取り締まるようお願いしたいが、市民は特捜の捜査の推移を見守りつつも、この際、表金問題をきちんと制御するよう政治資金規正法やその他の法律や制度を整備するよう、政府をしっかりと監視する必要があるだろう。

 また、もう1つ、現在の事件報道から抜け落ちている重要な視点が、われわれは検察のリークをあまりにも鵜呑みにしすぎてはいないかという点だ。

中曽根、竹下元首相に安倍晋太郎、宮澤喜一、森喜朗など当時の大物政治家が新規で上場され値上がりが確実だとされたリクルートコスモス社株を大量に割り当てられていたリクルート事件は、大山鳴動よろしく大騒ぎした挙げ句、逮捕された政治家は藤波孝生元官房長官と公明党の池田克也衆院議員の2人だけだった

事件で名前があがったそれ以外の政治家はいずれも検察のリークを記者クラブメディアが垂れ流したものだった。

 ビデオニュース・ドットコムでは、社会学者の宮台真司とジャーナリストの神保哲生が毎回のように、マックス・ウェーバーが説く政治と官僚のハルマゲドン(最終戦争)について言及している。

その趣旨は民主政は、市民から選挙で選ばれた政治家が政府、つまり官僚をしっかりとコントロールすることによってのみ正常に機能するというもの。

官僚は有権者から投票で選ばれたわけでなく、しかも常に予算の獲得と人事が最大の関心事である「現状維持の権化」であるため、必ずしも市民に沿った行動は取らないし、下手をすると暴走する危険性も内包している。

しかし、選挙で選ばれた政治家が市民益を代表し、巨大な官僚機構を制御することで、市民の望む政府が実現するという考え方だ。そして、それが故に政治と官僚は絶えず両者の間で熾烈な権力闘争を繰り広げる宿命にある。

 政治は選挙があるので市民の統制を受け、政治家が作る法律や制度に縛られる行政は政治家に弱い。

その三つ巴の関係が民主政の適正なチェック・アンド・バランスを生む

 しかし、政治に対して行政が圧倒的に強くなればなるほど、政治は市民益から遠ざかる

昨今、日本の国会で審議され成立している法律のほとんどは閣法、つまり行政が作った法案であり、議員立法ではない。

そもそも今の政治制度の下では、政治に独自の法案を作成する能力は皆無に等しい

日本の政治にはそれだけの資金もなければリソースもない。今日の日本のような行政が政治を事実上支配し、政治はそのうわ水の利益配分にあやかるくらいしか関われない現状が続く限り、決して市民に優しい政治は実現しない。そして記者クラブを通じて行政と一体化しているマスメディアが報道の大元を独占している限り、市民は行政の専横によってどれだけ市民益が損なわれているかを知ること自体が難しい

 違法行為は現に取り締まられなければならないし、裏金など言語道断であることは言うまでもない。

しかし、それと同時に今回のパーティ裏金問題は、そもそも 表で企業献金が放置され日本の経済・産業政策が歪められている実態や、政治と官僚の力関係という民主政における根本的な問題に目を向ける好機を与えてくれている。

 そもそも政治資金規正法は第1条と第2条で、政治に対する寄付自体は制限されるべきものではなく、あくまでその実態を国民の不断の監視の下に置くことを目的としていることがはっきりと書かれている。 

検察のリークとそれを垂れ流す記者クラブメディアの報道に踊らされることなく、この際、市民一人ひとりがそもそも日本の政治にはどのような役割を望んでいるのか、日本の政治はどうあるべきなのか、政府の操縦桿を霞ヶ関の官僚に任せっきりで本当にいいのかなど、民主政のあり方を根本から再考すべき時が来ているのではないだろうか


