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岸田内閣「使い捨て」を目論む勢力の正体


2022.12.21

by 『冷泉彰彦のプリンストン通信』

倍増する防衛費の一部財源を、増税により賄うとした岸田首相。 最新の各社世論調査では最低支持率の更新が相次ぐなど、内閣に対する国民の反発は大きなものとなっています。このような現状について、「岸田内閣は“使い捨て”というムードも漂ってきた」とするのは、米国在住作家の冷泉彰彦さん。 

誰が現政権の使い捨てを目論んでいるのかを解説するとともに、2つの解決策を提示しています。 ・・・以下、本文抜粋。


漠然とした党の組織というものがあり、今は4月の地方選で負けるとタダの人になるのでイヤというムードが地方に強かったりして、そうしたムードの全体が「キングメーカー的な権力」を漠然と形成して、内閣を「使い捨て」にしようとしている、そんな感じです。つまり国策とか国家意思というものも、実は漠然としていて非常に曖昧なのかもしれません。

 これは、防衛装備が充実しているとかしないとか、言う以前のかなり怖い状況です。日本の場合は、負ける戦争を選択して国民を極限的な苦痛に追い詰めた経験から、政府に権限を与えると自分の生命が脅かされるという感覚が長く続きました。そこに多少の真理はあるにしても、やはり現在の「国家の意思が内閣を使い捨てにしている」状況というのは異様です。

タコが自分の足を食べているうちに、全てが無になってしまうようなアナーキーなナンセンスを感じるからです。

問題は、やはり総理のコミュ力だと思います。総理になるためには密室で派閥の合従連衡を勝ち取れればいいのですが、総理になった途端に国策を決断し、国民に説明するという全く違うスキルを試されるのです。

この問題を何とかするのは、そんなに難しい話ではありません。2つやればいいだけです。

1つは党議拘束を外すのです。そうすれば、一つ一つの法案について、議員は選挙区の有権者と対話して、賛否を決めなくてはなりません。そこで民意を裏切ったら、次の選挙では落ちるからです。今の日本の政治はその緊張感がないので、派閥のボスから総理になっても、有権者と真摯に向き合えないのです。

もう1つは、予備選をしっかり全国巡業でやるのです。

一方的な演説をして駆け回るのではなく、市町村レベルでの対話集会をTVガチンコ生中継を入れたり、ネット中継しながら延々とやるのです。 

そうすれば政治家は否が応でも鍛えられるし、そうした長い地方巡業で勝ち残った時点ではかなりのスキルが付くはずです。

この2つをやらず、とにかく政治は「例の件よろしく」で権力行使してきた人物をいきなり国民と対話させるというのは、とにかく無理があります。 

とにかく制度が人を育てるようにしないとダメです。党議拘束解除、全国巡業での予備選、この2つを強く推奨します。


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