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新型コロナウイルスに殺傷効果を持つ記憶免疫キラーT細胞


-体内に存在するもう一つの防御部隊-

風邪を記憶、新型コロナにも 「キラーT細胞」が交差反応―治療法に応用期待・理研〔時事メディカル〕

 

 風邪の原因となる季節性コロナウイルスに感染した経験がある人が新型コロナウイルスに抵抗性を示す「交差反応」は、季節性コロナに感染した細胞を排除した記憶を持つ「キラーT細胞」が担っている可能性があることが実験で示された。

理化学研究所の清水佳奈子上級研究員や藤井真一郎チームリーダーらが9日までに、国際科学誌コミュニケーションズ・バイオロジーに発表した。

 交差反応が起きる割合は不明だが、藤井リーダーは「新型コロナの日本人の感染者数や重症化の割合が欧米より少ない一因ではないか」との見方を示している。「ワクチンで抗体が増えない場合の治療法開発を期待できる」という。

 ウイルスが体内に入った場合、まず抗体が取り付いて細胞への侵入を防ぐが、防げずに感染してしまった細胞はキラーT細胞が壊して排除する。感染した細胞の表面には「ヒト白血球型抗原(HLA)」と呼ばれるたんぱく質があり、ウイルスの目印となる部位を「抗原決定基」としてキラーT細胞に示すと、同細胞が反応して壊される。

 清水上級研究員らは、新型コロナウイルスのスパイクたんぱく質について、日本人に多いタイプのHLAが、キラーT細胞に対する目印にしやすい部位があるか調べ、最も目印にしやすい部位を特定。4種類ある季節性コロナウイルスのスパイクたんぱく質にも、この部位とアミノ酸配列が非常によく似た部位があり、キラーT細胞が同じように反応することを細胞実験で確認した。

(2021年12月9日 時事メディカル)


 ☞  2021.12.08  理化学研究所 プレスリリース 

      動画解説アリ

 

交差反応性T細胞のSARS-CoV-2感染に対する役割                                (出所:理化学研究所)

日本人のCOVID-19感染者数や死亡者数の割合は、欧米と比べて低いことが知られていますが、その根拠は明確ではありません。

 この理由を探るため、本研究では日本人に多いタイプのキラーT細胞が認識する抗原部位を探索し、実際に多くの人が反応する部位を同定することに成功しました。

 また、SARS-CoV-2に対する記憶免疫キラーT細胞の反応が、日本人では季節コロナウイルスとの交差反応性が高いことが分かりました。一方で、一部のがん患者(造血器腫瘍患者)では交差反応しにくいことも判明したことから、感染予防のためにはさらなる解析が必要です。



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