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歯科医が教えるホントとウソ


吹き戻しを使って「オーラルフレイル」を防ぐ

食後30分間は歯磨きNG? ジュースは歯を溶かす? 

2023.04.24

  「ジュースを飲むと歯が溶ける」「食後30分は歯磨きを控えるべき」など、たびたび耳にする「歯の情報」。真偽がわからず、悩む人も多いのではないでしょうか。歯にまつわる噂について、日本歯科医師会常務理事で歯科医師の小山茂幸さんに聞きました。

プロフィール

小山茂幸(こやま・しげゆき)

1985年広島大学歯学部を卒業。1991年山口県周南市に「こやま歯科医院」を開業。

2015年から山口県歯科医師会会長、山口県高等歯科衛生士学院学院長。2016年から日本歯科医師会常務理事も務める。

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始めたらどうなる? 子どもの歯列矯正のリアル

― 子どもの矯正歯科治療について、保護者側にはどのような変化がありますか?

矯正歯科治療については、日々の臨床の中で保護者の意識の高まりを感じています。ちょうど自身が矯正歯科治療を経験した世代が親になってきていますからね。

「自分の子どもにも早くから歯列矯正をしてあげたい」と思う方が多くなっているのでしょう。

「少しでも早く治療を始めたい」と言う保護者もいますが、子どもによっては歯が生え変わる前や生え変わり中の時期ではなく、永久歯が生え揃い、あごの成長が

終了してから矯正すべきケースも少なくありません矯正歯科治療は必ずしも早くから始めるのがいい、というものではないのです。

―  矯正歯科治療によってかみ合わせがよくなると、学力や集中力にも好影響があるのでしょうか。

噛むことをはじめとしたお口の機能は脳機能に少なからず影響を与えることは、さまざまな研究によって知られています。

例えば、プロ野球選手が試合中にガムを噛む理由の一つは集中力を高めるため。

このように、噛むことによる刺激が脳に伝わり、脳機能そのものを活性化させると考えられています。

つまり、かみ合わせがよくなることによって、効率的に噛む機能が獲得でき、脳機能をより活性化させ、集中力の向上にもプラスに働き作用すると考えられます。

その結果として、学力の向上も期待できると思います。

―  矯正歯科治療を進める上で、子どもの生活には具体的にどのような影響があるのでしょうか?

矯正歯科治療は口の中にさまざまな装置をセットして行います。

歯の11本に金属などのボタンをつけ、そこにワイヤーを通すことによって徐々に歯をきれいに並べていくマルチブラケット装置が代表的です。

口の中に装置をつけるわけですから、もちろん「装着による違和感」や「会話がしにくい」など、影響は少なからずあります。

最初は困惑するかもしれませんが、これらは装着して12週間程度で慣れ、次第にほとんど気にならなくなります。

問題は食生活です。矯正装置には食事の際に取り外せるもの、取り外せないものがあります。

マルチブラケット装置は取り外せないタイプですが、氷や硬い肉などを無理に噛むと破損してしまう恐れがあります。

また、キャラメルなどの粘着性の高い食品は装置が外れる原因にもなるため、食べるものには注意が必要です。

また、歯磨きなどのホームケアをさらに丁寧に行う必要もあります。ほうれん草やニラなど繊維質が多い野菜は装置にまとわりつくため、お口の中に残りやすい。

そのため、毎食後の歯みがきをこれまでより時間をかけて丁寧に行わなくてはならなくなります

私たちは子どもに限らず、矯正歯科治療を始める際には、むし歯や歯周病のリスクに備えて歯ブラシ選びやブラッシング方法など、装置に応じた歯磨き指導を徹底しています。

☞ 中学受験生×矯正歯科治療で考えるべきこと

 ―  冒頭でお話いただいたように、保護者世代は子どもの矯正歯科治療に関心を寄せています。

      中学受験生が矯正歯科治療を検討する上で、どのようなポイントがあるしょうか?

子どもの矯正歯科治療を検討する上で、私は「歯年齢」と「成長」という2つのキーワードがあると考えています。

まず「歯年齢」とは、歯の生えかわりなどの状況を尺度としたもので、骨年齢や精神年齢と同じで実際の年齢とは異なるものです。

歯の生え変わりは、子どもの実年齢に合わせて進むものではありません。

小学校高学年ですべて永久歯に生え変わっている子どもがいれば、まだ多くの乳歯が残っている子どももいます。

矯正歯科治療を検討する場合には、実年齢よりも「歯年齢」が重要です。

次に「成長」は、「成長時期」と「成長量」に分けて考えられます。身長の伸び方と同様で、あごの成長も個人差が大きいものです。

その子どものあごがいつ、どれだけ大きくなるかを正確に予測するのは難しいと言えます。

あごの成長が小さく永久歯の生えるスペースが小さい場合などは、歯並びやかみ合わせの問題が出てきます。

そこで、お子さんに対して矯正歯科治療を行い、あごの成長を促進させるような装置を入れることで、歯並びやかみ合わせを改善することがあります。

   一方、これは成長を終えた大人では難しい。そのため、あごの成長を利用できる点は、小学校高学年に限らず成長発育期に矯正歯科治療をするメリットになります。

 

 

しかし、すべての永久歯がきれいに並ぶだけのあごが大きく成長しなかった場合や、受け口で一度は改善してもその後、下あごが大きく成長し受け口が再発した場合などでは、再治療が必要となります。 

※ 写真: 通常、上あごの歯が下の歯より前でかむ状態であるのに対して、下あごの歯の方が前でかんでいる状態

その点で、矯正歯科治療におけるあごの成長は諸刃の剣といえると思います。

これまでの話を踏まえますと、前歯が出ていることや八重歯が気になるといった理由で中学受験前に矯正歯科治療を開始するメリットは基本的にはないと思います。むしろ、前述したような治療に伴う生活の変化がストレスとなり、一時的ですが受験勉強にも悪い影響を与えることが考えられます。

ただし、永久歯がなかなか生えてこなくてあごの骨の中に埋まっている、あるいはその埋まっている歯が隣の永久歯の根にダメージを与えているなど緊急を要するケースも。

歯科医院での定期的な歯並びやかみ合わせのチェックは必要となります。


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