2023.10.27
by 理央 周
芸能人なども通っているRIZAP。そのグループが運営している低価格ジムが話題となっています。
MBAホルダーの理央さんは、その売れる仕組みに着目し、潜在的ニーズに気づくコツについて語っています。
なぜ、顧客価値が大事なのか?~chocoZAP(ちょこざっぷ)に学ぶ、成功する製品・サービス開発
RIZAPグループが運営する低価格ジム、「chocoZAP(ちょこざっぷ)」が話題になっています。
10月16日の日本経済新聞に、興味深い記事が載っていました。
(以下、記事より引用)
ある店舗にスターバックスの飲み物を片手に男性がふらりと入ってきた。だがランニングマシンを少しだけ使い、10分足らずで帰ってしまった。
SNSではこうした行動に「最近ちょこざっぷに通い始めたんだけど、他の利用客がバイクマシンを2分だけこいでどっかに行ったり、合間にスマホで漫画を読み始めたり、みんな意志が弱そうでとても心強い」などと支持が集まる。
一方、ガチ(一生懸命)にジムでトレーニングをする人からは「意味の無い運動量だ」と批判交じりの投稿も。そして、その投稿への反論がまた相次ぐ。セルフ型のちょこざっぷは1日5分の運動を掲げ、ジムでの着替えや靴の履き替えはいらない。月額2980円(税抜き)とコスパの高さが支持され、わずか1年3カ月で会員数が83万人と日本一になった。隙間時間で楽しめるタイパ(タイムパフォーマンス)の良さも要因だが、それ以上にガチの運動が苦手な「ゆるい系」のユーザーをつかんだことが大きい。
(引用以上)
とあります。
私もコロナ前まで、スポーツジムに通っていました。
そこもそうだったのですが、通常スポーツジムというと、インストラクターがいて、エクササイズの指導をしてくれ、マシンも充実していています。
またジムによっては、ヨガができるスタジオあったり、サウナ付きのプールがあったりと、マシンや施設が充実していることが、大きな差別化ポイントになります。
ところが、このチョコザップのサイトを見ると、大規模なジムの設備やプールは無さそうです。
その代わり、スマホで最短3分で開始できる、とか、毎日5分でエクササイズ、といった、利便性を全面に押し出しています。
女性だけの30分フィットネスを売り物にした、カーブスと、一見似ています。
そもそも、チョコザップはセルフ型ジムなので、通常のジムに比べて、マシンも少なく、インストラクターもいないので、「エクササイズをしっかりやろう!」と気おう必要もありません。プログラムも決められていないため、自分の好きなタイミングで、好きな時間だけ、マシンやセルフエステができます。
この気軽さに加えて、値段の安さとで、顧客が潜在的に持つ、“通わなければ”という義務感なく続けられるのが特徴です。
このように、既存の業界にいながら、自社のサービスを見直し、自社の強みに特化して、不要なサービスや製品の機能を、削ぎ落とすビジネスモデルを、「アンバンドリング」と言います。LCCやQBハウスがこれに当たります。
チョコザップは、この“引き算”の戦略で、不要なサービスを取り除き、価格も下げることで、入会の壁を取り払っているのです。そして何よりも、エクササイズや原料など、続けることが難しく、誰もが陥りがちな“三日坊主の壁”を、破りやすいサービスの組み合わせですよね。
元々RIZAPグループが得意なサービスです。
では、どうすればチョコザップのように、痒い所に手が届くように、顧客がなんとなく感じている潜在的なニーズに、気がつくのでしょうか?
まず、自社の事業の定義を、「うちの会社はジムを運営する会社だ」としていると、こうした発想は出てきません。
「もっとマシンを増やそう」
「人員を増やしてサービスを拡充しよう」
「ポイントカードを初めて囲い込みだ」
となってしまいがちです。
チョコザップは、自社の事業を次のように定義しています。
chocoZAP(チョコザップ)は,誰もが運動を継続しやすく、効果を実感できる、「簡単」「便利」で「楽しい」、コンビニジムです。(以上、ホームページから引用)
コンビニという言葉が表すように、健康や肉体の強化、という価値だけでなく、便利さとか、気軽に使えることを、顧客価値として提供しています。
顧客価値は、顧客が得る(=ゲイン)ことができる、利益(=ベネフィット)と、顧客が失う(=ペイン)、犠牲(=サクリファイス)の、割り算です。
ゲインが多ければ、顧客は満足しますし、ペインが少なくても価値を感じます。
逆にペインが多ければ、顧客は価値を感じず、選ばれないのです。
チョコザップの場合、ペインに感じている、
「しっかりと鍛えるのは面倒だ」
「もっと気軽に通えるといいのに」
といった潜在ニーズを捉え、いち早く事業のコンセプトを固め、コンビニジムとして展開しているのです。
顧客が潜在的に感じているニーズは、顧客に聞いても出てきません。
潜在ニーズを見つけることが、市場機会の発見につながるのです。
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