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ウクライナ戦争に終止符か?

ロシア外相発言から見えた「停戦のヒント」

2023.10.02 

by 島田久仁彦

  欧米諸国からの強力な支援を受け反転攻勢を続けるウクライナと、攻撃の手を緩めることのないロシア。先日開かれた国連安保理の会合でも両国は非難の応酬を繰り広げましたが、戦争はこのまま泥沼化の一途を辿るしかないのでしょうか。元国連紛争調停官の島田さんが、「停戦を実現する可能性を諦めていない」として、国連でのラブロフ露外相の言葉を引きつつその理由を解説。さらにこれから23週間がその「ヤマ」であるとの見方を記しています。



ウクライナ戦争停戦のラストチャンスか。露外相の意外な国連での発言

2022224日に始まったロシアによるウクライナ侵攻直後、この戦いは数日のうちにロシアの圧勝で終わり、ロシアの条件下での停戦合意ができるという見込みが強く存在しました。

しかし、実際には今日に至るまで、およそ580日強にわたって両国間での戦闘は続き、ロシアによる一方的な支配地域を巡る攻防は一進一退の状況で、ロシア・ウクライナの当事者たちも、ウクライナの背後にいる欧米諸国とその仲間たちも、この戦争の長期化を見込んだ対応を取り始めています。

欧米諸国とその仲間たちから膨大な支援を受け、ロシアに対する反転攻勢を強め、【2014年の国境線まで領土を回復する】ことを目標に掲げているウクライナのゼレンスキー大統領は、支援を受け、その支援がウクライナの生死を左右する命綱であるがゆえに、ロシアに対して振り上げ、国際社会を味方につけるために掲げた拳を下げるチャンスを逸しています。 

NATO加盟を希望し、今夏開催されたNATO首脳会談でNATO加盟に向けた動きが始まるものとの期待は、NATO諸国の首脳たちが抱く「ロシアとの直接的な戦争に巻き込まれたくはない」という堅い意志に阻まれ、しばらくは加盟申請に関する議論さえ始められない始末です。

NATOからは「戦闘中の国家の加盟申請を受けることはできないため、状況が落ち着くまでは議論は開始しない」という回答が寄せられましたが、それは実質的にウクライナ政府にロシアとの停戦協議を持つことを要求すると理解され、ゼレンスキー大統領が掲げる「全土奪還」という究極目標の達成に向けた動きとは相反する内容となるため、ウクライナは大きなジレンマに陥っていると思われます。

「現時点ではロシアと停戦協議のテーブルに就くことは不可能」という立場を表明し、欧米諸国とその仲間たちから供与された最新鋭の兵器(例:英国からのストームシャドーミサイル)を投入して、ロシア軍に占領されているウクライナ国内の都市にあるロシア軍施設や、ロシア国内の空軍基地などへの攻撃を激化させる行動に打って出ています。

その狙いは「できるだけ早期に、ウクライナにとってできるだけ有利な条件で停戦に持ち込むための政治的な土台を確保する」ことと考えられます。

士気を保つためと、欧米諸国とその仲間たちからの継続的な支援の確保のために、表立っては非常に高い軍事的な目標を掲げざるを得ない状況になっているものの、実際にはかなり状況は苦しく、欧米諸国とその仲間たちからの支援の途絶は、ウクライナの存続の可否(生死)を決定づけることに繋がるため、ロシアに対する反転攻勢は継続しつつも、現時点では「完全なるvictoryの追求」や「2014年、または1991年時点の国境ラインまでの回復」といった長期的な目標の追求よりも、まずは一旦、停戦する環境を整えることに政策的・戦略的な優先順位が移っているように見えます。

その背後には、来秋に大統領選挙と議会選挙を控えるバイデン政権とアメリカ連邦議会からの圧力が存在し、「現実的な対応を早急に望む」という、先週のワシントンDC訪問時にバイデン大統領や議会関係者からゼレンスキー大統領に伝えられた意向とも重なるものと考えられます。

ウクライナの「クリミア半島奪還」はあり得るか

では「ウクライナにとって有利な政治的な環境」とはどのような状況を指すのでしょうか?

