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ワクチン「3回目接種」の前に絶対してほしいこと


打つならばどんなことに気をつければいいのか

志賀 貢 : 医学博士、臨床医

2021年10月29日

日本でも、早ければ12月には開始すると見られる3回目のコロナワクチン接種。

 果たして、本当に安全なのか。打つならば、どんなことに気をつければよいのか。


* 厚労省が認定したコロナワクチンの健康被害

 日本でも3回目のワクチン接種が話題になりはじめたころ、NHKラジオは2021年8月20日の深夜、「厚労省は19日、ワクチン接種後29人のアナフィラキシーなどの重篤な副反応を認め、治療に当たっては公的資金の適用を認めた」旨のニュースを流しました。 それが私の聞いた第一報で、その後、ネットやほかの報道でも、次々とその内容は詳しく伝えられました。

厚労省には、41人の接種者から補償を求める申請書が提出され、同省・審議会で審査した結果、29人がアナフィラキシーなどの重篤な副反応に該当することを認めたというのです。残りの12人は引き続き検討中だということです。

副反応確認後の治療、療養に当たっては、予防接種法の規定に従って補償されるようです。

これは、2月17日にワクチン接種が始まってから初めての予防接種法適用症例だということですが、その後、9月13日には新たに37人の認定を発表し、合計66人の健康被害を認めた結果になっています。

イギリスやアメリカでは、ワクチン接種についての死亡例が詳細に報告されてきました。

日本でも厚労省の9月3日の集計では、ワクチン接種後の死亡例が、1155人、報告されています。

 しかし、これらの死亡例の中で、この約6カ月の間に1人もワクチンと因果関係のある死亡例はないとされています。

このたび、ワクチンの副作用としてもっとも恐れられているアナフィラキシーや、アナフィラキシーショックの症例が66人も出たことで、ワクチンの副作用についての解明が欧米並みに進むのではないかと期待されます。

ワクチンには、光と影の部分があり、尊い命を病魔から守るというすばらしい効能がある一方で、命を脅かす副作用があることも事実です。 この諸刃の剣としてのワクチンの特性を熟知した上で、打つか打たないかの決断を下すことになります。

 イギリス、オックスフォード大学は、2021年8月12日、ワクチン接種後の血栓症の発症について次のように発表しました。

それによると、3月下旬から6月上旬までの約2カ月の間で、ワクチン接種後に血栓症を発症した人が220人いました。

そのうちの22%に当たる49人が死亡しました。死亡者のほとんどは、20代から40代の若い女性に集中しています。

大学の研究チームでは、血栓症の発症率は、50歳以上で10万人に1人、50歳未満で5万人に1人と推計しています。

死亡者には、これといった病歴がなく、ごく普通に生活していた人が、ワクチン接種後に発症しています。

イギリスとしては、自国の製薬会社アストラゼネカの製品での死亡事故であり、今後のワクチン接種に慎重な姿勢を示していて、40歳以下の女性にはワクチン接種を推奨しない方針を固めたようです。このデータは、8月12日の公表後、アメリカの医学誌『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』に掲載されました。

 

* ワクチンを半分に減らしても効果は同じ?

2021年9月5日、世界のワクチン製造の製薬会社から、ワクチン接種に関する歓迎すべき情報が公表されました。

それによると、ワクチンの用量を2分の1に減量しても、その効果は変わらないことが治験(臨床試験のこと)で確認されたといいます。これは、接種を受ける人にとっては大ニュースです。

なぜなら、ワクチンによるアナフィラキシーや突然死の危険を減少させることが期待できるからです。

 アメリカ・モデルナ社の発表によると、2回のワクチン接種を各々今の標準用量の2分の1に減少させても、抗体の産生が変わらないことが明らかになりました。

 イギリスのアストラゼネカ製のワクチンでは、1回目に今の標準の接種用量の2分の1に抑え、2回目には今と同じ標準の用量を接種してみた結果、その効果は変わらないことを確認しました。感染予防効果は90%あることが、治験データの分析で明らかになったといいます。つまり、モデルナワクチンでは今の標準接種用量の2分の1で済み、アストラゼネカワクチンでは今の標準用量の3分の1でいいことになるわけです。

