マイナンバー制度で“大金”を手にする大企業5社の実名
IT業界に公金バラ撒き
2023.09.08
by 伊東 森
記憶に留めることが困難なほど数多くのトラブルが発生するも、あくまでマイナカードの普及にこだわり続ける日本政府。なぜ彼らはここまで頑なな姿勢を崩さないのでしょうか。
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またも公金バラマキ。政府がこだわるマイナンバー制度という「官製IT公共事業」
マイナンバーカードをめぐるゴタゴタが収まらない。来年秋に予定されている現行の保険証の廃止をめぐり、厚生労働省が出したコスト削減試算について、医療関係者から思わぬ指摘が飛び出した。
厚労省は保険証廃止によるコスト削減について、
(1)マイナ保険証の利用登録率が現状より進む場合と、(2)利用登録率が現状のままの場合の二つのパターンに分けて試算。
利用登録率が65~70%に達するとした上記(1)の場合、コスト削減額が100億~108億円、利用登録率が現状の52%のままとした(2)では、同76億~82億円とはじき出した。
これらは、24日の社会補償審議会医療保険部で示されたもの。しかしながら、全国保険医団体連合会(保団連)は25日、厚労省の試算について、以下のように検証している。
2021年度概算医療費は44兆2,000億円となる。
資格確認書等を発行・交付した場合の厚労省試算に基づく削減額(約100億円)は、医療給付全体のわずか0.023%に過ぎない
要は、マイナ保険証導入によるコスト削減額は0.023%ほどと、極めて乏しいのが実情だ。
保団連の竹田智雄副会長(竹田クリニック院長)は、日刊ゲンダイの取材に対し、次のように答えた。
「保険証廃止によるコスト減は微々たるものです。さらに言えば、マイナ保険証を持たない人に交付される資格確認書について、保険者側が被るシステム管理や人手などのコスト増は考慮されていません。そもそも、国民皆保険制度において、誰もが安心して保険証1枚で保険診療を受けられる環境を維持することは発行コストも含めて必要経費です。
コストが減ればいいというものではないし、マイナ保険証への移行に伴う無保険者の続出やひも付けの誤りなどの懸念といったデメリットの方が大きい。国民皆保険制度が揺らぐ事態です。やはり、保険証廃止は撤回してほしい」(*1)
それでも、なぜ政府はマイナンバーカード普及に邁進するのか。
マイナカード普及を強行するよう念押ししたサントリー社長
政府の強行姿勢を示しているのが、経済同友会の代表幹事であるサントリーホールディングスの新浪剛史社長の発言だ。
新浪氏は6月28日におこなわれた経済同友会幹事としての記者会見の中で、
「マイナンバーカードについてはいろいろと不手際があったことはその通りだ」
としながらも、
「絶対に後戻りせず、しっかり進めてほしい」
「ミスが起きたからやめよう、後戻りしようとやっていたら、世界から1周も2周も遅れていると言われる日本のデジタル社会化は、もう遅れを取り戻すことができなくなる」
と発言。さらに、
「そして、納期。納期であります。この納期(2024年の秋)に間に合うように、ぜひとも仕上げていただきたい。私たち民間はこの納期って大変重要でございます。納期を必ず守ってやりあげる。これが日本の大変重要な文化でありますから、ぜひともこの保険証を廃止する。これを実現するように、この納期に向けてしっかりとやっていただきたい」
と“納期”という言葉で強く、マイナンバーカードを強行するよう念押しした。
新浪氏の発言には“それなり“の理由がある。財界は、もう20年以上も前から、国民の税と社会保障の個人情報を一元管理する共通番号制度の導入を要求してきた。
例えば、2004年には経団連は社会保障・福祉制度に共通する個人番号の導入を提唱する報告書をまとめている(*2)。