多数の関係者から寄せられる分析を見てみると、それは「クリミア半島の奪還に向けた環境づくり」という答えにたどり着きますが、そのために「ウクライナ南部地域(ロシア本土からクリミアを繋ぐ回廊)の寸断を行い、クリミア半島のロシア軍と親ロシア派勢力への補給路を断つことが出来るか否か」が大きなカギになります。

英国の情報機関の分析では、ここ2週間から3週間の間に、ウクライナ軍がウクライナ南部の回廊を遮断することが出来るか否かにすべてがかかっているとのことです。

もしウクライナ軍による反転攻勢作戦を通じて、ロシアにとっての回廊を寸断し、クリミア半島をロシア本土と切り離すことが出来れば、近未来的にクリミア半島をロシアから奪還する土台が整うということにあります。

そうなれば予想外に早期の停戦を実現する可能性が高まりますが、その際に必ずと言っていいですが、ウクライナサイドがロシアに突き付ける“停戦のための条件”は【クリミア半島のウクライナへの返還とロシア軍の完全撤退】という内容になるはずです。

ロシアが“その”時点でウクライナ側の要求を検討するかどうかは、ちょっと次元の違うお話になりますが、その素地、つまりそのような要求をロシアに突き付ける条件がそろった時点で、ウクライナとしては欧米諸国とその仲間たちに対して【継続支援こそが、ロシアの野望を打ち負かす最低かつ必要条件である】という要求ができる最低条件となります。

仮に今後の反転攻勢がうまく行き、クリミア半島の帰属・返還を議題に挙げ、ロシアを停戦協議のテーブルに引きずり出すことが出来たとして、“クリミア半島の奪還”の実現可能性はどれほど考えられるでしょうか?

長期的なタイムスパンで見た場合、もしかしたら可能性は出てくるかもしれませんが、欧米諸国とその仲間たちが望む“今年中の解決・停戦協議の開始”という短期的なタイムスパンで見た場合、実現可能性、つまりロシアサイドがこれを話し合うことに合意する可能性は極めて低いと考えます。

その理由はプーチン大統領の政治的な理由にあります。

プーチン大統領への非難が強まっていた2014年に、電光石火の作戦でクリミア半島を奪い、ロシアによる実効支配を実現したことは、自身の支持率の急回復と政権基盤の盤石化に繋がった貴重なレガシー、そして権力の象徴として捉えられているため、これを失うことは、ほぼ疑いなくプーチン大統領の政治的神通力の著しい低下を意味することになりますので、来年3月に大統領選挙を控えるプーチン大統領がクリミアを手放すことに合意することは、まず考えられません

クリミアに関わる要求がウクライナから寄せられた場合、起きうるシナリオはロシアによる戦闘レベルアップであり、クリミア死守のためには戦闘・戦争のエスカレーションも辞さないという姿勢から、ロシア軍による大規模同時攻撃がウクライナに対して行われることにつながると思われます。

核兵器の使用をプーチン大統領は思いとどまる傾向にありますが、ロシア政府内で勢力を拡大し、発言力を増す強硬派に押されて、これまでの【使用を厭わない】という威嚇から、使用に向けた最終段階への移行という極限の緊張状態に向かうかもしれません。

独立宣言下で合意したウクライナ領土を露が認める可能性も

ただよりあり得るのは、ウクライナ南部とクリミア半島周辺にウクライナを引き付けておき、キーウをはじめとするウクライナ中部とポーランドなどの中東欧諸国との国境線に近い都市に対する一斉ミサイル攻撃の連日の実施で、圧倒的な実力差をウクライナに思い知らせ、ウクライナ政府が欧米諸国とその仲間たちの協力を受けて実施する【ウクライナは徐々に前進している】という情報戦略による効果も一気に叩き潰すという作戦に出るのではないかと考えます。

その表れに、先週、国連総会および特別安全保障理事会会合にロシア代表として参加したラブロフ外相は「交渉による解決は今のところは考えられず、ウクライナが戦争で雌雄を決するというのであれば、ロシアは受けて立つ。戦場でぜひ解決しよう」と発言し、ロシアはこの戦いにおいて一歩も退かず、目的を完遂するという決意を表明しています。

これだけ見ると、もう平和的な解決の糸口など存在せず、ロシアもウクライナもとことんまで戦い、著しく消耗し、何らかの形でこの戦争に決着がついた際には、どちらも復興不可能なレベルまで破壊されているのではないかという状況を想像させられますが、本当にもう立つ瀬はないのでしょうか?

