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話題の「NFT」投資にいち早く乗っかるべきか?


2022年5月12日

Window95の父・中島聡氏の警告と未来予測

「Windows95」のチーフアーキテクトを担当した伝説的なプログラマーで、投資家としての一面も持つ中島聡氏。

 エンジニア視点での仮想通貨とNFTの未来について語った。  

 

* 危険と隣合わせだが、魅力的な仮想通貨&NFT

「すごくポテンシャルがあると思うけど “危ない” というところもある。

実際に詐欺とかが横行してるので、どう動くべきかがとても難しいですよね」

あくまで投機的なものであるといった過去のイメージが、徐々に払拭されつつある感もある仮想通貨

だが、そんな仮想通貨の未来に対して、期待と懸念の入り混じった展望を語る中島氏。

「例えば、財産の大半をイーサリアムとかビットコインに全部移しちゃうっていうのは、“まあ、それなりのリスクはあるけど、別にそんなに悪くない”と思います。例えば、そういうことを自分の息子が“する”って言い出しても、私は別に止めない。ただ、そこまではいいんだけど、じゃあ『Axie Infinity』みたいなゲームのNFTに思いっきり突っ込むって言ったら、“ちょっと止めろ”“あれは怪しいぞ”みたいな……そんな感じですよね」

中島氏が仮想通貨、ひいては近年日本国内でも俄かに注目を集める NFT に対して、“危ない”という印象を持つ理由は、いったいどこにあるのだろうか?

「要は玉石混交なんです。プラットホームとしてはすごいと思うんですよ、ビットコインにしろイーサリアムにしても。

ただ、その上で作られてるものが、まだリアルじゃないし、本当の価値を生み出してない。さらにいえば、詐欺みたいなもの、ちゃんと設計されてないものも多いんです。だから“そこで下手に動くと火傷しますよ”ということ」

実際のところ、中島氏は NFT そのものに対して、現時点ではあまり大きくは投資をしていないのだという。

 

* NFTで食っていく、ビジネスを作るというのは時期尚早

「NFTといった新しいテクノロジーやプラットホーム、その上にいろんなアプリケーションができていくわけですけど、僕としてはそのアプリケーションを作る立場にはなりたいと思うけど、どこかの他人が作ったNFTを自分が買うといった、そっち側で儲けようとは思わない。それは結局、自分が主人公じゃないので、振り回されちゃうんですよ。

だから、すごく難しいと思います、そこでちゃんとやるというのは。

たまたまラッキーで、いいコミュニティを選んで、そこにいいタイミングで入れば、確かに儲かる。

実際に儲けた人もいっぱいいるじゃないですか。それは可能性としてはあるけど、ただ“じゃあ、それで稼いで食っていこう”とか “それへの投資で大きなビジネスを作ろう” っていうのは、甘いと思います。

もしNFTで本当に大きなビジネス作るんだったら、自分でNFTを提供する側。例えば、OpenSeaのライバルになるようなNFTマーケットプレイスを作るとか、そっち側にしないとダメだと。だから、レイヤーの問題ですよ」

昨今のNFTを巡る状況に対しては、あくまで懐疑的な中島氏。

しかし、そのいっぽうで「ビジネスそのものとして価値を生み出す何かがあり、そこにお金が流れ込むっていう形のNFTなら、投資の対象として考えられる」とも語る。

「最近のNFTだと、遊んで稼ぐっていう“Play to Earn”なんかも話題ですが、あれの一番の問題はみんなが儲けようとしてること、儲けようとするお金しか入ってこないところなんです。でも、こういうので出ていくお金っていうのは、入ってくるお金より絶対に少ないわけで、だからゼロサムどころかマイナスサムにしかならない

 

* ビジネスとして実態のあるNFTの登場を待ちたい

そういうNFTじゃなくて、例えばみんなでそのNFTを買うと、そのお金を利用して何らかのビジネスが作られ、それがお金を稼ぎ始めると。……要はお金が集まるんだから、投資と同じじゃないですか。そういったものができれば、それはいい投資になるんじゃないかと。

例えば、森ビルあたりがNFTを発行して、お金を集めてビルを買います。そこをオフィスとして貸して、その収入がNFTを持っている人に分けられるんだったら、そこにはリアルなビジネスがあるじゃないですか、“不動産を貸す”っていう。

そういうNFTには投資する価値があるかと。

だけど、誰かが書いたサルの絵みたいなNFTっていうのは、それが上がる理由って“他に買う人がいる”だけじゃないですか。それだと全然投資にはならないんです」

不動産を中心に運用する金融商品といえば、REIT(不動産投資信託)という存在もあるが、中島氏曰く、そちらがすでに各種法令でがっちりと固められているのに対し、NFTだと今のところは法規制がないため、やろうと思えば気軽に始められるのでは……とのこと。

「僕も本気でちょっと考えたんですよ。ハワイに自分のために不動産をひとつ買ったんだけど、その隣にもうひとつ買ったうえで、NFTを発行してレント収入を渡すっていうのをやったらって。

……まぁ、不動産の話はあくまでひとつの例として、今後はそういうリアルビジネスが中にあるNFTが、ファイナンスのひとつの仕組みとして出てくるのかと。誰かがいずれは作るだろうし、もしくは自分でそういうのを作るのもいいですけど。

だからNFTで投資をしたいなら、そこまで待ったほうがいいんじゃないかと思います」


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