実際、第二次安部政権は2013年に民主党政権時代に廃案になったマイナンバー法案を再提出し成立させたが、同年1月23日に開催された「産業競争力会議」においてメンバーで
あった新浪氏が提出した資料の中には、「マイナンバー・システム」の導入について、
個人の所得のみならず資産も把握して、医療費・介護費の自己負担割合に差をつけ、結果的に医療費・介護費の削減につなげる。
との記載があった。
「官製IT公共事業」であると断言してよいマイナンバー制度
経団連や経済同友会など財界がマイナンバー制度導入を求める背景には、個人情報の“民間活用”がある。
実際、経団連による2010年11月の「豊かな国民生活の基盤としての番号制度の早期実現を求める」という提言書では、「番号制度の必要性」の理由として、「官民の情報共有による国民利便性の向上、新たな産業・サービスの創出」にあると記載。
また、経済同友会の2022年4月の提言でも、目指すべき将来像として、「蓄積された様々なデータが行政サービスの効率化だけでなく、個人や民間企業の自由な発想に基づくイノベーション創出に活用され、データを起点とした経済成長が加速していく社会」との記述がある。
さらに現状、マイナンバー法ではマイナンバーを含む情報を「特定個人情報」と定義し、規制を設けているが、しかし経団連や経済同友会は、この規制を緩和し、一般の個人情報と同様とすることを要求している。
このことを、共産党の機関紙「しんぶん赤旗」(2023年7月13日付)は、「大量の個人情報を加工・集積したデータをビジネスに利用」しようと画策していると指摘。
そもそも、マイナンバー制度は“ガラパゴス化”日本のIT産業に対し公金をばらまくための「官製IT公共事業」であると断言してよい。その金額は、実に2兆円にのぼる(*3)。
そして、その巨額の費用がわたっているのが、「5大ベンダー(=ITシステム開発会社)」と呼ばれる企業群だ。
その企業群は、富士通、日立製作所、NTTデータ、NEC、日本IBMの5社であり、これらは、日本の行政をシステム面から牛耳る存在である(*4)。
これらの企業に対し、マイナンバーのシステム構築、ほかの行政サービスとの紐付け、カード発行・交付、マイナポイントをはじめとする普及促進策などの諸政策に費やされた
予算2兆円が費やされてきた。
政府がマイナンバーカード普及を進める理由としては、「日本がデジタル後進国だから」という側面がある。
しかしマイナンバーカードのような国民ID(身分証明書)と健康保険証を一体化させている国は、G7(先進7カ国)では日本だけだ(*5)。
7月5日にあった衆院特別委員会の閉会中審査で、立憲民主党の長妻昭氏はマイナ保険証について、
「てっきり(G7の)他の国もみんなやってて、日本も遅れないようにやっていると思った。他の国はやっていないということでよろしいか」(*6)と政府を問いただす。
すると、加藤勝信・厚生労働相は、「G7では、異なる行政分野に共通する個人番号制度を有した上で、個人番号を確認できるICチップ付きの身分証明書となるカードを健康保険証として利用できる国は、わが国以外はない」(*7)
と答弁し、マイナ保険証の制度が“日本独自”のものであると認めた。
河野太郎デジタル相は、かつて自身の動画チャンネルでの配信で、シンガポールの行政のデジタル化の状況を紹介(*8)。
そのなかで、一つの共通番号をすべての分野で利用できる方式のシンガポールでは、個人のスマホが番号に紐付けられているとし、その利便性を強調。そして日本でも将来、マイナポータルやマイナカードによって、「シンガポール並みの行政のデジタル化ができるようになる」(*9)と言及した。
しかし、そもそも、シンガポールは、経済発展はすさまじいものの、「明るい北朝鮮」ともいわれ、独裁体制が敷かれており、言論の自由が存在しない。なるほど、日本もマイナンバーカード強行により、自民党による「明るい北朝鮮」を目指しているわけだ。
■引用・参考文献
