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トンガ海底火山の巨大爆発

2022.01.17

トンガ付近の海底火山「フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山」が日本時間15日13時ごろに1000年に1度の巨大爆発を起こし、日本や米国などの沿岸部では「津波」に似た潮位の上昇が起きた。気象庁によると、フンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の噴煙高度は約1万6000メートルにまで達し、日本列島の太平洋沿岸部全域にわたって「津波警報」「津波注意報」が出されたが、一連の津波警報・津波注意報は16日14時にすべて解除されている。



「今回も遠い南の島の噴火か」と安心してしまった日本国民も多かったのかもしれないが、今回の噴火によって「ある懸念」が現実のものとなる可能性がでてきた。それが、「南海トラフ地震」と「伊豆・小笠原海溝アウターライズ地震」である。

 

* 衝撃波による気圧の変化と「南海トラフ地震」

今回のトンガ噴火により、日本でも「衝撃波」の影響で気圧の変化が観測されたという。

ウェザーニュースが公表した動画 がその衝撃を物語っている。 

image by: 気象庁 

南海トラフ巨大地震の震度分布

これだけの衝撃が世界各地で観測されたということは、地震を起こす各地のプレートや海中の火山帯にも何らかの刺激が与えられたであろうことは想像に難くない。

しかも、このタイミングで噴火の2日前にあたる13日、政府の地震調査委員会が驚きの発表をしている。

 それが「南海トラフ巨大地震、40年以内の発生確率「90%程度」に引き上げ」という、東京大学名誉教授の平田直委員長の会見だ。 

同委員会は南海トラフで今後40年以内にマグニチュード8から9級の地震が発生する確率を、前年の「80~90%」から「90%程度」に引き上げたのである。 


そして今回のトンガ大噴火である。この衝撃により、地震の発生時期はむしろ早まった可能性さえあるのだ。

40年以内とは、明日かもしれないし39年11ヶ月後かもしれない。いずれにしても遅かれ早かれ、南海トラフで巨大地震が起きる可能性は今回の会見で「100%」により近づいたのである。13日の会見で平田委員長は「日本は世界的にみて地震が起きやすい場所だ。どこで起きてもおかしくないので備えを進めてほしい」と呼びかけた。

 

小笠原海溝とアウターライズ地震 

また先日、東京・小笠原沖で発生した地震を覚えているだろうか?

4日、東京・小笠原村の父島近海で午前6時8分頃、マグニチュード(M)6.1、深さ77km、最大震度5強の地震が観測された。

この震源地よりも本州寄りで、同じく「伊豆・小笠原海溝」沿いの鳥島(東京都青ヶ島村)近海では2021年12月ー2022年1月現在、過去に例がないほどの群発地震が頻繁に発生している。

Hi-net自動処理震源マップより。画像中央が鳥島近海で発生している群発地震を観測したもの。

下部の黄色い円が4日に発生したM6.1

独立行政法人防災科学技術研究所(NIED)が公表している、気象庁一元化震源要素(2日前以前)および Hi-net地震観測システムによる自動処理結果(前日・当日)の震源要素を使用して作成された「Hi-net自動処理震源マップ」によると、ここ30日間で鳥島近海で群発地震が発生していることがわかる。 つまり4日に発生した小笠原村震度5強がトリガーとなって、鳥島近海の伊豆・小笠原海溝でアウターライズ地震が発生する可能性、あるいはその前兆である可能性が出てきたのである。 

アウターライズ地震とは、海溝の外側付近でおきる地震のことを指す。この「アウターライズ」とは、海洋プレートが折れ曲がって海溝から沈み込む際にできる隆起帯を指し、その部分を震源域とする地震を「アウターライズ地震」と呼んでいる。この鳥島近海で群発地震が起きているエリアは、伊豆・小笠原海溝のアウターライズ(外側)にあたり、もしこのエリアでM8クラスの地震が発生した場合、東日本大震災で発生したものと同規模の巨大な津波が発生し、房総半島や東京湾、伊豆半島などの関東周辺から南は九州まで津波被害が出る可能性がある。


* 地質学者「マリアナ諸島は沈没するかもしれない」

2020年8月、地質学者の「日本沈没」に関する可能性について学会発表された論文に関する記事を公開したが、その中で「今後、マリアナ諸島は沈没するかもしれない」という仮説を紹介した。

今回のトンガ大噴火からそう遠くはないマリアナ諸島付近のプレートで、何らかの変化が起きている可能性もあるだろう。

 【関連】地質学者が懸念する「令和関東大震災」と日本沈没の可能性。首都直下地震は近いのか?

「1500万年前の日本海拡大は、横臥スラブの先端が下部マントルに崩落したことで起こったと考えています。今後、マリアナ海溝域の横臥スラブの先端が崩落すれば、マリアナは沈没するかもしれません」(新妻名誉教授)

これはあくまで新妻氏による仮説だが、今のところマリアナ海溝で横臥スラブの先端が崩落すれば沈没の可能性があると見ているようだ。万が一、この沈没が起きれば、すぐ北に位置する日本にも地震や津波などの大きな影響が出るに違いない。

4日の小笠原周辺の地震発生により、日本近海では今後何が起きても不思議ではないのかもしれない。

ドラマの中で描かれたような「日本沈没」は無いにしても、3.11で多くの被害を出した津波地震の脅威がまだ完全に払拭されたわけではない。 

* 思い起こされる3.11直前の「クライストチャーチ地震」

昨年2021年3月5日の日本時間午前4時28分頃、ニュージーランド沖のケルマデック諸島でM8.1の巨大地震が発生したことを覚えている人は少ないだろう。この地震の場所こそ、今回のトンガ大噴火のすぐ南西のエリアで発生していたのだ。このエリアの地殻変動は約10ヶ月前から始まっていたのかもしれない。

 ニュージーランド周辺の地震と聞いて思い出すのが、あの東日本大震災発生の17日前に起きた、2011年2月22日にニュージーランドのカンタベリー地方で発生した「カンタベリー地震」(通称:クライストチャーチ地震)だ。この地震で日本人留学生ら28名が命を落としたことを記憶している人も多いだろう。 

カンタベリー地震 (2011年)-Wikipedia

 この地震のわずか17日後に、東北沖でM9.0という日本周辺における観測史上最大の地震「東日本大震災」が発生したことで、ニュージーランド周辺の地震と日本付近の地震発生が連鎖している可能性を唱えている地震学者も多い。

今後も、遠方の地震とたかをくくることなく、日本および太平洋周辺の地震や噴火に注意を払う必要があるだろう。




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