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日銀が言う「インフレは一時的」は嘘


主役はエネルギーから食品へ

やはりというべきか、日本のインフレが懸念されたように変節を見せています。

日銀が考える「年末までに収まる」一時的な物価上昇ではなく、値上げ品目が拡大し、長期化が懸念されるようになりました。 しかも、生活周りの必需品が値上がりし、消費者はいよいよ逃げ場を失いつつあります。

2%台の物価上昇」報道はミスリード

先週金曜日の19日に発表された7月の全国消費者物価(CPIについて、各メディアはコアの数字前年比2.4%の上昇を紹介、4月から4か月連続で

2%台の上昇となり、政府日銀の2%の物価安定目標を上回ったと報道しました。

それでも日銀の考える物価上昇の形とは異なるので、引き続きYCCイールドカーブ・コントロール)付きの金融緩和を継続する姿勢を伝えています。

この報道は不正確で、世論をミスリードする可能性があるので要注意です。

日銀は物価上昇の「基調」を見るために、天候などで変動しやすい生鮮食品を除いた「コア」の上昇率を注視していますが、消費者は生鮮食品を買わない

わけにはいかず、この生鮮食品がこのところ高い上昇を続けています。7月もこれは前年比8.3%上昇しています。

つまり、報道される数字より現実のインフレは高いのです。従って、7月の物価上昇はコアの2.4%ではなく、生鮮品も含めた2.6%を報じるべきです。

実際のインフレ率は「3.1%」

さらに、この数字の中には実体のない「仮想」の支出費目「持ち家の帰属家賃」が含まれていて、この上昇率がゼロで、これが指数全体の約16%も占めています。この架空の家賃を除くと、現実の物価上昇率は3.1%になります。これが実態的なインフレ率で、現に総務省も厚労省もこれで実質値の計算をしています。

つまり、日本の現実的なインフレ率はすでに3%台になっていて、2%台とは国民の受ける印象が異なってきます。

良心のあるメディアはこの3%台のインフレ率を紹介すべきです。

さらに、日銀の考える物価上昇の形、つまり賃金上昇を伴ったものでないから金融緩和を続けることが、消費者にどれだけ負担になるのか、わかって  

報道しているのでしょうか。日銀の緩和で賃上げが進むと考えるのは、日銀の傲慢です。

主役がエネルギーから「食料」などにシフト

7月のCPIの内容から見ると、日銀の言う「インフレは一時的」の認識も崩れそうです。それはインフレの中身、主役が変わろうとしているからです。

日銀はこれまでインフレの主因は資源価格高、穀物価格高と、生鮮食品の上昇で、原油など資源高は前年比では次第に減衰し、生鮮品は上がるときもあれば

下がるときもあり、2%のインフレは年内に終焉する、とみています。そしてこれを明示するために、展望リポートでは今年のコアインフレ予想2.3%とともに、

コアコア 1.2%と予想。エネルギー、生鮮食品を除けば依然として低いインフレが続くという見方を提示しました。

コアコア: 総務省が毎月公表している消費者物価指数のうち、「総合」から「食料(酒類を除く)およびエネルギー」を除く総合指数

しかし、7月のCPIはこれをぐらつかせるものとなりました。

7月のインフレ率2.6%のうち、エネルギーは16.2%上昇して全体をまだ1.22%押し上げていますが、食料品の押し上げ寄与が、生鮮食品の0.32%に対して、

それ以外の一般食品が3.7%上昇して全体を0.83%押し上げています。食料全体では1.15%と、エネルギーに近い押し上げ圧力に高まってきました。

また物価上昇を財とサービスに分けると、財が5.4%高、サービスがマイナス0.2%となっています。

この財のうち、買いだめ、買い控えが利かない非耐久消費財が6.3%上昇して、これだけで全体を2.34%押し上げています。

エネルギーはガソリンの元売りに補助金を出してガソリン価格が170円程度に収まるよう、抑えていますが、逆に原油価格が下げても補助金が減るだけでガソリン価格は下がりません。電気、ガス代金は遅れて価格設定するので、電気代はさらに値上げが予定されていて、しばらくは上昇こそすれ、下落はありません。

従って、エネルギー価格の上昇率が前年比で減衰することは当面期待薄です。

その一方で食料品は8月、10月に大量の値上げ品が控えていて、この上昇ペースは加速しそうです。

8月以降は食料が最大の押し上げ要因となり、インフレの主役となります。

日銀は22年度のコアコアを1.2%上昇と予想していますが、7月の前年比がすでに1.2%上昇で、この半年では年率2.8%、直近3か月では年率3.2%の上昇に

急加速しています。つまり、エネルギー、生鮮食品を除いても今年のインフレは3%前後に高まる懸念が高まっています。

 これは簡単には沈静化せず、日銀は次回以降の展望リポートでコアコアの予想を大きく引き上げると見られます。


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