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中国のゼロコロナ失敗が世界最大リスクになる訳

 都市封鎖や入院拒否で住民の政府への不満募る

ブルームバーグ

2022年01月21日

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)が始まってから約2年が過ぎた今、大半の国がコロナとの共存を選び、日常生活の一部として受け入れようとしている。だが、感染拡大に最初に見舞われた中国は、コロナを一切容認しない「ゼロコロナ」戦略で別の道を歩んでいる。達成は容易ではない。

国境が閉鎖され、ワクチン接種率が90%近くにもかかわらず、感染力の強いオミクロン変異株は7つの第1級行政区(省・直轄市・自治区)と全主要都市に広がっている。港湾は混乱し、ロックダウン(都市封鎖)も常態化しつつある。

昨年10-12月(第4四半期)の経済成長率が4%に低下したと発表された17日、中国人民銀行(中央銀行)は約2年ぶりに中期貸出制度(MLF)金利の引き下げに踏み切った。

都市封鎖で医療受けられず2人流産、2人死亡

 人が払う犠牲も増えている。陝西省の省都、西安では昨年のクリスマス前に始まった厳しい封鎖措置で医療措置を受けられなかった女性2人が流産、少なくとも2人が死亡したとされる。公式発表では1日当たりの新規感染者は数十人で、死亡者はいない。

西安郊外にある電気自動車(EV)会社で働く55歳のゼネラルマネージャー、ホ・クンさんは「全員を安全にするための措置だということは分かっている。1カ月程度ならいいと思うが、それが半年続くとなると、誰もが職を失い、企業は閉鎖に追い込まれるだろう」と語る。 

西安でのコロナ検査(2021年12月29日)

厳密に言えば、中国は何カ月も「ゼロコロナ」の状況ではない。

新たな変異株が出現するたび、習近平政権と世界経済へのリスクは高まる。

ユーラシア・グループは中国のコロナ戦略失敗を2022年の最大リスクとして挙げている。中国はオミクロンとその後の変異株を完全に防ぐことができず、ロックダウンが広がり、サプライチェーンの混乱が続くと同社は予測。 

「低成長と高インフレ、不平等拡大が行政に対する人々の不満を増幅させ、1990年代以降見られなかったような政治不安をかき立てる」との見方を示した。


中国でもオミクロン株感染が広がる 

西安でのPCR検査(2021年12月23日) 


4回のロックダウンで計74回検査した2歳児も

 中国では武漢から始まったコロナ第一波が終わると、感染者数はゼロ付近でいったん落ち着いたが、昨年5月にデルタ変異株の感染者が国内で見つかると完全排除は難しくなった。

感染が拡大していたミャンマーと国境を接する雲南省の町、瑞麗では国境沿いに鉄条網が設けられたほか、7カ月で4回のロックダウンが行われた。こうしたコロナ対策で多くの中小企業は廃業。住民は例外なく頻繁に検査を受けており、地元メディアによれば、合わせて74回検査した2歳児もいた。

ワクチン接種率約97%の瑞麗は21年にコロナで死亡した住民はいなかったと報告。

瑞麗の元助役で今は国有鉄道建設会社の幹部として働いているタイ・ルォンリ氏は「どんなロックダウンも深刻な精神的、物質的損失だ。コロナとの闘いは全て、不幸を重ねることになる」とソーシャルメディアに投稿した。

中国で10番目に大きな都市である西安は昨年12月、デルタ株の感染症例に見舞われたが、当局の対応が新たな怒りを招いた。

食料品の買い出しを禁止した行政側が住民に食料を届けることができなかったためだ。

たばこをインスタントラーメンなど常温保存食品に住民同士で交換し合う場面も見られるようになり、ある女性は生理用品を購入するため外出を許可するよう当局に涙ながらに訴える動画を投稿した。


2人の妊婦はコロナ対策の決まりだとして入院を拒否され流産。コロナ検査を受けていなかった60代の男性は幾つかの病院に受け入れを拒まれ、心臓発作で亡くなった。検査を受け陰性と判定されたときには手遅れだった。

こうしたことは全て、オミクロン株出現前の出来事だ。オミクロン株はまず、北京に隣接する天津で確認された。

それから中国中部の安陽で、次に東北部の港湾都市である大連に広がった。

天津市は市全体のコロナ検査を命じ、企業と役所を半日閉鎖した。トヨタ自動車とフォルクスワーゲン(VW)はコロナ検査のため工場の操業を止め、天津に航空機組み立ての拠点を置くエアバスも、中国での生産と需要に対するオミクロン株の影響について警告した。 

今はオミクロン株感染が北京と上海、深圳で報告されている。

中国で最大の旅行シーズンである春節(旧正月)が迫るが、地方当局は住民が管轄区域を離れた場合、コロナ規制で戻れなくなる可能性があると警鐘を鳴らす。

感染が確認された地域では公共交通機関が止まり、コロナ検査義務で厳しい寒さの中でも長蛇の列ができている。 

行政側や医療従事者の負担も大きくなっており、ストレスと長時間労働で気を失った者もいる。

河南省安陽県(1月13日) 

公務員やボランティアが西安住民に食料品などを届ける準備をしている(1月12日) 


コロナ感染拡大させたと懲役刑

当局に対する不満は募るばかりだが、じっとしている以外に国民にできることは今のところほとんどない。

規則に違反すれば一段と厳しい処分を受けるようになっている。

先週3人に4年余りの懲役刑が言い渡されたが、その理由は中国政府によれば、コロナ感染を拡大させたためだ。

西安のEVメーカーに勤めるホさんは「事態の推移を見守り、規則に従い続けるだけだ」と言う。

ロックダウンは重要部品の入手困難を意味する。感染確認地域に配送して拘束されることをトラック運転手が恐れているためだ。ホさんの会社は先月と今月、生産・販売目標を達成できなかった。

「中国で事業を行うなら、この国の法律に従う必要がある」とホさんは話す。 

原題:Xi’s Covid Zero Tactics Get Weaker as Omicron Spreads in China (2)    (抜粋)

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著者:Thomas W Murphy、Dong Lyu、Valentina Fuentes


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