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うつ病になりやすいのはどんな人?どんなとき?


2023.09.26 

日経Gooday編集部

「うつ病」に関する問題

【問題】うつ病に早く気づいて対処するためには、この病気に対する誤解や思い込みをなくし、

    正しく理解することが重要です。

  次のうち、うつ病について正しく説明している文章はどれでしょう。

1うつ病は心の弱い人、甘えがある人がなる病気だ

2うつ病の症状は心にだけ表れ、体に表れることはない

3結婚、昇進など喜ばしい出来事はきっかけになりにくい 

4精神科を受診したら、すぐに薬を出されて飲み続けなければいけなくなる

正解は、正しく説明している文章はない です。


「うつ病は心の弱い人がなる病気」ではない

 うつ病は誰もがなりうる病気で、日本のうつ病患者は約120万人と推定されています。

しかし、うつ病であっても受診していなかったり、受診してもうつ病と正しく診断されていなかったりする潜在的なうつ病患者を含めると、それよりはるかに多く存在するといわれています。

 杏林大学医学部精神神経科学教室准教授の坪井貴嗣氏も、「『うつ病は自分とは関係がない病気』『うつ病になるのは自分の甘えのせいだ』といった思い込みから、病院を受診しようとしない人も多いです。精神科を受診するとなるとさらにハードルが高く、実際、うつ病と診断される患者さんの半数以上は、初めは内科を受診するといわれています」と言います。

 日経Goodayの取材に協力してくれたうつ病経験者も、「『自分のような楽天的な性格の人間はうつ病にはならない』と思っていました」「急に涙があふれてくるなど明らかにうつ病の症状が出ていたのに、『きっと自分の甘えだ、もっと頑張らなくては』と言い聞かせて、無理やり出勤していました」と、うつ病を発症した当時を振り返ります。こうしたうつ病に関する誤解や思い込みは、この記事をお読みの皆さんにもあるかもしれません。例えば、よくあるのは下記に挙げたようなものです。

うつ病について、こんな誤解や思い込みをしていませんか?

·    うつ病は心の弱い人、甘えがある人がなる病気だ

·    うつ病になるかどうかは気の持ちようだ

·    やる気が出ない、よく眠れない、体がだるいなどの心身の不調が長引いているのは、疲れのせいだろう

·    自分はストレスに強いから、つらいことがあってもうつ病とは無縁だ

·    家族や職場にうつ病の疑いがあることが分かったら、心配や迷惑をかけるので絶対に知られたくない 

·    精神科を受診したら、すぐに薬を出されて飲み続けなければいけなくなる

 もしもこのような誤解や思い込みがあるのなら要注意。

いざ うつ病が疑われる状態になっても、相談や受診が遅れてしまいかねないからです。

その結果、仕事を長期間休まなければいけなくなったり、生活がままならなくなったりするまでに病状が悪化してしまう可能性もあります。

そうなれば「治療の経過や回復の見通しまで悪くしてしまうことがあります」と、坪井氏は指摘します。

 では、「うつ病」はどんなときに、どんな人がなりやすく、また、どのような兆候・症状が見られたら受診したほうがいいのでしょうか。

 

結婚や昇進などのうれしい出来事も発症のきっかけに

 うつ病の発症は、人生における大きな出来事(ライフイベント)がきっかけとなりやすいことが分かっています。

 注意したいのは、近親者の死別、離婚や失恋、病気といったネガティブな出来事だけでなく、一般的に喜ばしいと思われる出来事でもきっかけになるということ。 

 例えば、進学や就職、昇進、結婚、マイホームの購入といった出来事も、うつ病を発症するきっかけになりうると、坪井氏は指摘します。

 「人生においてそう何度も経験することがないような大きなライフイベントでは、良くも悪くも大きな変化が生じます。その変化によってもたらされるストレスが脳内の神経伝達物質に影響を及ぼし、心のエネルギーの低下を引き起こすと考えられます」(坪井氏)

 また、そうしたストレスが生じるライフイベントに加えて、その人が持つ性格の傾向も複合的な要因になりやすいという。  

 例えば、生真面目、完璧主義といった性格の人はうつ病になりやすいとよくいわれますが、それだけでなく、「周囲に過剰なまでに気を使う物事に過敏に反応しやすい、自分の感情をあまり表に出さない身体感覚に気づきにくいといった性格や傾向の人も、うつ病になりやすいといわれています」と坪井氏は指摘します。

うつ病の症状は心だけでなく、体にも表れる

  うつ病というと、興味や意欲の低下、憂うつな気分や物悲しい気持ちといった心の不調をイメージしやすいでしょうが、体の不調が出る場合もあります。体の不調が前面に出ると、うつ病であることに余計に気づきにくくなるので要注意です。

「ある研究(*1)による報告では、うつ病の患者さんの7割以上が、眠れない、食欲や体重が落ちた、疲れやすい、体がだるいといった体の不調を訴えています」(坪井氏)     1 Sugahara H, et al. Psychiatry Res. 2004 Oct 30;128(3):305-11.

 うつ病の兆候・症状として、まず心の不調が表れるか、体の不調が表れるか、あるいは両方の不調が表れるかは、人それぞれで予測はつきません。

しかし、他の病気などとは明らかに関係のない体の不調が長く続くときには、うつ病の可能性があることは覚えておきましょう。

 先に挙げた興味や意欲の低下、憂うつな気分といった「心の不調」や、眠れない、食欲の低下や体重の減少(あるいは食欲・体重の増加)、疲労や倦怠感といった「体の不調」が続き、いつもと同じように仕事をしたり日常生活を送ったりすることができないときは、早めに精神科や心療内科を受診しましょう。

精神科や心療内科は受診しづらいと感じるときには、かかりつけ医や会社の健康管理室の産業医、地域の保健師などに相談するのもいいでしょう。 「うつ病かもしれない」という精神状態のときは、医療機関に足を運ぶことさえもエネルギーを要するものです。

精神科は受診しにくいと感じるかもしれません。

しかし、今は困っていること、つらいことを率直に医師に伝えて話し合い、治療方針をともに考え決めていく「共同意思決定Shared Decision MakingSDM)」という考え方が広まってきています。 

「受診したらすぐに薬を出されて飲み続けなくてはいけなくなるのでは?」といった心配を持つ人もいるでしょうが、うつ病と診断されたからといって必ず薬を飲まなければいけないとは限りませんし、薬物療法が検討される場合でも、薬に対して不安や抵抗感があればその気持ちを医師や薬剤師に遠慮なく伝えて、自身が納得して受けられる治療を検討することもできます。


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