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「たっぷり寝て早起き」の習慣で痩せる真実


お腹回りに蓄積する内臓脂肪は、過剰な量になると悪玉の生理活性物質(アディポカイン)を産生して動脈硬化や高血圧、糖尿病といった健康寿命を脅かす病気のリスクを高めていく。

しかし、内臓脂肪は「つきやすいが、落としやすい」という特徴を持っている。 

長年、肥満のメカニズムやその治療について研究を行ってきた国立病院機構京都医療センター臨床研究センター予防医学研究室室長の坂根直樹氏は、「内臓脂肪の性質を正しく知ることができれば、内臓脂肪をたまりにくく、落としやすくすることは可能です」と話す。


 お腹回りにたまる内臓脂肪が悪玉の生理活性物質(アディポカインを分泌し、血圧や血糖値を上昇させ、血栓を作りやすくするなど全身に悪影響をもたらす。

へその高さのウエスト周囲径(腹囲)を改めて測ってみて、自分の内臓脂肪は思っていたよりもたまっていた……と現実に直面し、がっくりした人も、あきらめるのはまだ早い。「内臓脂肪は、つきやすく、落としやすいのが特徴です」と坂根氏は言う。

 図で見て分かるように、皮下脂肪は皮膚のすぐ下にある皮下組織から筋肉の間に、内臓脂肪は内臓の周囲についている。

 「内臓脂肪は皮下脂肪と比較して、代謝活性が高い、つまりエネルギーとして利用されやすいという特徴を持っています。これは、消化や代謝を司っている小腸や膵臓、肝臓に近い場所に内臓脂肪があり、エネルギー源である中性脂肪のやりとりがしやすいことが影響しています」(坂根氏)

 食事からとった栄養素は胃や小腸で消化され、エネルギーを必要とする臓器に利用される。余ったエネルギーは脂肪として蓄積される。内臓脂肪は、エネルギーの受け渡しをしている現場に近い場所にたまる。だからこそ、良くも悪くも食事内容を反映しやすいのだ。

 「貯金に例えると、内臓脂肪はいつでも引き出せる普通預金、一方、皮下脂肪は簡単に引き出すのが難しい定期預金だと理解してください。内臓脂肪はダイエットの効果が表れやすいのです」(坂根氏)

 お腹回りがなかなか痩せない、と悩んでいた人も、血圧や血糖値、肝機能の数値など、すでに内臓脂肪の悪影響として健康診断で気になる数値が出始めている人も、「内臓脂肪を減らす!これ以上増やさない!」を決意して行動に移すことでその悩みを解消できる可能性が高い。

会食の機会が多いこの時期、今以上に内臓脂肪を増やさないために重要なのは、食事の「量、質、時間」を見直すこと。 

夜遅くまで飲み食いすることが増える今こそ「時間」と「内臓脂肪」の関係について知っておきたい。 

「脂肪のたまりやすさ」に関係する食事の時間

内臓脂肪は私たちが普段飲むもの、食べるものを基に増えていく。だからこそ、食事をイチから見直すことが大切だ。

坂根氏は、内臓脂肪を落とす必要のある患者に自身の食事の「量、質、時間」について見直すようアドバイスしている。

坂根氏によると、量、質、時間のうち、最もチェックの多いものが、あなたの内臓脂肪をたまりやすくしている要因と考えられるという。

 今回は、食事の「時間」について見ていこう。

「時間」のチェックポイントは以下の通り。あなたの食事で、次の項目に当てはまるものはあるだろうか。

·食事の時間がまちまちで、抜くことも多い

·夜食を食べる習慣がある

·夕食は20時以降の遅い時間になることが多い

·早食いであまり噛まない

·朝が弱い夜型人間だ

これらの項目に複数のチェックが入った人は食事の時間帯や生活リズムなど、「時間」についてできることから見直しを行うと、効果的に内臓脂肪を落とすことができる。

 普段、仕事やさまざまな事情で遅い時間に夕食をとる人も多いだろう。夜遅くまで起きていて朝食を抜く夜型生活の人や、普段は夜型生活ではなくても宴会が続いている人も、夜遅くまで飲み食いすることが多くなる。このような夜型生活は、内臓脂肪を増やしやすい

夜遅い時間に食事をすると内臓脂肪がたまりやすくなることが、時間栄養学の研究によって明らかになっています」と坂根氏は警告する。

 時間栄養学とは、人間の体内に備わる「体内時計」と食事や栄養、代謝への影響を明らかにしようとする研究分野のこと。

同じものを同じ分量食べても、脂肪として蓄積されやすい時間、蓄積されにくい時間があることが近年分かってきた。

これは、「昼は活動してエネルギーを消費し、エネルギーをあまり使わずに済む夜はエネルギーをため込む」という体の基本的な仕組みがあるためだ。

 なかでも「Bmal1(ビーマルワン)」というタンパク質は夜間に脂肪を蓄える働きがあり、その分泌量が増え始める21時以降から夜中の2時頃」に食事をすると、脂肪がたまりやすくなると考えられている。

 「Bmal1の働き以外にも、寝る前に食べると食べた分のエネルギーを消費する時間をとることができません。

また、寝る前に糖質をとると、脂肪を分解する働きのある成長ホルモンの分泌が低下し、糖質がそのまま内臓脂肪に蓄えられやすくなります

つまり、寝る直前にドカ食いすると、日中に心がけた努力が帳消しになってしまうのです。飲み会でも、シメのラーメンやスイーツには注意が必要ですね」(坂根氏)

夜遅い時間に食べると内臓脂肪がたまりやすくなる理由

  • 夜間に脂肪を蓄える働きがあるタンパク質「Bmal1」の分泌量が21時以降に増える
  • 食べた分のエネルギーを消費する時間がとれない
  • 寝る前に糖質をとると、脂肪を分解する働きのある成長ホルモンの分泌が低下する

 

 坂根氏は、夕食が21時以降になる人には、夕方におにぎりかパンを食べておき、帰宅してからは軽いおかずやスープをとる程度にとどめるなどの分割食を勧めている。


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