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『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』


[著者プロフィル]

永濱利廣(ながはま・としひろ)

第一生命経済研究所首席エコノミスト。

1971年生まれ。早稲田大学理工学部工業経営学科卒業、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。

『経済危機はいつまで続くか』など著書多数。

ありきたりの分析排し、日本経済の病根を指摘

評者名古屋商科大学ビジネススクール教授原田 泰

2022.06.25.

日本経済は、なぜうまくいっていないのだろうか。

著者は、日本企業は、賃上げ設備投資よりも、現預金を増やしリスクを取らないようにしているという。

企業とは、お金を集めて投資をするものなのに、世界の中で日本企業だけ貯蓄超過である。企業が資金を借りなければ、金利が低下する。

日銀が無理に下げているから金利が低いと思っている人が多いようだが、企業が借りなければ金利は低くなる。仮に日銀が金利を上げても、景気が悪化して物価が下落するだけである。

低金利が気に入らないからと金融政策をただ批判するのではなく、なぜそうなっているかを考えなければならないと著者は言う。

低成長政府債務残高の伸び小さいからでもある。

マスコミも財務省も、国の借金が増えて大変だと言うが、他の先進国に比べて増え方は小さい2021年の英米の残高は01年比で5〜6倍だが、日本は2倍未満

実質GDP増加率は英米の30〜40%に対し日本10%だ。緊縮財政が成長を抑制している

 

ほかにも新鮮な指摘が多い。

正規雇用を望んでいるのに、非正規で働いている人11%しかいない

正社員を望まないのは、長時間労働や転勤を求められるからだ。

働き方を変えなければ正規雇用は増えないという。

また、単に65歳以上の人と未満の人の数を比べれば高齢化に向かう日本の将来は暗くなるだけだ。しかし、高齢者の比率が増えても、働いている人の数は増加している。

少子高齢化を運命と考えず、工夫の余地を探すのが賢明だ。

本書には、ありきたりの分析ではなく、日本経済を少しでもよくしようという分析が詰まっている。



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