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日本人が果たした「心に描いた風景の復元が可能」の衝撃

2023.12.23 

by グーグル日本法人元社長 辻野晃一郎

 これまで困難とされてきた、「人が心の中に思い描いた画像」の復元。

そんな分野の研究で、日本人グループが画期的な結果を出していた事実をご存知でしょうか。

今回は、『グーグルで必要なことは、みんなソニーが教えてくれた』等の著作で知られる辻野さんが、メンタルイメージの復元に成功したとする「量子科学技術研究開発機構」の興味深いプレスリリースの内容を紹介。その成果が人類に何をもたらすかについて解説しています。



心に描いた風景を脳信号から復元!「アタマの中」を覗く研究が進む

少し前の1130日の話になりますが、国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構(QST、理事長 小安重夫)発の『心に描いた風景を脳信号から復元!~生成系AIと数理的手法を用いた新たな技術を開発~』というプレスリリースが目に留まりましたので、プレス内容を引用しつつ紹介します。

QSTの量子生命・医学部門 量子生命科学研究所 量子生命情報科学研究チームの間島慶研究員、情報通信研究機構(NICT、理事長 徳田英幸)未来ICT研究所の小出(間島)真子研究員、大阪大学大学院生命機能研究科の西本伸志教授は、人が心の中で思い描いた任意の風景や物体などの「メンタルイメージ」を脳信号から読み出し復元することに成功したそうです。

計測された脳信号から、被験者の知覚・記憶・運動意図などを読み出す技術は、脳情報解読技術(脳情報デコーディング技術)と呼ばれ、近年発展が目覚ましい機械学習やAIを活用しつつ大きな進歩を遂げてきました。代表例として、「人が目で見ている画像(視覚画像)」を、機能的磁気共鳴画像法(fMRI *1 という手法によって計測した脳信号から復元できることは、先行研究で既に示されてきました。

しかし、実際に目で見ている画像を復元できる一方で、「人が心の中に思い描く画像(メンタルイメージ)」の復元は、画像の復元精度が低く、アルファベット、単純な幾何学図形、人の顔といった限られた種類の画像でしかこれまで成功例はありませんでした。

これに対して、同研究チームは、視覚画像の復元に成功した既存の手法を基礎にしながら、画像生成AI、ベイズ推定 *2 、ランジュバン動力学法 *3 などを組み合わせた新手法を開発しました。この新手法を用いて、画像の種類を限定することなく、メンタルイメージを復元することに世界で初めて成功しました。本成果は、メンタルイメージの復元を介した診断の補助や、ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)技術への応用が期待されます。

例えば、意思の疎通が困難な患者から医師や家族に意思を伝えたり、思い通りに義手を動かしたりなど、医療や福祉分野において、より革新的な技術を生み出すことに繋がることが期待されます。

また、量子生命科学の分野では、生体ナノ量子センサ等の量子計測・センシング技術 *4 を用いて、脳・神経におけるミクロレベルの生命活動を計測し、マクロレベルで認知機能や意識が生み出されるメカニズムを明らかにしようとする研究が進められていますが、本成果は、メンタルイメージを客観的に復元することによって、こうした研究にもブレイクスルーをもたらす可能性があります。

分子・細胞のふるまいから認知や意識の状態までを途切れなく説明すること、すなわち「心とは何か」の解明に道を拓くものとしても期待されます。

イーロン・マスクが、人の脳にチップを埋め込むという侵襲型の手法でのBMIの研究を進めていることを本メルマガでも何度か取り上げてきましたが、本研究は、全く別の非侵襲型の手法で人間の脳の働きを解明し外部と繋げるアプローチとしても興味深いものです。

本研究は、神経科学・深層学習に関する論文が数多く発表されている国際誌Neural Networks2022-23のインパクトファクター9.657)にオンライン掲載されました。

いよいよ「アタマの中」を覗くことが可能になる時代の幕開けかもしれません(笑)。

詳細は以下を参照してください。 

 心に描いた風景を脳信号から復元!~生成系AIと数理的手を用いた新たな技術を開発~

2023年12月22日号の記事を一部抜粋


用語解説

*1 機能的磁気共鳴画像法(fMRI

磁気共鳴画像装置(MRI装置)を用いて被検者の脳活動状態を安全に(非侵襲的に)計測し、画像化する方法。

MRI装置から発生する磁場内に横たわる被検者にラジオ波を照射し、はね返ってくる電波を計測することで、脳内の局所的な酸素消費状態や、これに関連する神経細胞の活動状態を求めることができる。

*2 ベイズ推定

統計学・確率論における推定手法の一つ。観測されたデータを元に、観測できていないデータの推定を行うもの。

AI研究の基礎理論の一つ

本研究では、脳信号から読み出した(翻訳した)心の中に描かれた画像の特徴データを元に、心の中に描かれた画像を推定している。

*3 ランジュバン動力学法

化学の分野において、原子・分子の動きをシミュレーションするための計算方法の一つ。

近年、AI分野にも転用され、ベイズ推定の計算結果を効率的に算出するためにも用いられている。

本研究では、ベイズ推定によって、心の中に描いた画像を脳信号から復元する際、この方法で復元画像を構成している。

ランダムな画像を最初に用意し、ランジュバン動力学法の更新ルールに従い、修正を繰り返すことで、十分な回数(本研究では500回)の修正後に、ベイズ推定の予測確率に合った画像を手に入れることができる。

