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日本が韓国に半導体のシェアを奪われたワケ

2023.05.20 

by 大村大次郎

 80年代には50%、20年前の00年代でも30%程度のシェアがあった日本の半導体が、いまでは7%にまで落ち込み、代わるように台頭したのが韓国のサムスン電子でした。この30年ほどの間に何が起きたのでしょうか。元国税調査官で作家の大村大次郎さんは、日本の半導体凋落がアメリカの圧力に屈した「日米半導体協定」から始まったと解説。加えて、先端技術の流出を許す日本企業の「脇の甘さ」を象徴する出来事があったと詳しく伝えています。



なぜ日本は半導体のシェアを韓国に奪われたのか?

日本企業はアジア諸国に安易に工場を移転し、それが技術流出を招き、日本経済停滞の一因になったということをご紹介しました。

今回からその点について少し踏み込んだお話をしたいと思います。

韓国との経済関係についてです。日本人は、韓国のことをまだ日本より遅れていると思っています。

しかし、かつて日本が世界シェアの多くを占めてた電化製品の分野で、韓国企業が凌駕するようになった経緯は、前回述べました。

韓国が、日本のシェアを奪ったのは家電ばかりではありません。半導体、造船など、日本の得意芸とされてきた分野を次々に侵食しているのです。 なぜ韓国が日本の得意分野を侵食しているかというと、最大の理由は、技術の流出です。

日本は、技術の流出という点についてあまりにも無防備であり、逆に韓国は技術を模倣するのが非常にうまいのです。

20197月に、日本政府が安全保障を理由として、韓国向けのフッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の輸出審査を厳格化することなどを発表したとき、韓国側は国中が大騒ぎとなりました。

この事態を見て、「あまりにも日本への対応がひどすぎたからだ」「まだまだ韓国は科学技術では日本には追い付けない」と溜飲を下げた人も多かったはずです。

しかし、だからといって、では日本は安心かというと決してそうではありません。韓国の「模倣技術」は、相当なものがあるからです。

韓国は科学分野でのノーベル賞を取ったことがありません。

そういう国が、世界の家電や半導体において、これほどのシェアを獲得するということは逆に驚異的なことです。

韓国の驚異的な「模倣技術」

嫌韓派の人たちは、韓国のことを「模倣国家」だと非難します。しかし、韓国はこの「模倣技術」によって、世界有数の工業輸出国になったわけです。模倣と言われようがどうしようが、日本から様々な分野でシェアを奪ってきたのは事実なのです。

だから、「加工材料の分野ではまだ日本には追い付けない」と安心することはできないのです。

韓国企業が日本企業の得意分野を奪う典型的な例を半導体分野に見ることができます。日本の半導体産業というのは、かつては日本の輸出の主力商品でした。1980年代には、半導体の巨人だったアメリカを凌ぎ、世界シェアの50%を超えたこともあったのです。

しかし今では韓国のサムスン電子が世界シェアのトップであり、韓国の輸出全体の20%を占めるほどになっています。

完全に韓国の主産業となっているのです。

この半導体産業にこそ、韓国の模倣技術の高さと日本の脇の甘さが、如実に表れています。

韓国の半導体業界は、日本の半導体技術を模倣し、日本のシェアを奪うことで発展してきました。

半導体の勢力図を見ると、20年前からアメリカが世界シェアのだいたい50%を占めており、それは今でも変わりません。

が、20年前には、30%程度のシェアを持っていた日本は、今ではわずか7にまで落ち込んでいます。

その一方、20年前はほとんどシェアを持っていなかった韓国が20%を超えるシェアを持つようになったのです。

日本と韓国は、半導体の種類や製造過程が似ています。そして日本とアメリカでは、半導体の種類や製造過程があまり似ていません。

つまり、韓国の半導体は、明白にアメリカではなく日本の持っていたシェアを奪うことによって発展しているのです。

半導体産業凋落のきっかけ

日本の半導体産業の凋落は、1986年に結ばれた「日米半導体協定」から始まりました。

1980年代、日本がアメリカから世界の半導体シェアを奪っていったことで、アメリカは日本に強力な圧力をかけるようになりました。

そして日本に対して「安全保障上の問題がある」と威嚇し、アメリカ市場へのこれ以上の参入を妨害しはじめのです。

日本はアメリカの圧力に屈し、半導体取引において自主規制をすることになりました。それが「日米半導体協定」だったのです。

この日米半導体協定では、「日本はなるべくアメリカ製の半導体を購入すること」など決められましたが、日本はこれを「努力目標」とするだけで、具体的な数値などは定めませんでした。

