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日本電産、業績急悪化に潜んだ巨額買収のツケ

ヨーロッパ買収企業が顧客とトラブル、損失に

大清水 友明 : ジャーナリスト

2023年02月10日

124日、日本電産は20233月期第3四半期の決算説明会で、通期の営業利益を当初予想より1000億円少ない1100億円、最終利益を1050億円少ない600億円と、大幅に下方修正した。

パソコンのハードディスク市場の急速な縮小や中国でのロックダウンによる影響などで市場環境が急速に悪化しているとして、第3四半期に128億円、第4四半期には500億円を投じて収益構造を改善するための改革に乗り出すという。説明会で永守重信会長は、「前経営陣が外部から来て好き放題の経営をやって、大きな負の遺産を作って去っていった。そうしたいろいろなゴミをすべてきれいにしてしまおうということだ」と述べて、昨年9月に辞任へと追い込んだ関潤前社長に責任転嫁するかのような発言をした。

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誰も突っ込まなかった問題

出席したアナリストが構造改革に取り組む理由を重ねて尋ねたところ、永守氏はヨーロッパで起きた問題に前経営陣が「スピード感を持って対応せず、客先にも行かず、工場にも出向かなかったばかりか、さまざまな問題を処理せずに放置した」と述べた。

「日本電産の基本的な姿勢は『すぐやる、必ずやる、できるまでやる』で、それが強い行動指針になっている。(前経営陣のように)問題を半年も1年も放置すれば、どんなものでも腐って臭いが出てきて、誰も直すことができなくなる。それが今回の大きな損害を出した主因だ」

ただ、ヨーロッパで起きた問題の具体的な中身について、この日の説明会では十分な説明はなく、出席したアナリストや記者からも突っ込んだ質問がなかった。そのため、もやもやとした消化不良感ばかりが残った。

ヨーロッパで起きた問題とは何だったのか。筆者はその一端を示す日本電産の内部資料を入手した。

資料とは、日本電産の子会社であるドイツの自動車部品メーカーGPMが起こした顧客とのトラブルについてのものだ。

顧客はイギリスの自動車メーカーのジャガー・ランドローバー(以下、ジャガー社)である。GPM社が生産したウォーターポンプの不具合によって出た損害に対して、202110月にジャガー社から賠償を求められたという。

GPM社はエンジンの冷却水を循環させるための部品であるウォーターポンプのメーカーとしてヨーロッパでもトップクラスのシェアをもち、日本電産が20152月に買収した。

ジャガー社との間でトラブルとなったポンプは20166月に生産を開始、20193月になって最初の市場不具合が報告された。不具合の内容は、流量をコントロールする機能がうまく作動しないために冷却水の水温が上昇し、それが原因でラジエーターのファンが騒音を出すというものだ。GPM社では対策に苦慮し、翌年にソフトウェアを変更する改善策を取ったが、部品交換代やソフトウェアの変更コストとしてジャガー社から31億円余りを請求されるに至った。




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