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タワマン住まいが危ない

高層階を揺らす「長周期地震動」の階級

2023.03.09

by 富田隆

  東日本大震災発生時には、震源から遠く離れた大阪や新潟でも確認されたという「長周期地震動」の被害。

そんな長周期地震動が、2月1日より緊急地震速報の対象に追加されたことをご存知でしょうか。心理学者の富田隆さんが、気象庁が策定した長周期地震動の4つの階級の目安と、自身が東日本大震災で体験した「長周期地震動階級3強」の揺れの様子を詳細に紹介。その上で、地震大国に住む私たちに可能な限りの備えを呼びかけています。



12回目の「3.11」を前に振り返る「長周期地震動」の恐ろしさ

今年も311日が廻って来ます。東日本大震災のあの日、東京23区では震度5強、多摩地域では震度5弱の揺れに襲われました

我が家のある多摩センター周辺では震度5弱でしたが、幸いなことに、被害は、食器棚からガラスコップが1個転がり落ちて割れただけでした。

ところが、同じ多摩地区にありながら、当時私が奉職していたK女子大の研究室は大きな被害を受けました。

その差が生じた理由は「長周期地震動」にあります。「長周期地震動」は高層ビルなどに強い影響を与えるのです。

最近、気象庁では、この「長周期地震動」を4つの階級に分け、階級ごとに高層ビルの室内がどのような状態になるか、おおよその目安を策定しました。

階級が上るごとに室内の状態は厳しくなり、被害も起こり易くなります。 気象庁の発表した目安は、およそ以下のようになります。

長周期地震動階級1

ブラインドなどの吊り下げた物が大きく揺れ、ほとんどの人が揺れを感じ、驚く人もいる。

長周期地震動階級2

キャスター付き什器がわずかに動き、棚の食器類や本などが落ちる事がある。室内の人は大きな揺れを感じ、何かにつかまりたくなる。

物につかまらないと歩くことが困難になるなど行動に支障が生じる。

長周期地震動階級3

キャスター付き什器が大きく動く。固定していない家具は動くことがあり、不安定なものは倒れることがある。

間仕切り壁などにひび割れや亀裂が入ることがある。室内の人は立っていることが困難になる

長周期地震動階級4

キャスター付き什器が大きく動き、転倒するものが出る。固定していない家具の大半が移動し、倒れるものもある。

間仕切り壁などにひび割れや亀裂が多くなる。室内の人は揺れにほんろうされ、立っていることができず、這わないと動くことができない。

上記の「階級」分類に合わせると、私の研究室の状態は「長周期地震動階級3」だったようです。

書棚の本は全て落下し、固定していなかった書棚と食器棚は倒壊、壁の額は落ちて割れ、電子レンジは1メートル吹っ飛んでステンレスのシンクに落ち、凹み傷を作りました。

ティーカップなど食器のほとんどは落下して割れました。あちこちの壁に亀裂が走りましたが、その数はわずかでした。

最初は歩けましたが、最大震度の時は壁につかまって立っているのがやっとでした。

ただ、研究室によっては、間仕切り壁に固定してあった鉄製の書棚が倒れて折れ曲がりました。書棚を固定してあったアンカーが壁を破って引き抜けたのです。

私の研究室では、固定してあった書棚そのものは無事でしたが、いくつかの研究室の固定書棚は上記のような惨状を呈していました。

仮に、書棚の近くに人がいれば、とても無事では済まなかったでしょう。

その日は春休みで授業も無く、多くの先生方は研究や学会で大学を離れていました。登校して教授の研究室を訪ねていた学生の数も少なく、そのことが負傷者ゼロの幸運につながりましたが、もし、通常の授業期間であれば、多くの負傷者が出ていたかもしれません。

私が地震の揺れを最初に感じたのは、コンピュータに向かって、何かを書いている時でした。

嫌な予感がしたので、コンピュータを止め、ドアを解放の状態でストッパーで固定して廊下に出ました。

その間に揺れは大きくなり、まるで船に乗っているような感じになりました。窓の外を見ると、電車などに乗っている時のように景色が左右に移動しています。

景色の移動の幅が大きかったことから、自分のいる大学棟が大きく揺れていることが分かりました。

よろよろしながらエレベーターの前まで移動して、壁につかまり、何とか立っていると、眼の前の壁の天井に近い部分から亀裂が30センチほど下に走るのが見えました。

「このビル、崩れるんじゃないだろうか」などと他人事のように考えながら、周囲を見回していると、ドアのストッパーが揺れではずれ、ドアがゆっくり閉まりました。

大きな揺れが続いていると、楔型のドアストッパーは役にたちません

サッシのガラス戸なども鍵を閉めておかないと、繰り返される揺れで戸が動き、完全に開いてしまいます

鍵を閉め忘れた先生方の窓は、地震の間に全開となり、風にカーテンが翻っていました。もし、窓際に鉢植えなどを置いていたら、落下による被害も起きたでしょう。

ドアが閉まった直後、私の研究室から物が落ちる音が聞こえ、やがて、次々に、固定していなかった書棚や食器棚の倒れる音が聞こえて来ました。食器棚の倒壊音が一番盛大でしたが、その頃には、建物全体からたくさんの物が落ちたり倒れたりしている音が響いて、この世の終わりめいた雰囲気を醸し出していました。

揺れが終わってから気づいたことですが、この時、研究室の中では、倒れた書棚などが内側からドアを塞ぎ、中に入れない状態になってしまいました

間抜けなことに、私は部屋から閉め出され、コートを取りに戻ることもできなくなったのです。

さらに、落下した電子レンジが水道栓を押し下げ、水が噴き出していました。

結局、人力ではドアを開けることができず、翌朝、理事長の許可を得て、自動車のジャッキでドアを開け、ようやく中に入ることができました。

研究室のスチールドアには、今でもジャッキの傷が残っているはずです。 

それにしても、あのような揺れは初めての体験でした。起震車の体験とも明らかに違いました。ガタガタとした細かい揺れではなく、比較的ゆっくりと左右に振られます。例えるなら、嵐の中の大型船といった感じの揺れなのです。

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