(*1)「厚労省試算『保険証廃止で100億円浮く』は医療給付全体の0.023%…コスト削減効果ショボすぎ」日刊ゲンダイDIGITAL 2023年8月29日(*2)「サントリー新浪社長『保険証廃止の納期を守れ』発言に非難殺到、不買運動に発展! 財界のマイナ強行論の背景にある“企み”」LITERA 2023年8月5日
(*3)「総額2兆円!巨額のマイナンバー予算を懐に納める『巨大企業』の実名」週刊現代 2023年8月28日
(*4)週刊現代 2023年8月23日
(*5)中山岳・山田祐一郎「『マイナンバーカード+保険証』一体化はG7で日本だけ なぜ独自路線?各国の現状と比べてみた」東京新聞 2023年7月11日
(*6)中山岳・山田祐一郎 2023年7月11日
(*7)中山岳・山田祐一郎 2023年7月11日
(*8)中山岳・山田祐一郎 2023年7月11日
(*9)中山岳・山田祐一郎 2023年7月11日
「政府はウソついてる」とバッサリ…マイナ保険証“別人の顔でも認証される”バグに医療現場悲鳴、廃業の医師は1000人超に
荻原博子
2023/09/08
「マイナ保険証」に関して「政府はウソをついている」と私は思っています。
そのウソとは、「カードを落としても大丈夫」「顔認証があるからなりすましはできない」など安全性に関わるものも多く、近著『マイナ保険証の罠』(文春新書)にまとめています。なかでもいちばんのウソは「保険証を廃止しても医療現場に問題はない」という点でしょう。国はマイナ保険証のメリットを強調しますが、医療現場では実にさまざまな不具合が起きています。
受付がスピードアップするはずの顔認証も、髪形の変化や眼鏡の有無などで認証できないケースが多い。
逆に「全く別人のマイナ保険証なのに顔認証された」といった信じられないことも起きています。
また、健康診断などの医療情報がマイナポータルを通じて閲覧できるため、より良い医療が受けられるともいわれますが、これもかなり疑わしい。というのも、マイナポータルの医療情報は、病院が毎月どんな医療行為を行ったか、費用の明細を知らせる「レセプト」を元にしています。月ごとにまとめて送るものですから、リアルタイムには程遠い。その都度きちんと更新されたお薬手帳のほうがリアルタイムの情報に近いといえるでしょう。混乱はこればかりではありません。医療者にはマイナ保険証を導入するため、読取り機の設置やシステムの導入が義務付けられています。経済的な負担はもちろん、システムの不具合への対応に悲鳴を上げている医療機関が多いのです。全国保険医団体連合会の調査では、マイナ保険証の運用を始めた医療機関のうち、41%で不具合があったと答えています。
顔認証ができない、別人のデータが出てくる、なかには1割負担の高齢者に「3割負担」と表示されるなど、あってはならない間違いに医療機関は疲弊し、
「マイナ保険証だけでなく、必ず健康保険証も持参してください」と貼りだす病院もあるとか。
さらに、何十年も地域に根付き医療を行ってきた高齢の医師たちが、次々と廃業に追い込まれています。
全国保険医団体連合会によると、マイナ保険証の導入で廃業を決めた医師は全国で1,000人以上にのぼるといいます。彼らは、デジタル機器は苦手かもしれませんが、自分の患者の体質や既往症などのデータは頭の中にあって、地域からの信頼も厚いのです。医師の少ない地方もあります。主治医を失い途方に暮れる患者たちは、この先どうすればいいのでしょう。岸田首相は「誰一人取り残さないデジタル社会の実現」を掲げていますが、廃業に追い込まれた医師たち、その患者たちを「取り残した」とは言わないのでしょうか。
ウソにまみれたマイナ保険証が、誰もが安心して受診できる医療制度を崩壊に追い込むことのないよう、厳しい目で追及したいと思います。
最後までお読みいただき、有り難うございました。 ☚ LINK
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