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「人手不足」と「仕事不足」の先の「大失業時代」到来

2023.07.19 

by 中島聡

  例えばトラック・バスの運転手や建設現場の作業員など、日本では現業職の「人手不足」が大問題で、更に深刻化するのが確実です。一方で、急速に進化するAIが大学を出て働く人の仕事を確実に奪い「仕事不足」になると考えられています。やがて来るこの2つのミスマッチの問題を真剣に考えないと大きな社会不安が起こると警告するのは、Windows95を設計した日本人として知られる中島聡さん。中島さんは日本社会の問題点を具体的に8つ上げ、社会に歪みを生まないためにも、何らかの手を打つ必要があると訴えています。



人不足と人工知能

ChatGPTの進化を見ていると、さまざまな職が人工知能によって置き換えられたり不要になったりすることは確実だと思います。簡単な事務仕事はもちろんのこと、データ解析のような比較的複雑な仕事まで人工知能に任せられるようになってくると、その労働市場に対する影響は、計り知れない程大きなものになると予想できます。

それとは別に、土木建築、介護、飲食、清掃、農林水産、公共交通、ロジスティックス(倉庫、配達、輸送)などの「肉体労働」を伴う業界では、人手不足が目立っています。

日本と米国では若干事情が違いますが、移民や外国人(日本では技能実習生)に頼らなければならない状況は同じです。

国が豊かになると、高学歴な人が増え、賃金の安い肉体労働をしたがらなくなるのは、どこの先進国でも同じです。

日本の地方では、成績が優秀な学生は都会に出て、知識労働(ホワイトカラー)の職に就くのが当たり前になっています。

結果として、肉体労働の労働市場においては、需要が供給を上回る状況になっています。

日本では、高度成長期以降に第三次産業が急速に伸び、そこが知識労働者の受け皿となりました。

それを受けて、大学進学率も、1971年の19.4%から上昇を続け、今では60%近くになっています。

しかし、人工知能技術の急激な進歩により、知識労働市場に大きな変化が起ころうとしています。

人工知能の活用により、知識労働者一人あたりの生産性が大幅に急増し、結果として、知識労働の市場においては、需要が供給を下回る状況になるのです。

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つまり、

肉体労働市場: 需要>供給
知識労働市場: 需要<供給

という二つのミスマッチが起こることになります。

このミスマッチがどんな状況を社会に作り出すのか、そして、そんな状況に備えて、今、何をすべきなのかを真剣に考えるべき時代が来ているように思えます。

特に問題視すべきなのは、

l大学受験さえ突破すれば良いという日本特有の学校教育

l移民や外国人による安価な労働力がなければ成り立たない産業

l高齢化により担い手を失いつつある農林水産業

l都市部への人口集中

l正社員と非正規社員という二重構造

l労働市場に流動性をなくしている解雇規制

l「やり直し」がしにくい社会

lIT業界にまで浸透している多重下請け構造

などで、これらの問題に思い切ったメスを入れない限り、社会に大きな歪みを生み出すことになると思います。

さらに長い目で見れば、肉体労働市場のギャップを、ロボットや自動運転車が埋めるようになり、本格的な「大失業時代」が到来することは確実で、そこに向けた、社会保障システムと、社会の安定化政策は必須だと思います。

2年ほど前に全米で起こった暴動、そして、今、フランスで起こっている暴動は、きっかけは「警察官による差別」ですが、その根底には、社会から必要とされず、社会の底辺に追いやられた人々の不満と不安があります。

    そんな「負のエネルギー」が溜まった社会では、ちょっとしたきっかけが「起爆剤」となり、彼らを暴徒へと変えてしまうのです。




 

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