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歳をとっても老けない人が50代で「やらないこと」


歳をとってからの「苦労」は買ってでもするもの

和田 秀樹 : 精神科医

2023年01月03日

人間は、〝思わぬところ〟から、思わぬほど早い時期から老化が始まり、しかもそれを放っておくと体も見た目も老けていきます。この〝思わぬところ〟とは「感情」です。そして「感情の老化」とは、科学的な事象として言い換えると、脳の前頭葉が老化する ということだそうです。

前頭葉は、個人差もありますが4050代頃から萎縮し、目に見えるように老化し始めるといいます。


変化や問題が起きても、それを恐れない

   変化を楽しむ

「変化」や「問題」を回避するのではなく、「前頭葉を鍛えるチャンス!」と、喜んで対峙すること。

それがさらに前頭葉をフル稼働させ、素晴らしいアイデアもひらめいてくるはず。

   愚痴を言わない

愚痴を言っていても始まらない。不都合なことが起こっても不自由は発明の母。全身全霊を傾けて考えれば、きっと乗り越えられる。

「二者択一」にしない

   ひとつのことに 30のアイデアを出す訓練をする

「二者択一」「白か黒か」ではなく、「これもあり」「それもあり」「あれもあり」……とたくさんの選択肢を出してみる。

これも「変化対応力」を鍛えるトレーニングになる。

    「これまでどうだったか」より「これからどうするか」

過去の経験だけで行動をコントロールするのではなく、未来の予測や展望から「どうするか」を判断する。

変化の激しい時代には、そんな前頭葉の未来型思考が必須。

失敗を恐れない

   失敗の可能性のあることもやってみる

自らの考えも、好奇心も、「実行」「実験」なくしては、前頭葉にとっては何の意味も持たない。

「未知の失敗が織り込み済み」の実験に挑戦し続けることが「脳の若さ」を保つ秘訣。

☞ 歳をとっても苦労は買ってでもすべき

多くの人は、記憶力が低下することで初めて「ああ、私もいよいよ老化が始まったか」と思うのですが、ここがまず、勘違いの始まりです。

記憶力、つまり記憶のインプットとその蓄積に関係するのは、脳の側頭葉ですが、この側頭葉は、前頭葉と比較すると老化が始まるのが遅いという特徴があります。

記憶力が低下し始めるとっくの前に前頭葉の老化が始まっているというわけです。

また、「若い頃は視野が狭くても、歳をとって経験を積むほど多彩なものの見方ができるようになる」と一般的には考えられがちですが、これも大いなる勘違いです。

歳をとり始め、「まだ側頭葉は健在だが、前頭葉は老化している」ときに特に目立つのが「以前はこうだったのだから、とりあえず、同じようにしておけば問題はない」という、いわゆる「前例踏襲型思考」です。

これは前頭葉の「未来型思考」ができなくなってしまっているゆえに陥る思考法ですが、このように歳をとると、「多彩なものの見方」どころか、過去の事例からしかものごとを考えられない、創造性も多様性もない考え方をしてしまいがちなのです。さらに、歳をとると、仕事上のミス、失敗もあまりしなくなるものですが、それを「亀の甲より年の功、流れの先が読めるようになったからだ」と思うのも勘違いの可能性があります。単に失敗することをしなくなっただけにすぎない、ということもあるのです。

そして何より、こうした「勘違い」を起こしてしまうのも、ひとえに前頭葉が老化しているからにほかなりません。

脳が老化してくると、「自分に心地よい」ことを好むようになります。それゆえ、自分の都合のよいようにものごとを解釈し、そして「自ら無理や苦労をすることを避ける、しなくなる」からです。

しかし――人生100年時代。40代、50代といってもある意味「まだまだ」なのです。こんなところで老け込んでいるわけにはいきません。いくつになっても、失敗を恐れず、どんな困難にも立ち向かっていくことです。「若い頃の苦労は買ってでもするもの」といいますが、むしろ脳の老化防止のためにも、「歳をとってからの苦労は買ってでもするもの」なのです。

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