アメリカはこの日本の態度に業を煮やし、日米半導体協定締結の1年後に、3億ドルの報復関税を実施しました。

日本製のテレビやパソコンなどに100%の高関税を課したのです。

アメリカのこのやり方は、最近、中国のファーウェイ製品などを締め出したのと同様です。

日本は、アメリカの強硬姿勢に屈し、仕方なく半導体の輸出を控えるようになりました。その結果、日本の半導体シェアは見る間に落ちていったのです。

1990年代に入ると、日本の半導体産業のシェアは大きく落ち込み、技術力でもアメリカに後れをとるようになっていました。

メーカーとしても輸出を増やせないので、それほど技術開発や設備投資をするわけにもいかなかったからです。

そして、1990年代半ばには、アメリカにとって日本の半導体産業はそれほど脅威ではなくなっていました。

またパソコンのシステムソフトのWINDOWSの開発などにより、必要とされる半導体の種類が大きく変わり、日本の半導体メーカーたちは大規模なリストラを迫られることになりました。

日本は半導体の技術を韓国に丸々提供した

こうした過程の間隙を縫って、台頭してきたのが韓国のサムスン電子なのです。

当初、日本はサムスン電子のことなど、まったく眼中に置いていませんでした。

「サムスン電子が日本やアメリカの半導体技術に追いつくにはまだ時間がかかるだろう」と踏んでいたのです。

現代日本の「高純度フッ化水素」などの技術と同様の意識を持っていたのです。

そのため日本企業は愚かなことに、サムスン電子に大っぴらに技術提供さえしていたのです。

1996年に、日本は国内の主要な半導体メーカーが集まって、半導体先端テクノロジーズ(Selete)という研究開発企業を起ち上げました。メーカー各社が独自に研究するのは開発費のコストがかかりすぎるということで、通産省が音頭をとり、日本の半導体産業を復権させるために、企業の垣根を超えて協力し合おうということになったのです。この半導体先端テクノロジーズ(Selete)当時の日本の半導体の主要メーカーだった、東芝、ソニー、シャープ、富士通、日立、松下、三菱電機、NEC、沖電気、サンヨーの10社が、5億円ずつ均等出資することによって設立されました。

各企業の研究者、技術者が一か所に集まり共同研究開発を行う、という「日本の半導体技術のすべてが結集された企業」だったのです。

が、信じがたいことに、この半導体先端テクノロジーズ(Selete)には、その後、なぜか韓国のサムスン電子が「研究開発委託」という形で参加したのです。

なぜ日本国内メーカーの競争力を高めるために、日本の技術の粋を集めてつくった研究企業に他国の企業を参加させたのでしょうか?

日本企業としては、下請け企業としてサムスン電子を使おうと考えていたのですが、サムスン電子は日本企業が思っている以上に技術模倣が進んでおり、日本企業が設備投資に躊躇している間に大掛かりな設備投資を行い、あっという間に日本企業を追い越してしまったのです。お人よしにもほどがある、ということです。「ひさしを貸して母屋を取られる」とはまさにこのことです。

またこのことは、当時の日本企業がいかに、韓国企業を甘く見すぎていたかということでもあります。日本企業の脇の甘さを象徴しているといえます。この半導体先端テクノロジーズ(Selete)への参加が、サムスン電子にとって大きな飛躍のきっかけになったことは間違いないのです。次回は、韓国の産業スパイと日本企業の脇の甘さについて述べたいと思います。(一部抜粋)


韓国やりたい放題。産業スパイの引き抜きを許した日本企業のどケチぶり

2023.06.03

by 大村大次郎

長い時間と労力をかけ開発した技術を、隣国にたやすく盗用され続ける日本。なぜこのような事態が頻発するのでしょうか。前回記事で、模倣に長けた韓国企業に技術供与したため、半導体のシェアを奪われた日本企業の「脇の甘さ」を指摘した元国税調査官で作家の大村大次郎さん。今回は、「供与」ではなく、韓国企業による「盗用」の手口を紹介。日本企業が莫大な利益を上げていながら、技術者の待遇に反映せず、あまりに簡単に「技術流出」を招いた醜態を暴露しています。


情報を盗んだ相手と和解。韓国に技術を盗用され放題の日本企業

前回、日本は戦後、韓国や東南アジアに無防備に技術供与を続けてきたために、工業製品のシェアを奪われることになったということをご紹介しました。今回は、「韓国の模倣技術」についてもう少し突っ込んだ話をしたいと思います。

日本から韓国への技術流出は、日本企業が正式に技術供与したルートだけではありません。不正に技術が流出することも多々あるのです。

たとえば2014年には、東芝の提携企業の元技術者が、韓国の半導体企業「SKハイニックス」に機密情報を流したとして訴えられる事件がありました。いわゆる「東芝半導体データ流出事件」です。

この事件の経緯は次の通りです。アメリカの半導体大手のサンディスクの日本法人に勤務していた技術者が、共同技術開発していた東芝のデータをコピーし、韓国の「SKハイニックス」に転職しました。そして「SKハイニックス」において、コピーしていた東芝の研究データを「SKハイニックス」に提供したのです。