完成したはずのトンネルは「張りぼて」 

ほぼ全工程やり直しに

12/29

  完成したはずのトンネルが、ほぼ全てやり直しに――。全国の公共工事でも異例の事態が和歌山県で起きている。

トンネル内壁のコンクリートの厚みが規定の10分の1しかないなど「張りぼて」であることが発覚したのだ。 

トンネル整備は、南海トラフ地震による津波被災時などのアクセス確保が目的

受注業者の負担で工事がやり直されることになったが、使用開始は約2年遅れてしまう。    @毎日新聞

◇津波時に威力発揮するはずが…

 施工不良が発覚したのは、同県那智勝浦、串本両町境の「八郎山トンネル」(全長711メートル)。

この地域の主要幹線道路・国道42号は、海岸近くを走っており、地震による津波被害が想定される。

このため、内陸部を通る県道に新たなトンネルを設けようと、県は2020年に一般競争入札を実施。

浅川組(和歌山市)など2社による共同企業体が約20億円で受注した。229月に完成して県に引き渡され、2312月に使用開始予定だった

 ところが、別の業者が2212月、照明設置のために天井に穴を開けると、内部に空洞があることが判明

その後の県の調査で、本来30センチであるべき内壁コンクリートの厚みが3センチしかない部分があるほか、全体の約7割で空洞が見つかった。

風化や地震などによるひび割れでコンクリートが落下しやすくなるという。

 事態はこれだけで収まらなかった。

内壁のコンクリートを剥がすなどして、トンネルを支えるアーチ状の鋼材(支保工(しほこう))を調べたところ、ほぼ全域で本来の位置に設置されていなかった。その結果、内壁を全域で剥がし、約700本の全ての支保工を外して、掘削以外の工程をやり直すことが決まった。工事費用はすべて受注業者が負担する。

 一体、何があったのか。

浅川組によると、現場担当者は社内調査に対して・・・

「コンクリートの厚みが確保できないことを認識していたが、工期を短縮したかったのでそのまま工事を進めた」

「数値を偽装して検査を通した」と認めたという。

また、県の調査では、工事の進捗に応じて県のチェックを受ける「段階確認」の申請について、業者側は「内壁の薄さを隠すため規定を守らなかった」と明かしたという。県は事態を重くみて、受注の2社を237月から6カ月間の入札参加資格停止とした。

 

 ◇和歌山県の管理にも甘さ

 これほどずさんな工事にもかかわらず、県はトンネルを引き渡されても施工不良を見抜けなかった。

念の入ったことに、業者の現場担当者は内壁の厚さの数値を改ざんした書類を県に提出していたのだ。

ただ、県側も本来136回必要な段階確認を最初の6回しか実施していなかった。

県の管理の甘さが、ずさんな工事を助長した面もある。

 県は「担当者が今回のようなトンネル工事の経験不足で、すべての進捗ごとに検査しなければいけないという認識が欠けていた」と説明。

県議会で追及を受けた幹部が「責任を重く受け止めている」と謝罪に追い込まれた。

今後は工事前に段階確認の手順を決め、上司らが決裁するなどの対策を講じる。

 取材に対し浅川組は「現場のコンプライアンス意識の不足と会社との連絡不足に起因していると思う。全社員にコンプライアンス教育を実施し、信頼回復に努めたい」と話している。

トンネルの再工事は決まったが、地元の失望は大きい。

トンネル設置の誘致活動をしてきた串本町上田原の杉本百生さん(80)は「海沿いの国道42号を迂回する道路が必要だと18年前から訴えてきた。

完成したと思ったのに利用が遠のくとは……」と憤る。

 全国で老朽化したインフラの修復が急がれる一方、技術者やノウハウ継承の不足が問題化している。

関係者の間には「現場では工期厳守を迫られ、安全性が後回しになっている面があるのでは」と指摘する声もある。

 

 ◇「適正な監督を」

 片桐徹也・東洋大客員教授(公民連携専攻・土木工学)は・・・ 

「県の監督職員は請負契約の適正な履行を確保するために必要に応じて現場への立ち会いを行い、工事後に見えなくなる部分のうち重要箇所は設計図書との適合を確認することになっている。今回は県が適正な監督業務を行ったとは言いがたく、業者側と同様にコンプライアンス意識の欠如が生じたということになるのではないか」と話している。



 

最後までお読みいただき、有り難うございました。  ☚ LINK 

*** 皆さんからの ご意見・ご感想など BLOG』のコメントを頂きながら、双方向での 【やり取り】 が できれば、大変嬉しく思います!!   もちろん、直接メール返信でもOK ! です。 ^_^ *** 


メール・BLOG の転送厳禁です!!   よろしくお願いします。