おがわの音♪ 第1306 版の配信★


売れる製品開発に何が必要なのか

小林製薬のナイトミン 耳ほぐタイム」

花王の「めぐリズム」

小林製薬の「ナイトミン 耳ほぐタイム」が売れています。

耳を温めてくれて、快適な睡眠に誘ってくれる、“耳栓”なのです。

2022年上期の日経MJヒット商品番付」、東の前頭11枚目に入ったこのナイトミンは、昨年10月の発売から約7カ月で、出荷個数110万個を超えたとのことです(日経MJより)。

とてもシンプルで、耳栓の中に「発熱体」を入れて、そのまま耳に入れると、じんわりと温かくなってくるそうです。既に上梓されている温めるという商品に、花王の「めぐリズム」がありますが、これは目が疲れた時に、目隠しのようにつけると、じんわりと温まってくる という商品ですが、小林製薬の「ナイトミン 耳ほぐタイム」は耳を温めてくれるのです。

この商品は、耳栓なのでさらに、音を遮ってくれる効果もあるため、寝入る時にも良さそうです。

このブランドサイトによると47%の人が、「寝付きが悪い」と感じているようです。

もちろん、寝付きが良くない理由は、身体のさまざまなことが要因ですが、小林製薬では「耳」に注目しました。耳には自律神経が集まっていることに注目したそうです。

そこでヒントになったのが、赤ちゃんの耳。

開発メンバーが、赤ちゃんが眠っている時に、耳が赤くなっていることに気づいたそうです。

この当たり前のようで当たり前ではない点に、気づいたことが素晴らしいですよね。

ヒット商品の開発に王道はありません。

いつも「ユーザーがどうなると嬉しいのか」「そのために何ができるか」を考えていると、この開発スタッフのようなアイディアが、降りてくるのです。

思いつきとひらめきの違い・・・「思いつき」は単に心に浮かんだことですが、「ひらめき」は、なにかに

いていつも考えていると、ふとした時にいいアイディアが降りてくることです。

ひらめきは計画の延長線上にあるものですよね。

ひらめきは、よく「布団」「トイレ」「お風呂」で出る、と言われます。

緊張が緩んだ時に降りてくるのでしょう。ビジネスや製品開発では、ひらめきを大事にしたいところです。



「めぐりズム」誕生の舞台裏    花王の顔 「イノベーションのDNA」より抜粋

目元を温めてくれるホットアイマスクを使ったことのある人も多いのではないだろうか。

蒸気でシート全体がじんわりと温まる「めぐりズム」シリーズ。

アツアツのおしぼりが少し冷めてきたぐらいの、最適な温度がなんとも心地よい
だが、これを実現するために欠かせないのが、シート全体に鉄粉をまんべんなく仕込むことだ。

このシートの熱源は、鉄と水分と空気中の酸素の化学反応によって生じる熱

だからもし、シート中の鉄粉に偏りがあると、温かさにムラが出てしまう。
つまり鉄粉の均一分布は、この商品の肝だ。しかし、それがまた最大の難関でもあった。
初代のめぐりズムは、製紙会社に委託し、紙すきの技術で作られていた。

下に示すのは、その装置の構造と原料の流れをシミュレーション図だ。 

下から原料水とパルプが混ざったドロドロの懸濁液)を流し入れると、上の面で塗り広がり、ここで紙すきが行われることになる。

2. 第一世代「めぐりズム」の製造に用いた紙すき法の装置図

紙の厚みを均一にするため、下から流し込んだ原料が上の面に到達する直前には、原料を堰(せき)に通し、さらに「邪魔板」(じゃまいた)と呼ばれる板にぶつけることで、かき混ぜている。
通常は、紙すき職人が堰の高さや、邪魔板の位置や角度を調整することで、混ざり方に偏りのない均一な紙にしている。しかし、この職人さんの経験をもってしても敵わなかったのが、めぐりズムの鉄粉入り原料だった。

「紙に鉄粉を入れるなど、製紙業界ではまずありえない話ですから、無理もありません。改良前の状態をシミュレーションすると(図2・左/上)中央の赤い部分は原料の流れ方が速く、端にいくほど青くなり、速度が遅くなることを示しています。そうすると、重い鉄粉は中央に押し流されて集まり、両端では少なくなってしまうのです。また、わずかなゆらぎをきっかけに流れが変動し、鉄粉の分布が一定しませんでした」(恩田氏)


なんとか鉄粉の偏りを解消できないか。現場の担当者から相談を持ちかけられたのが数理解析グループの中島武士氏だった。当然ながら紙すきに関しては素人。ところが、流体シミュレーションにより、堰と邪魔板の設計を最適化した装置を現場に持って行ったところ、わずか1、2回の調整で、鉄粉入りの原料を均一に流すことに成功。見事、製品化にこぎ着けることができた。

3. 鉄粉の坪量分布の時間変動

横軸は時間、縦軸は鉄粉の坪量(坪量〔g/m²〕とは板紙1m²当たりの重量を指す)

シートの幅方向に等間隔で並べた8台のセンサーの計測値を8色の線で表した。改良前(左/上)は全体的にばらつきが大きいが、改良後(右/下)では、ほぼ同一線上に数値がのっていることから、シート全体に均一に鉄粉が分布していることがわかる。


 だが実は、このシミュレーション結果を出すには、もう一つ不可欠だった要素がある。品質工学の理論だ。

いくら計算上の試行錯誤とはいえ、堰や邪魔板の形状、それぞれの高さや角度、両者の位置など、一つひとつの条件を組み合わせると、膨大なパターンが生じる。その中から最適解を見出すには、シミュレーションを何度も繰り返す必要があり、闇雲にやるわけにはいかない。

ところが、品質工学の理論を用いれば、何百、何千ものパターンを試さなくても、たったの“18通りで最適解を導き出せるという。




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