希望的観測を含め、私はまだ停戦を実現する可能性を諦めていません。

それは私が調停グループにいて、停戦協議が本格化した際、何らかの役割を担うかもしれないからということからではなく、先週、UNの場で「戦争継続やむなし」と受け取れる発言をしたラブロフ外相の“別の発言”の中にロシア側からの停戦の呼びかけと条件を見た気がしたからです。

2022224日にロシアがウクライナに侵攻して以降、プーチン大統領はもちろん、他のロシア政府幹部が口にする正当化の理由の中で【NATOが東進を続け、ロシアの隣に位置するウクライナをNATOに加盟させるという事態は絶対に許容できない】という内容を何度も繰り返しています。

その背後には常にプーチン大統領が抱くNATOと欧米への根強い不信感があります。

プーチン大統領の過去の発言によると、ロシアが旧ソ連の地位と遺産を相続し、ワルシャワ条約機構を解体させることに合意した際、欧米諸国との間で「統一ドイツよりも東にNATOを拡大しない」という約束が結ばれたそうですが、その約束はその後反故にされ、NATOは限りなく東方展開し、ロシアが裏庭と位置付けてきたバルト三国を飲み込んだことで、ロシアは大きな安全保障上の脅威を抱くことになったため、これ以上の東方拡大、特にウクライナに食指を伸ばすことは、ロシアへの宣戦布告に等しいという主張を固めたようです。

ラブロフ外相の発言の中で、…

1991年にウクライナが旧ソ連邦を離脱する際に合意し、採択された独立宣言に基づいて、ウクライナの主権を承認した。その際、独立宣言(ウクライナ国家主権宣言)の中には、ウクライナは今後、非同盟の国であり、いかなる軍事同盟にも参加しないということが明言されていることが強調され、ラブロフ外相は「(プーチン大統領も同じ意見だが)そのような条件が遵守されるという条件下のみ、ロシアはウクライナの領土の保全を支持する」と述べています。

この部分を見ると「ウクライナがNATOへの加盟を、当初の合意の通りに断念し、非同盟・中立の国としてのステータスを貫くのであれば、1991年の独立宣言下で合意したウクライナ領土を、ロシアが認める“可能性がある”」ように解釈できるように感じます。

もしこの解釈が適切だとした場合、ゼレンスキー大統領が停戦、究極的に戦争終結のためにNATO加盟を断念するという条件を呑みさえすれば、停戦の可能性がでてくると考えられますが、実際にはそれほど簡単ではないでしょう。

クリミア問題は棚上げか。考えうる停戦実現のシナリオ

まず【ゼレンスキー大統領とウクライナ政府は、ロシアが再度侵攻してこないという保証を得ることができ、それを信用できるかどうか】という大きな疑問です。

プーチン大統領があからさまにしてきた旧ソ連邦各国のロシアへの再統合という夢と、“ウクライナとベラルーシ、ロシアは不可分の存在”という基本姿勢は、プーチン大統領が存命で権力の座にいる間は不変か、強まる一方であるため、いずれはウクライナへの軍事・非軍事的攻撃を強めるだろうと予想できます。ゆえに、ゼレンスキー大統領とウクライナ政府としては、身の補償のために、NATOという後ろ盾または“保険”を確保したいと考えるのではないかと予想します。

次に仮にゼレンスキー大統領とウクライナ政府がNATO加盟を諦めることに同意し、公言しても、先ほどのラブロフ外相の発言内容に照らし合わせると、根本的なところでロシアとウクライナ双方が折り合うことが出来ない要素が解決されないことになります。

それはクリミア半島の帰属問題です。

1991年当時の合意内容に基づくならば、ソ連崩壊後は、“クリミア半島はウクライナの領土”とされたため、ウクライナに返還されることとなりますが、2014年にロシアがクリミア半島に侵攻し、一方的に併合したことは、プーチン大統領の政治的なレガシーに位置付けられているため、クリミアを放棄することは考えづらいと考えられるため、一筋縄ではいかないと思われます。

クリミア半島も回復することが至上命題と宣言したゼレンスキー大統領とウクライナ政府に対し、クリミア半島の併合はロシア系住民の権利と安全を保障するための必要な措置であり、住民の大多数をロシア系住民が占めることに鑑みて、クリミアはロシアの一部であることが明白と言いたいプーチン大統領とロシア政府の主張とこだわりは、決して相容れられないものであることは明白です。