この結果、2つの大きな効果が期待できます。

その1つは、ワクチンの副作用や死亡事故を、今以上に減少させることができることです。

2つ目は、世界の集団免疫の促進に役立てることができることです。

イギリスのオックスフォード大学の研究者を中心とする研究班の調査によると、1回以上ワクチンを接種した人の割合は、アジア地域では45%、欧米の諸国では55%ですが、アフリカの地域ではわずか5%にとどまっています。このワクチン供給の格差を早急に是正しないと、地球規模でのコロナを撃退するための集団免疫が、なかなか実現しなくなります。

ともかく、1日も早いコロナ感染の終息を迎えるためには、このワクチン格差をなくさなければならないと、WHOは世界に警告を発し続けていますが、その意味でも、このワクチン接種量の減量は歓迎すべき情報と言えるでしょう。

 

* 抗体が低下しても、重症化はしにくい

ワクチン先進国のイスラエルでは、2020年の12月から21年の8月までの間に、約67%以上の人が2回のワクチン接種を受けました。その結果、接種者の感染予防効果は95%に達しました。

ところが7月から8月にかけて、抗体が39%に一気に低下しました。そこで、政府はあわてて3回目のブースター接種を行うことを決定し、すでに開始されています。

ところが、これだけ抗体が減少しているにもかかわらず、20年12月に接種した約80%の国民重症化予防効果は、90%であることがわかりました。

このイスラエルの統計が示す通り、いったん体内にできた抗体は、かなり強力なウイルス感染に対しても、体を守る役目を果たしてくれることがわかります。

したがって、3回目のブースター接種が多少遅れても、すぐ命に関わるような状況に陥ることは考えにくいのです。

そこで私は、3回目以降のワクチンを受ける前には、必ず抗体検査を受けることを強くすすめます。

もし体内に抗体が約40%残っていれば、急き立てられるようにワクチンを打つ必要はありません。

抗体検査は、今ではかかりつけ医や他の医療機関でも簡単にできます。

1回の費用は実費で1800円ほどです。かかりつけ医であれば、おそらくこの価格で調べてもらえると思います。

他の医療機関でも、まだ保険はききませんが、若干の診察料や手技料を支払えば検査は可能です。

慢性疾患として糖尿病を患っている人は、コロナ感染を受けやすく、また感染すると重症化しやすいとも言われています。

したがって、国の方針としては、血糖値の高い人はワクチンを打つべきだという方針ですが、合併症などがある場合には慎重を期さなければなりません。

 

* 数値が正常に戻らない場合は?

そのワクチン接種の目安になるのが、ヘモグロビンA1c(エーワンシー)という指標です。

ヘモグロビンは、血液中のブドウ糖と結合してグリコヘモグロビン(糖化ヘモグロビン)という形として血液中に存在しています。ヘモグロビンの中でこの糖化したものがどれくらいあるかを示すのが、ヘモグロビンA1cという指標です。

糖尿病になると、この糖との結合の度合いが激しくなり、ヘモグロビンの中のA1cが急増していきます。

この物質が、糖尿病の進行状況を測定する目安として使われているのです。正常値は5.9%以下です。

それが糖尿病予備軍になると6.0〜6.4%の範囲内で変動します。そしてさらに6.5%以上になった場合には、治療を必要とする糖尿病の可能性があるので、食事療法や薬物治療を行うことになります。

ヘモグロビンA1cが、8とか10%など異常に上昇している場合には、数値が正常値に下降するまで治療した上で、ワクチン接種を受けたほうが無難かもしれません。

いつまでも値が正常に戻らないときには、かかりつけ医の指導を受けるべきです。

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