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元国税が暴露、子育て世代を苦しめる「税金の無駄遣い」


2022.05.06 

 そろそろ夏の選挙が話題にあがる頃ですが、具体的な政策などを見て投票先を決める前に知っておくべきこと、それは私たち日本国民が支払っている「税金」の使われ方です。

 

* あなたの想像より何倍もひどい、日本の税金無駄遣い

筆者は元国税調査官なのですが、その国税調査官の目から日本の政治を見た場合、日本人は、政治家や官僚のことを信じすぎているといえます。

日本のメディアや世論でも、政治家や官僚のことをあれこれ叩くこともあります。

政官と大企業や業界との癒着、贈収賄、不正な金稼ぎ、その他もろもろのスキャンダルは、いつもマスコミやネットで話題になっています。

が、日本人の多くはこう思っているはずです。

「なんやかんや言っても、基本は国民のためにちゃんとやってくれているはず」と。

筆者も、国税に入る前はそう思っていました。が、国税に入ってから、その考えは完全に崩壊しました。

「税」という国の根幹を担う業務が、これほどいい加減で、これほど杜撰で、これほど不公平に運営されているとは……この事実を知ったとき、筆者は愕然としました。

 日本の中間層以下では、この20〜30年間、消費税の増税、社会保険料の段階的な引き上げ、介護保険の創設などで、税や社会保険料の負担が激増しています。

平均的なサラリーマンは、税金、社会保険料、消費税の負担率を合わせると、だいたい収入の4割程度を取られています。

これは江戸時代の年貢よりも高い水準であり、もちろん世界的にも非常に高い負担です。

その一方で、高額所得者富裕層の税金は、この30年で20%以上も下げられているのです。

しかもこの税金、徴収の仕方だけではなく、使い方においてもひどいものです。

今、日本の税金は、「多少無駄遣いされている」というような生易しい状況ではありません。

税金の大半が、「税金ビジネス」による「汚い利権」によって浪費されているのです。

国民のためにはほとんど使われていません。

 


納めた税金は税務署を経由して日本銀行に預けられます。

国会で使い道が決められた後、私たちの生活に反映される仕組みです。

「税金はムダ」なのではなく、私たちの生活につながっていることが分かります。

 気になるのは「どれに一番多くお金を割いているか」です。

新型コロナウイルス感染症が深刻な問題となる前は、毎年同じような割合で歳出が決められていました。 

 

 

   ☞ 税金が無駄なく使われているのかチェック

こうした税金の無駄遣いをチェックする機関が会計検査院です。学校で憲法を勉強したときに「会計検査院は国会、内閣、裁判所のすべてから独立した組織」だと教わったことを覚えている方もいるかもしれません。

会計検査院は、1年間にわたって検査したよくない税金の使い方をまとめ、毎年11月に「検 査報告」という1000ページにもおよぶ報告書を作って、国会に提出します。

2018(平成30)年度には、1002億円もの税金の無駄遣いが指摘されています。

全体の 指摘件数が最も多かったのは 厚生労働省91件指定金額が最も多かったのは経済産業省203億円でした。

過去10年間で件数はもっとも少ないそうですが、それでも多く感じるかもしれません。

参考までに、令和2年度の予算を見ると、・・・

予算の総額は8年連続で最大を更新しており、2年前にくらべて5兆円ちかく増加しています。その一般会計の3分の1を占めるのが、社会保障費です。

 医療や年金、介護、社会福祉のために使われています。2020年度の予算では、「子供たちからお年寄りまで、全ての世代が安心できる社会保障制度」にしていくため、少子化対策に多く支出します。

「税金を公共事業にばっかり使ってムダをして…」ということが一時期言われていましたが、一番予算が割り当てられているのは医療や介護、年金や生活保護といった社会保障の分野です。内訳から、医療と年金にもっとも予算が充てられているのが分かります。少子高齢化が進んだからです。 

そして今、この社会保障を税収だけで賄えなくなりました。

先ほどの歳出の割合で2番目に多かったのは「借金の返済と利息」です。

年々増加する社会保障費に充てるべく、日本は毎年3割超の借金をしています。

そして、毎年歳出の2割超がこの借金の元本返済と利息支払に充てられているのです。

なお、この金額はすべてが元本返済に充てられているわけではありません。

元本は約13%、利息が約9%です。「日本は1千兆円の借金がある」と言いますが、背景にはこのような財政の事情があります。



* なぜ日本は「子育て地獄」になったのか?

今、日本は深刻な少子高齢化社会を迎えています。

が、実は少子高齢化社会というのは、かつては欧米の社会問題でした。

欧米では1970年代ごろから少子高齢化が始まっていました。

当時の出生率などは、日本よりも欧米の方がずっと低かったのです。

しかし欧米は1970年代から少子高齢化対策を講じたため、出生率なども、あまり低下しませんでした

一方、日本少子高齢化の傾向が見えてきても、何の対策も講じませんでした。

その結果、今では日本は欧米よりもはるかに少子高齢化が進んだ、老人大国になってしまったのです。

消費税は、子育て世代を直撃する税金です。

なぜなら、人生においてもっとも消費額が多いのは、子育てをしているときだからです。

子育てをしている世代、20代後半から30代、40代の人たちは、あまり収入は多くないわりに、子供に関する費用がかさみ消費が大きくなります。

だから、子育てをしやすくするためには、この世代に負担がかからないように、手厚い支援をしたり、減税をしたりしなくてはなりません。欧米諸国はそういうことを丁寧にやってきました。

 しかし日本の場合は、信じられないことに待機児童問題を20年以上も放置したり、大学の学費がこの30年で十倍以上になるなど、まるで子育てをさせないような政治を行ってきました。

こんなことをやっていれば、少子高齢化になるのは当然なのです—— 

※『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』の記事に加筆


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