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中国が絶対に台湾を手放すことができぬ「経済的理由」


2022.05.13

 by 『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』

  「一つの中国」を声高に主張し、台湾を自国の一部と唱え続けている中国。

軍事侵攻も辞さない姿勢を取り続ける習近平政権ですが、そこまで台湾にこだわり続ける理由はどこにあるのでしょうか。

元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、これまであまり語られてこなかった経済面から台湾問題を分析。

さらに尖閣や南沙諸島に手を伸ばさざるをえない事情についても解説。


 * 中国が台湾を絶対に手放さない経済的理由

ロシアのウクライナ侵攻をきっかけにして、昨今では中国の台湾侵攻についても論じられるようになっています。

「これを機に、中国も台湾に侵攻するのではないか?」ということです。

台湾問題については、これまで政治的、軍事的観点からさんざん論じられてきました。

なので、筆者は 経済面、お金の面から台湾問題を分析したいと思います。

台湾というのは、かつて中国が共産党と国民党が争い、国民党が破れて逃げ込んだ地です。

第二次世界大戦後、中国では、これまで政権を握っていた国民党と、新たに勃興していた共産党とが、全土で戦争を繰り広げていたのですが、最終的には共産党が勝利し「中華人民共和国」建国したのです。

が、台湾に逃げ込んだ国民党は、台湾を支配を続けました。そういう状態が70年以上続いているのです。

アメリカを中心とする西側諸国は、国民党政府を支持していましたので、共産党が「中華人民共和国」を樹立しても、これを認めず、台湾の国民党政府を唯一の中国を代表する政府だと認め続けていたのです。が、1979年アメリカと中華人民共和国が国交樹立し、中国での政権として認めたので、国際的にも中華人民共和国が中国を代表する政府ということになったのです。

しかし台湾の国民党政権は、中国を代表する政府としては認められなくなりましたが、それ以降も事実上「中華人民共和国」とは別の国家として存続してきました。「台湾と中国は70年間も別々の政府だったのだから、もう分離でいいじゃないか?」

世界ではそう思っている人も多いはずです。

しかし、中国は頑なに台湾の領有を主張し続け、もし台湾が独立を強行するならば一戦も辞さないという態度をとり続けています。中国が台湾を手放さないのは、もちろん国家としてのメンツもあります。が、それ以上に経済的な事情が絡んでいるのです。 

 

* 台湾を手放せば広大な海域を失う

中国という国は、世界で第3位の広い国土を持つ国ですが、実は「排他的経済水域」は驚くほど狭いのです。

中国の排他的経済水域は世界で10番目であり、229万平方メートルしかありません。

日本は世界で8番目であり、中国の2倍近くの排他的経済水域を持っています。

「排他的経済水域」というのは、その国が持つ海洋上の権利のことです。

他の国は、船、航空機などの通過は許されるけれど、漁業や資源採掘などはできないということになっています。

近年、海洋開発の技術が進み、海には陸以上の資源が眠っていることがわかってきています。

そのため、排他的経済水域の広さというのは、その国の資源埋蔵量に直結するようになっているのです。

中国という国は、東アジアの広大な地域を占める「陸の大国」です。

が、中国の海岸からすぐのところには、日本、フィリピン、台湾があり、ちょうど中国からの海へ出る道をふさぐような形になっています。

また中国の東西の両端には、インドシナ半島と朝鮮半島があり、韓国、ベトナムなどと海を分け合う形になっています。

つまり、中国という国は、海に向かうといろんな国とぶつかり合う位置にあるので、排他的経済水域は、国土の割には非常に狭くなっているのです。

もちろん中国は、少しでも排他的経済水域を増やしたいと考えています。

そのため、日本をはじめ、フィリピン、ベトナムなどの海域を侵し、紛争の種となっているのです。

尖閣諸島問題なども、もろに海洋資源が絡んでいます。尖閣諸島とは、沖縄から左(西)に400キロ離れた8つの小さな島です。この尖閣諸島は、戦後まで何のトラブルもなく日本の領土として国際的に認められていました。

しかし、1969年、国連の海洋調査で「近海に豊富な油田が存在する」と発表された途端に、中国が領有権を主張し始めたのです。

また日本が戦後、領有権を放棄した南沙諸島も同様です。南沙諸島周辺の海域には、豊富な石油、天然資源が眠っているとされています。中国の調査では、2,000億バレルの石油が埋蔵されているそうです。

これはサウジアラビアの埋蔵量に匹敵するものです。

そしてこの南沙諸島現在、中国、フィリピン、ベトナム、マレーシアなどが領有権を主張しています。

このように中国としては他国の領域さえ分捕ろうという姿勢なのだから、台湾を手放すようなことは絶対にないのです。

しかし、現在の台湾をカタチづくった国民党政府は、第二次大戦以前からアメリカ、イギリスなどの連合国が支援してきた政府であり、現在も強い結びつきがあります。アメリカ、イギリスになどのメンツもあるので、香港のように、簡単に中国に吸収されることはないでしょう。

台湾問題も、今後の世界情勢において大きな火種になりかねないのです。

理屈は…そして、中国の抱える人権問題、チベットやウイグルの問題も実は、台湾同様の経済問題が背景にあるのです。

中国が絶対に台湾を手放すことができぬ理由

1. 台湾がもたらす利益を手放したくないから

  ノートパソコンの生産が世界でもトップクラスで、

  電子部品・半導体も世界的な生産拠点…

 排他的経済区域もあり、水産資源を守りたいから

  太平洋への進出のじゃまという説も…

 

2. 更なる国家分裂を招く恐れがあるから

  (独立を認めれば、中国政府の統率力が下がったと思われる)

    中国は多民族国家で国土も広く、国家統治が難しい

    近年では都心部と農村部との経済格差から、政府に対する

    不満が各地でくすぶっている状態


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