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基金乱立、だぶつく16兆円 


  2023.10.12. 

朝日新聞デジタル

国が根拠の乏しいなかで積み立てた基金がだぶつき、使い残しが16兆円にまで膨らんだ。

4兆円のペースで増え続けている

背景には、コロナ対応などを理由に、時の政権が、毎年「規模ありき」の経済対策を打ち、使い切れないほど規模が大きくなったことがある。似たような事業にあてる基金も乱立している。(大日向寛文、神山純一)


「総額の約束果たせ」迫る自民 ~ 5千億円計上 支出は5.6億円

 AI(人工知能)や量子技術など、世界的な覇権争いとなっている先端技術の研究開発を支援するため、「経済安全保障重要技術育成基金」は、岸田政権下でつくられた。市場原理に委ねるのではなく、国の補助金で強力に民間を後押ししようとするものだ。

 この基金は2021年度と22年度の補正予算で計5千億円が計上された。ところが、22年度までに支出されたのはわずか56600万円。

大半は国立研究開発法人に支払われる管理費で、研究そのものに使われたのはゼロだ。

肝心の使い道を後回しにして、総額ありきで事業を決めた政治判断の「ゆがみ」の象徴ともいえる。

 「もともと5千億円なんていう規模になるとは思っていなかった」

 基金の担当者は打ち明ける。複数の関係者によると、21年度補正の協議では当初、基金は1千億円とする方向で調整が進んでいた

自民党の重鎮・甘利明前幹事長の右腕として経済安保を推進していた小林鷹之氏が初代の経済安保担当相に就くと状況は一変する。

甘利氏らの意向を受けてまとまった党の提言通りの5千億円に、一気に跳ね上がったのだ。

 21年度補正には、まず半分の2500億円が盛り込まれた。

補正予算は、想定外の緊急的な経費に限って認められているものだが、21年度どころか22年度になっても、研究の契約を1件も結べなかった。それにもかかわらず、内閣府は22年度補正で2500億円の追加を求めた。

「『総額を5千億円にする約束を早く果たせ』と、自民党から圧力があったため」(幹部)という。

予算を取り仕切る財務省が難色を示すなか、この時は、自民党政務調査会の幹部の一声で満額回答が固まった。

「何を勝手に財務省が査定しているんだ。各省庁が要求した予算を全部元通りに戻せ」

基金の使い残しが多い理由について、事業を監督する経済産業省や文部科学省の担当者は、「新設した基金のため、運営などの仕組み作りに時間がかかった」と説明する。


 半導体基金に3.4兆円要求  経産省、ラピダスやTSMCの補助金で

2023.10.12. 

朝日新聞デジタル

岸田政権が月内にとりまとめる経済対策をめぐり、経済産業省が半導体支援に計3・4兆円の基金予算を要求していることが、わかった。

文部科学省も1兆円の宇宙開発基金の新設などを求めており、各省庁による要求額は合わせて5兆円を超える。

コロナ禍で始まった基金予算の膨張が止まらない。複数の政府関係者が明らかにした。

経済対策の裏付けとなる今年度補正予算案に反映させたい考えだ。

ただ、中長期に必要な事業は本来、補正予算でなく、当初予算に計上するものだ。

物価高が生活を直撃するなかで、大企業への巨額支援の妥当性が問われる。

折衝で経産省が財務省に求めているのが、半導体の生産・開発支援などのために、すでに設けられている三つの基金の増設だ。

「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発基金」と「特定半導体基金」、「安定供給確保支援基金」になる。

具体的には、次世代半導体の国産化を目指す国策会社「ラピダス」に6千億円弱、半導体を受託生産する世界最大手「台湾積体電路製造」(TSMC)の日本第2工場に9千億円、ソニーのイメージセンサーなどの従来型半導体にも7千億円強の補助金が、それぞれ必要だという。

要求が実現すれば、今年度補正の半導体関連予算は34兆円となり、昨年度補正(13兆円)の26となる。


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