*4 生体ナノ量子センサなどの量子計測・センシング技術

電子や光子などが持つ量子性を活用した、既存技術では実現できない高感度な計測・センシング技術。

近年、その生体応用を目指した開発が精力的に進められている。 

QSTでは、ナノサイズのダイヤモンドに量子ビームを当てて作った結晶の乱れ(NVセンター)を用いて、細胞内の微小環境に生じる温度やpHなどの変化を精密に測定する「生体ナノ量子センサ」が開発され、脳神経活動の状態評価などに適用されている。

(「心に描いた風景を脳信号から復元!~生成系AIと数理的手法を用いた新たな技術を開発~」より)


定形郵便、84円から110円に30年ぶり値上げへ 24年秋ごろ       

 総務省は18日、25グラム以下の封書(定形郵便物)の郵便料金の上限を現行の84円から110円に改正する省令案を発表した。省令改正後、日本郵便は2024年秋ごろに110円に値上げする方針。消費税増税に伴う改定を除き、封書料金は1994年以降据え置かれており、今回値上げされれば約30年ぶりとなる。現行94円の50グラム以下の封書も110円に統一する。はがきは63円から85円に値上げする。

 25グラム以下の封書の値上げ率は31%で、20円から50円に値上げした76年に次ぐ高さとなる。94年は62円から80円に値上げした。最近では消費税が8%と10%に引き上げられた14年と19年にそれぞれ2円値上げしている。

 郵便料金の大幅な値上げに踏み切るのは、各種手続きのデジタル化やSNS(ネット交流サービス)の普及によって郵便物数が毎年減少し、郵便事業の収益が悪化しているためだ。賃上げや輸送コストの高騰も重なり、日本郵便は22年度決算で郵便事業が07年の民営化以降では初めて赤字に転落。料金値上げを検討していた。総務省は家計全体への影響は少ないとして、18日に改正案を情報通信行政・郵政行政審議会に諮問した。

 現行の封書料金は84円(25グラム以下)と94円(50グラム以下)に分かれている。日本郵便は今回の値上げでこの重量区分をなくして料金を110円に統一する方針。はがきは消費増税時を除くと17年以来、約7年ぶりの値上げとなる。定形外なども基本的に約3割の値上げを検討する。利用者が多いレターパックや速達などは値上げ率を抑え、今年10月に値上げ済みの現金書留などの料金は据え置く。

 25グラム以下の封書は国民負担や物価などの状況を勘案し、郵便法の施行規則で上限が定められており、見直すには総務省令の改正が必要で、そのほかの郵便料金は日本郵便の届け出により改定できる。審議会は19日から来年122日までパブリックコメントを実施し、来年3月にも答申する。その後は消費者委員会や物価問題の関係閣僚会議などを経て、早ければ6月に省令を公布。手続きが順調に進めば、秋ごろに新料金が導入される見通し。 

郵便料金の大幅な値上げ方針が18日示された。

総務省は、現行料金のままでは4年後に日本郵便の郵便事業の赤字が3000億円超に膨らむと見込む。ただ、想定通りの値上げが実現しても2026年度には再び赤字となる見通し。

今後も郵便物の増加は見込めず、郵便事業を維持するには抜本的な対策が必要になる。

 郵便物は263億通あった01年度をピークに毎年3%程度の減少が続いている。22年度は144億通とピークに比べてほぼ半減した。

インターネットやSNS(ネット交流サービス)の普及に伴って、企業が販売促進のダイレクトメールを減らしたり、各種手続きのウェブ化が進んだりしたことが、郵便物減少の背景にある。

 これに対し、日本郵便は「大切な人への想いを手紙にしたため、受け取る喜び、贈り物を送る楽しさは時代が変わっても色あせない」として、東京・渋谷で若者向けにデザインしたグッズを販売するなど郵便局のイメージチェンジを図っている。

企業への年賀状の利用勧奨などの取り組みも進めているが、デジタル化の流れには逆らえず、郵便物は28年度にさらに2割減の115億通まで落ち込むとみている。

 一方、全国に約24000ある郵便局のコストは増加傾向が続く。郵便物を住所ごとに仕分けする作業を機械化し、配達ルートを自動で作成するシステムを活用するなど効率化は進めているが、郵便事業の営業費用の4分の3は人件費が占める。

23年春闘では物価高に伴って07年の民営化後で最大となる月4800円の基本給底上げを実施しており、事業の効率化だけで人件費をカバーするのは難しくなっている。

配達に使う車やオートバイの燃料費の高騰もコストを押し上げている。



 

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