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あと数年で到来する“日本のマンション大崩壊”時代

都市部に広がる「廃墟だらけ」の風景

2023.11.14 

by 神樹兵輔の衰退ニッポンの暗黒地図

地方都市ではすでに問題となって久しい「負動産」問題。しかしそれは、都市部、しかもマンションであっても無関係ではないようです。投資コンサルタント&マネーアナリストの神樹さんが、ごく近い将来にやってくる「マンション大崩壊・大廃墟時代」について詳しく解説。その上でマンション所有者に対して、物件の行く末を考えた人生設計を強く勧めています。



マンションが将来マイナスの資産に? やってくる「マンション大崩壊・大廃墟時代」

「衰退ニッポンの暗黒地図」をお届けするマネーアナリストの神樹兵輔(かみき・へいすけ)です。

今回は、「あなたが買ったマンションが将来マイナスの資産になりかねない危機到来!マンション大崩壊・大廃墟時代がやってくる!」というテーマで、近いうちに訪れる「マンション大崩壊」の暗黒の未来図をお届けいたします。

なぜそうなるかといえば、40年以上の老朽化し、管理の行き届いていないマンションが増えまくっているからです。

東京だけでも、築40年を超えたマンションは、17.4に及びます。このうち約1,811件のマンションには、すでに管理不全の兆候が表れているといいます。街を歩いていると、今でも老朽化してスラム化がすすむマンションを目にすることがあるくらいです。

それが、そこら中にもっと広がるわけです。

これは、お金の問題、そして所有者である住民の高齢化と直結した問題でもあります。

住民が高齢化して、乏しい年金収入しかないと、マンションを適正に修繕して保守管理していくのも、次第に難しくなります

従来集めていた修繕積立金では、マンションの老朽化がすすむほど、修繕費用が不足しがちになるからです。

人手不足や資材高騰による工事費の増大という問題もあります。

管理費や修繕積立金を値上げしようにも、容易には上げられません。所有者も無職で高齢だとお金も持ち合わせていないからです。

また、所有住民が高齢化して、管理組合が機能しなくなるという問題も発生してきます。

すなわち、こうしたマンションはやがて放置状態となり、劣化がさらにすすむ──ということが予想され、そこら中で生じてくる大問題でもあるわけです。日本では、10人に1人強がマンションに居住するといわれます。

国土交通省のデータでは、2021年末時点で日本には685万戸のマンションがあります。

これに日本の世帯当たりの平均人員2.21人をかけると、約1,516万人がマンション居住者ということになります。

東京都の人口より若干多い数に相当する人たちが、鉄筋コンクリート(RC)の集合住宅に住んでいる計算です。

ちなみに、「マンション」という呼称は日本独特のものです。

マンションの英語本来の意味は、「大邸宅」になりますから、欧米人に「マンションに住んでいます」などと告げると、大きな誤解や勘違いを生みかねないのです。英語では集合住宅は、「コンドミニアム」、あるいは 「アパートメント・ハウス」といいます。

1968年当時(昭和43年)には、まだ全国に5万戸しかなかったマンションが、70年代以降急速に増加して、現在685万戸となり、これは現在進行形でまだまだ増え続けています。国土交通省のデータでは、このうち築40年を過ぎたマンションが、2022年末の全国に125.7万戸あります(18.3)。これが、9年後の2032年末には260.8万戸となり、さらに19年後の2042年末には445万戸になると推計されています。

ちなみに、マンションには「旧耐震」の基準で建てられたものと、「新耐震」 の基準で建てられたものに二分されます。

 

「旧耐震マンション」と「新耐震マンション」の違いは?

建築基準法が改正されて、建築確認申請が1981年(昭和56年)6月までに受理されたものが「旧耐震」物件であり、これ以降に申請され「建築確認」を受けた物件が「新耐震」物件となります。なお、マンション建設には概ね2年程度かかるので、1983年後半以降に竣工したマンションは、概ね「新耐震」の基準物件が多いといえます。ただし、「旧耐震」基準で建築確認申請後に工事を一時的に中断したような物件は当然ですが、この限りではありません。1984年に竣工したマンションでも「旧耐震」というケースがあるわけです。

つまり、202311月の現時点でいう、概ね築40年の物件は、ほぼほぼ「旧耐震」の物件といえるわけです。

なお、「旧耐震」と「新耐震」の違いはどこにあるかといえば、「旧耐震」が震度5程度の中規模地震に耐えられ、「新耐震」震度6強~7の大規模地震に耐えられる強度をもつとされています。

