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スーダン、民政移行中 統合へ折り合えず衝突


4月17日、 スーダンでは首都ハルツームを初め、全土で戦闘が勃発した。敵対する武力派閥が支配権を争っており、内戦に発展する危険性が高まっている。

写真は同日、ハルツームの空港の滑走路から立ち上る煙。(2023年 ロイター/Abdullah Abdel Moneim)

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◎何が戦闘の引き金になったのか

正規軍と民兵組織「即応支援部隊(RSF)」の間で数カ月前から緊張が高まっていた。両者は2021年10月のクーデターでは協力して文民政府を倒した。国際社会の支持を得た新たな民政移管計画の開始に伴い、摩擦が表面化。バシル長期独裁政権の打倒から4周年の4月初旬には、民政移管の最終合意に署名する予定となっていた。

計画では、正規軍とRSFの双方が権力を委譲することが義務付けられており、1)RSFが正規軍に統合されるまでの日程、2)軍が正式に文民の監督下に置かれる時期──の主に2つの争点が浮上した。

15日に戦闘が勃発すると、双方は互いに相手側が暴力を誘発したと非難。

軍はRSFが数日前に違法な動員をかけたとし、RSFは軍がバシル派と共謀して全権を奪おうとしたと主張した。

 

◎主要関係者

権力闘争の主人公は、軍のトップで2019年から統治評議会の議長を務めるブルハン氏と、評議会の副議長であるRSFリーダーのダガロ司令官。

新たな政権移行計画が進展するにつれ、ダガロ氏は「自由と変革の諸勢力(FFC)」の文民政党とより密接に連携するようになった。FCCは、バシル政権打倒から2021年のクーデターまでの間、軍と権力を共有していた。

外交官やアナリストによると、これは大物政治家に上り詰めようとするダガロ氏の戦略の一環。金鉱などの事業で富を築いたダガロ氏とFFCはともに、クーデター後に足場を固め、軍に深く根を下ろしたイスラム主義寄りのバシル派の忠臣や元軍人を排除する必要があると強調していた。2020年の和平合意で利益を得た一部の親軍反体制派とともに、バシル派は新たな政権移行合意に反対した。

 

◎何が問題なのか

民衆の蜂起を受けてスーダンとその国民4600万人の間では、バシル政権下での数十年にわたる独裁、内紛、経済的孤立から脱却できるという希望が生まれていた。今回の紛争は、こうした希望を打ち砕くだけでなく、サヘル(サハラ砂漠南縁部)、紅海、アフリカ東部の「アフリカの角」と隣接する不安定なこの地域を再び揺るがす可能性がある。

また、この地域での影響力を競うロシアと米国、そしてスーダンのさまざまな勢力に取り入ろうとしのぎを削る地域各国間の競争にも影響しかねない。

 

◎国際社会との関係

バシル政権打倒後、米国を含む西側諸国は民主的な選挙への移行を支持してきた。クーデター後は資金援助を停止したが、その後、新たな政権移行と民政移管の計画を後押ししている。

エネルギー大国であるサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)も、バシル政権からの移行がイスラム主義者の影響力を後退させ、地域の安定に資すると考えてスーダンへの関与を模索してきた。湾岸諸国は、スーダンの農業や紅海沿岸の港湾などへの投資を進めている。ロシアは紅海に海軍基地を建設しようとしている。一方、UAEの企業も幾つか投資契約を結んでいる。

ブルハン、ダガロ両氏は、サウジが主導するイエメンでの作戦に軍隊を派遣し、サウジと密接な関係を育んできた。

ダガロ氏は、UAEやロシアを含む他の外国勢力とも関係を築いている。エジプトはブルハン氏および正規軍とのつながりが深い。最近では軍やバシル元政権と近い政党を通じ、両にらみの政治交渉路線を進めている。

 

◎考えられるシナリオ 

国際機関は停戦と対話の再開を呼びかけているが、各派閥の歩み寄りはほとんど見られない。

軍はRSFを反政府軍と決めつけて解散を要求。ダガロ氏はブルハン氏を犯罪者と呼び、国に破壊をもたらすと非難している。

スーダン軍は航空戦力などでRSFよりも優れた資源を有しているが、RSFはハルツームや近隣都市、その他の地域に展開して10万人とも言われる部隊に発展。同国では長期にわたる経済危機や深刻な人道支援ニーズに加えて、紛争の長期化が懸念されるようになった。

RSFはダルフール西部地域での支援や部族間のつながりも活用できる。RSFは、2003年以降に激化した残虐な戦争において、ダルフール西部で反政府勢力を鎮圧するために政府軍とともに戦った民兵組織を母体とする。



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