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社長の持っている「暗黙知」を、業務承継先の会社が恐れているワケ

2021.11.04

業務承継をする場合、社長は1年以内に退職となることが多く、その前に譲り受ける側として確認しておかなければならないことは沢山あります。

現役税理士の今村仁さんが、承継する、される前の準備について詳しく紹介。

 



* 暗黙知を形式知に変える

■ 承継後に社長は退社

小さな会社の場合、社長が営業を行い、入金や請求書発行など経理の一部も行い、更に商品開発まで行っているケースはよくあります。

承継後は、従業員はそのまま継続となることが多いですが、社長は1ヶ月から1年以内には実質的な退職となることが多いです。つまり、社長は、承継後は最終的にはいなくなります。

「暗黙知」を「形式知」へ

よく譲り受け側の方とお話ししていると、「社長がいなくても回る会社ですか」と聞かれます。

小さな会社でそういう会社は少ないですが、近づけることは出来ます。

要は、譲り受け側の要望は、社長がもっている「暗黙知」をきちんと譲り受け後に承継出来るのかということが心配なのです。

■ メモ書きのススメ

であれば、社長の「暗黙知」を「形式知」に置き換える作業として、「メモ書き(マニュアル)」を作成していくことをお勧めします。

小さな会社でここまで出来ている会社は、現在非常に少ないので、譲り受け側に好印象となり、結果的に良い条件で引き継いでもらえる可能性が高まるでしょう。

暗黙知とは、個人の過去の経験から成り立つ主観的な知識、又は言語化されていない知識のことです。

形式知とは、主観的な知識を文章や図を活用して言語化したもので、客観的なものです。

 

* 簿外負債は事前開示がミソ

「退職金負債」と「社会保険未加入負債」

貸借対照表の右上に計上されているのが「負債」ですが、譲り受け側が一番気にする項目といっていいでしょう。

何を気にするのかと言うと、貸借対照表に計上されている買掛金や借金ではなく、計上されていない「簿外負債」があるのかどうかという点です。

小さな会社でよくある簿外負債は、「退職金負債」と「社会保険未加入負債」

退職金規程があれば、その計算式にのっとって現時点で既に発生している退職金額を概算把握しておき、譲り受け手に事前に伝えておくべきです。

また、会社であれば社会保険への加入は必須ですが、残念ながら未加入の会社も現実的には存在しています。

この場合、そのことを事前に伝えておくべきでしょう。

承継後に、譲り受け側が国から追加徴収される可能性があるからです。

 

■ 簿外負債の事前開示が第三者承継成功のカギ

これらがもし譲り受け側との交渉途中で、譲り受け側により発覚したような場合は、多分その多くの交渉はブレイクとなるでしょう。つまり、破談です。

譲り受け側の心理としては、「他にも簿外負債があるのではないか」と疑心暗鬼になるからです。

株式譲渡で会社を承継した場合、承継後は、上記の簿外負債だけではなく、会社への訴訟案件やそれにまつわる損害賠償請求など、基本的には全て譲り受け側が責任を負うことになります。

そのため、簿外負債の事前開示は、第三者承継成功のカギといえるのです。

 

■ 人的保証や物的保証

また、負債で事前に確認しておくべきは社長個人が借入金やリースで個人保証しているかどうかや、自宅などの物的保証をしているかどうかです。

可能であれば、第三者承継手続きに入る前に、これら保証を外しておくのがベターですが、そうもいかないことが多いでしょう。

この場合、これら人的保証や物的保証を一覧にしておき、「人的保証及び物的保証を外すことが承継の条件です」と、事前に譲り受け側に開示しておく必要があります。




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