つまり、被害は受けるものの倒壊や崩壊はしない、つまり、人命に関わる損傷は生じないことをその目安としています。

阪神・淡路大震災(1995117日午前546分)と東日本大震災(2011年午後246分)での最大震度は概ね震度6強でした(兵庫県東南部と淡路島および宮城県栗原市は震度7)。

阪神・淡路大震災においては、大破した「新耐震」物件は10件(0.3%)で、「旧耐震」は73件(3.4%)でした。

そして、被害がなかった「新耐震」物件は1,636件(53%)、「旧耐震」は1,093件(50.1%)でした。

東日本大震災においては、大破した「新耐震」物件は、0件(0%)、「旧耐震」物件は1件(0.4%)でした。

そして、被害がなかった「新耐震」物件は、630件(51.1%)、「旧耐震」物件は108件(47.7%)でした。

いずれの大地震も、最大震度は6強だったものの、阪神淡路大震災の方が、東日本大震災に比べ被害が大きかったのは、阪神淡路大震災が直下型の地震だったからです。つまり、建物の被害は震源地との距離などによって大きな差が出るわけです。

2つの大地震において、「新耐震」も「旧耐震」も約半数の建物が「被害なし」で、8割以上の建物が「軽微」以下の被害で済んでいます。

「旧耐震」であっても、鉄筋コンクリートの分譲マンションは地震に強いことがわかります。

「新耐震」のほうが「中破」以上の被害は相対的に少なく、「新耐震」のほうが相対的に耐震性は高いのです。

しかし、「新耐震」でも「中破」以上の被害もそれなりにあるため、「新耐震」だから「被害はない」とは必ずしもいえないわけです。

 

コンクリート建造物は、40年経過あたりから「劣化」が著しく露呈し始める!

ところで、鉄筋コンクリートの法定耐用年数は、1997年以前は60年でしたが、98年以降は47年になっています。

鉄筋コンクリートの寿命は、理論上、好条件下の環境にあり、適正な保守管理がなされていれば100年前後もち、海に近いなど悪条件の場所では65年程度といわれます。

劣化してヒビ割れしたコンクリートには、雨が浸み込み、内部の鉄筋をさびつかせ、膨張させます。これによってコンクリートが押し出され、剥離してきます。そのため、古いコンクリート建造物は、コンクリ─トの外壁が崩れ落ちてきて、近隣を歩く人にも非常に危険な状況を及ぼす──といわれます。

コンクリートの劣化を云々する際に、築40年という年数がクローズアップされるのは、新築から40年もの間、風雨にさらされると、危険なコンクリート建造物になりかねないため、保守管理と修繕が重要な課題となるからです。放置すればするほど、マンションの劣化は進行し、朽廃(きゅうはい)が早まるわけです。

一般的なマンションでは、所有住人による管理組合が形成されており、築10年~15年あたりを経過すると1回目の大規模修繕が行われます。

以降10年もしくは15年で、2回目、3回目の大規模修繕となっていくわけですが、修繕費用は時間が経つほど大きくなっていきます。

経年劣化が激しければ、当然ですが修繕の予定で積み立てていた従前の「修繕積立金」では、賄いきれなくなります。

となると、不足額を所有者から集めなければなりませんが、これがなかなか容易でないのは、想像に難くないでしょう。

そもそも、鉄筋コンクリート構造物は、その維持管理に相当なお金がかかります

しかし、新築で販売する際、販売会社は物件を早く売りきろうとしているため、住みやすさを強調するべく「管理費」や「修繕積立金」を低く設定している事例が多いのです。ゆえに、年月を経るほど、「管理費」や「修繕積立金」が不足する事態にも直面するのです。

ちなみに、2018年時点調査でのマンションの修繕積立金の平均月額は12,268円ですが、実際には35万円でも足りない──というマンションも少なくないといわれます。 

集合住宅の所有者による合意形成の難しさ!