しかし、停戦協議を再開し、かつ停戦を実現する可能性が残っているとすれば、「ロシアが一方的に併合した東南部4州―ドネツク、ヘルソン、ルハンスク、ザポリージャの“返還”」がロシア側からのカードとして示され、それをウクライナ側が当面の勝利として受け入れ、一旦、停戦をするというシナリオが成り立つ場合が考えられます

この場合、クリミアの帰属は未解決案件として残し、2国間での合意に向けたプロセスを国際的に立ち上げ“直し”、調停プロセスに乗せて議論・協議を行うことするという条件に合意したうえで、ウクライナは東南部4州の奪還を“勝利”としてアピールし、ロシアは“NATOの東進・東方拡大を阻止したこと”を国内向けの“勝利”としてアピールするという繕いはできるのではないかと考えられます。

「絶対に停戦協議を行える・話し合いを持つ条件が揃っておらず、とことん戦うしかない」と言われているロシア・ウクライナ戦争ですが、久々に、かなり憶測と希望的観測に基づいた内容であることは否めないものの、無益でかつ多大な犠牲を生み、世界全体に悪影響を与え続けるこの戦争に、一旦、停戦・休憩の機会を与え、沸騰した双方とその後ろ盾の国々の頭を冷やす時間を獲得できるwindowが生まれてきたような気がします。

さほど長くはない「window」が開いている時間

しかし、このwindowが少しだけ開いているのは、さほど長い時間ではないとも感じます。

今年11月には、ウクライナの最大の支援国アメリカが、大統領選まで1年を迎え、国内政治戦が本格化する時期に入ります。それまでに何らかの成果を得てアピールしたいバイデン大統領と民主党と、ウクライナへの支援の行き過ぎと継続に黄信号を灯らせることで、国内回帰を促すことで支持獲得を狙う共和党の政治戦がヒートアップするにつれ、ウクライナが忘れ去られ、明らかに対ロの立場が悪化するタイミングが訪れることが予想されるため、それまでに何らかのプロセスが始動している必要があります。

先述した英国情報機関の分析内容が示す通り、私はこれから2週間から3週間がヤマではないかと見ています。 

詳しくはお話しできないのですが、今週から10月末にかけて、私もかなり忙しく、ハラハラする時間を過ごすことになりそうです。


☞ ライバル強化策

接客販売業は、売上が大きな評価軸になります。

自分の売上が足りていなければ、どうしても評価は上がりにくくなるわけです。

そのせいか、販売員の中には自分のノウハウを必死になって守ろうとする人も増えてきます。

同じ店舗内や会社内であっても、自分自身のノウハウは周りに共有せず、自身の地位を守りたがるのです。

個人としてだけなら、それはそれでひとつのやり方だとは思います。

ただ、さらにレベルを上げたければ、むしろライバルとなる周りの人たちを強化するつもりで、ノウハウを共有する方が良いでしょう。僕は昔からこれを言っていますが、実際にやっているという人はあまり多くはありません。

しかし中にはそういうことをやっている人もいるのですが、そんな人たちは決まって社内で重要なポジションに抜擢されたり、全社的な評価が高い人ばかりです。

自社や自店舗のライバルを強くすることで、店全体・会社全体の売上に貢献したり、自分自身もこれまでにないノウハウをさらに開発したりするからですね。

はっきり言いますが、自分のノウハウを後生大事に抱えていても大して良いことはありはしません。

そんなノウハウなんてすぐに陳腐化しますし、時代に合わなくなればあっという間に使えなくなります。

いつまでも大事に抱えていると、それから離れることもできず、最後は古いノウハウしかない使えない人材になっていきます。

そういう人、皆さんもこれまでにたくさん見てきてはいないでしょうか?

「昔は良かった」「昔はもっとやっていた」なんて武勇伝や過去の栄光を語る人は、決まってこういう人たちです。

今の時代にはもう邪魔なだけの存在になっていることがほとんど。

周囲のライバルを強くする人は、どんどん先へ先へと進んでいき、今の時代、今のお客様に合った仕事をどんどん周りへと提供していきます。それによって個人の力だけではなく、周り全ての力を上げ、その上さらに自分の力を何段階もパワーアップさせているのです。

ぬるい環境でばかり仕事をするのではなく、周りのライバルを強くすることをもっとやっていきませんか? 

 

by 坂本りゅういち



 

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