これに気づいた東芝が、SKハイニックスと元技術者に対し1,090億円余りの賠償などを求める訴訟を起こしたのです。

この裁判は、SKハイニックスが27,800万ドル(約330億円)を支払うことで和解しました。

が、東芝は信じがたいほどお人好しで、この事件をきっかけに、SKハイニックスと共同開発をすることを同意したのです。

「情報を盗んだ相手と和解し、その後に協力し合う」というのは、映画やテレビドラマであればありうるでしょう。しかし、経済社会はそれほど甘くありません。

共同開発しても、したたかな韓国企業と東芝では公平になるはずがありません。東芝の大幅な持ち出し超過になることは目に見えていたはずです。この元技術者は、SKハイニックスから前職の2倍ほどになる千数百万円の報酬を約束され、住居にはソウルの高級マンションを提供されていたそうです。しかし、SKハイニックスは、この元技術者の能力自体には魅力を感じておらず、保持している機密情報だけが欲しかったらしく、たった3年で契約を打ち切られています。絵にかいたような「産業スパイの使い捨て」です。

 

1回の技術講義で月給数倍もの報酬。韓国のパクリの手口

しかし、この事件は氷山の一角であると見られています。

この事件は、東芝の社員ではなく提携先の企業の元技術者が「データをコピーして持ち出した」ために訴えられたものです。

もし、東芝の技術者がデータをそのまま提供するのではなく、自分の培った技術を提供すれば、なかなか訴えるのは難しいのです。

実際に、90年代以降、そういう事例は腐るほどあるのです。東芝、ソニーなどから、韓国のサムソン電子などに転職した技術者は多々います

また転職をせずとも、韓国企業から招かれて技術講義などを行った日本の技術者は多々いると見られています。

日本の技術者たちは、日本企業に在職したまま、土日にサムソン電子などにソウルに招かれるということがよく行われていました。

1回の技術講義で、その技術者の月給の何倍もの報酬が払われたそうです。これは半導体分野だけじゃなく、日本の産業全体でこういうことが行われたと見られています。

たとえば韓国の製鉄メーカー最大手のPOSCOは、2012年、日本の新日鐵から「技術盗用」で訴えられています。新日鐵の元技術者たちを雇用し方向性電磁鋼板の技術を盗用したのです。

韓国は、途上国のときには「技術供与」により、先進国になってからは「技術盗用」により、日本の技術を奪ってきたのです。

韓国はこの手の「ダークな産業競争」には非常に強く、日本はからきし弱いのです。しかも、日本側にも、技術流出を招きやすい要因がありました日本の経済政策の失敗も大きく関係しているのです。

 

賃金を下げ韓国の「引き抜き」招いた日本企業の重い責任

韓国の技術盗用の手口は、日本企業の技術者を高額の報酬で釣るという非常に単純なものです。なぜ日本側はこれを防げなかったのでしょうか?これには、90年代以降の日本の経済界の大きな失策が関係しているのです。

バブル崩壊以降、日本の経済界は、日本人の雇用を非常におろそかにしてきたのです。

日本経済新聞2019319日の「ニッポンの賃金(上)」によると、1997年を100とした場合、2017年の先進諸国の賃金は以下のようになっています。

アメリカ    176
イギリス    187
フランス    166
ドイツ     155
日本        91

このように先進諸国は軒並み50%以上上昇しているにもかかわらず日本だけが下がっているのです。

この20年間、先進国の中で日本の企業だけ業績が悪かったわけではありません。むしろ、日本企業は他の先進国企業に比べて安定していました。経常収支は、1980年以来、黒字を続けており、東日本大震災の起きたときでさえ赤字にはなっていません。

企業利益は確実に上昇しており、企業の利益準備金も実質的に世界一となっているのです。にもかかわらず、日本企業は従業員の待遇を悪化させてきました。

賃金を上げなかったのは、中小企業だけじゃなく大企業も同様です。

というより、大企業が賃金を抑え込んだために、日本全国の企業が賃金を抑え込むことになったのです。

その一方で、日本の大企業の役員報酬は高騰しています。

20103月期決算から、上場企業は1億円以上の役員報酬をもらった役員の情報を有価証券報告書に記載することが義務付けられました。この制度が始まったとき、上場企業では364人もの1億円プレーヤーがいたことが判明し、世間を驚かせましたが、上場企業の1億円プレーヤーは、その後も激増を続け、2018年には731人になっています。コロナ以降も増え続けており、企業によっては、社員の平均給与の200倍の報酬をもらっている役員もいます。

また株主に対する配当も、この20年で激増し、2倍を大きく超えています。つまり、株主配当も役員報酬も激増し、会社には巨額の預貯金がため込まれているにも関わらず、社員の賃金だけは下げ続けられたのです。これでは、会社に忠誠心を持てと言う方が無理です。

ちなみに韓国の大企業の賃金はそれなりに高いし、近年は欧米以上の上昇を続けています。

韓国経済は決してよくはありませんが、財閥、大企業の社員の待遇自体は日本よりいいのです。

韓国企業が日本企業のシェアを奪っていった時期と、日本がリストラを敢行し賃上げをしないようになった時期とはほぼリンクします。

見方によれば、韓国企業は日本経済の弱点を的確に衝いているといえるのです。(一部抜粋)


 

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