マンションを対象とした「区分所有法」では、大規模修繕には「普通決議」と「特別決議」があります。

一般的な 大規模修繕 は管理組合の総会で、過半数の賛同が得られれば行える「普通決議」になります(法改正前は4分の3の決議を必要とした)。ただし、共用部の大きな変更を伴う修繕の場合は、「特別決議」を経なければならず、この場合は4分の3の総会決議が必要になります。

しかし、大規模修繕にあたって、これまで積み立ててきた修繕積立金では賄いきれず、新たな負担金が生ずる場合は、たとえ総会の過半数の決議で行えるとあっても、スムーズに賛同が得られないケースがしばしば発生しているのが実情です。

また、全戸数が住居利用なら、資産価値保全としての住民理解も得られやすいのですが、1階や2階に店舗やクリニック などが入っている場合、大規模修繕などの合意形成は営業上の利害が絡まってくるぶん、難しくなります。

新たな負担金を伴う大規模修繕が、予定通り行えなくなると、当然ですが大規模修繕する箇所が限られます。

従来の修繕積立金で出来る範囲での修繕をするだけですから、取り残される劣化部分が大きく残ります。

こうした事態が続くと、マンション全体の劣化や老朽化が急速にすすむわけです。

分譲マンションにおける合意形成の難しさがここにあるのです。

そのうえ、老朽化したマンションを取り壊して、新たなマンションに建て替えようとする場合は、現行法では5分の4の総会決議が必要となり、さらには建て替え費用の一戸当たりの平均負担金が2,000万円ともいいますから、解体や建て替えはますます難しいことになります。実際、日本で解体&建て替えに成功した事例は、現在たったの300棟弱程度しかないのです。

管理組合内で合意形成がすすまず、10年や20年という長期間にわたってもめているマンションもあります。

政府も大規模修繕や建て替えにおける決議条件を緩和するべく、区分所有法の改正案が検討されていますが、まだ実現には至っていないのです。

また、たとえ5分の4の総会決議での合意形成ができそうな、都心部の利便性の高いマンションであっても、旧法や旧規定で建てられたマンションの場合は「既存不適格物件」として、建て替えが不可能な物件もあります(現在の法律や規定に適合させたマンションしか建てられないため)。この場合は、マンションを解体して、敷地を更地に戻して、土地を売るという選択肢しかありません。

売ったお金を分配することになりますが、都心部の利便性のある土地であれば高値で売れるものの、高層で大きなマンションであるほど、解体費も数億円単位でかかるため、土地販売の収益を期待しても、解体費用と差し引きすると、さほどの果実は得られなくなります。建蔽率や容積率に余裕のある場所に建つマンションならば、より大きなマンションに建て替えて、一部の部屋を新規に売り出すことで所有者の負担金を減らすことも出来ますが、そういう物件は都市部には少ないのも現実なのです。

 

マンション大崩壊時代の始まり……!

マンションの問題は、建物の老朽化だけではありません。 

次のように日常のメンテナンスそのものに問題が生じているマンションも増えているからです。

·        給水管・排水管などの劣化で設備が機能しなくなった物件

·        役員のなり手がおらず管理組合が機能していない物件

·        管理費や修繕積立金の滞納者が増え、資金不足の物件

·        管理会社のボッタクリ保守管理で、所有者大損の物件

·        管理会社や管理組合理事長が修繕積立金を横領した物件

·        管理会社が保守管理から撤退・放置されるようになった物件

·        居住者が認知症で自分の部屋がわからず毎日迷走の物件

·        ひきこもり住人がゴミを貯め込み、異臭を放っている物件

·        高齢住人が多く、孤独死が続発し、事故物件だらけの物件

·        居住者の貧困化がすすみスラム状態になっている物件

 このような問題が山積しているのです。

このままでは、都市部に多く建つマンション群は、死屍累々の山といった状況を呈していきかねないでしょう。

幽霊マンション、スラム化マンションのオンパレードとなりかねないのです。

マンションの居住者は、管理組合の運営にほとんどの人が無関心です。

しかし、こういう状態が続くと、やがて、あちこちに問題が発生するでしょう。

あなたがローンで購入した「終の棲家」のつもりのマンションが崩壊の危機に瀕する可能性があるわけです。

こうした荒廃した状況になると、「資産価値」がないどころか、固定資産税などの負担だけがのしかかる「負動産」にもなりかねないのです。

バブル期に発売されたリゾートマンションの現状がすでにそうなっています。1万円とか5万円とか、新築の時に2,000万円、3,000万円で購入したリゾートマンションが、今ではこんな信じられないほどの激安価格で売りに出されていますが、買う人もまたほとんどいないのが現状です。 

ご自宅のマンションの行く末を考えて、人生設計をしておかないと、大いに後悔する老後になるかもしれないわけです。




 

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