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いまだ支持伸びぬ野党が魅力取り戻す3つのカギとは


密着取材の映画が反響呼んだ小川淳也氏が語る

 10月31日投開票の衆院選に際しては、与党も野党もばらまき的な公約を並べた。

持続可能な日本を構築するため、国民に負担増を求める政党が政権を担うことは不可能なのか。 衆院選で、平井卓也・前デジタル相(自民党)との激戦が話題となった香川1区の小川淳也・前衆議院議員(立憲民主党)は、「将来的には北欧型に近い社会に」が持論だ。

2020年の公開の映画『なぜ君は総理大臣になれないのか』で注目を浴びた小川氏が、総選挙後の政治の課題を語った。(インタビューは10月12日に実施)


若い世代ほど「高負担、高福祉」の傾向が強い

 立憲民主党は消費減税をうたっており、私もその必要性は理解している。

しかし、長期的には法人税や所得税の累進性回復、相続税や消費税なども含め、北欧型の税制改革を議論せざるをえない。

これは財務省的な財政収支偏重論に立ったものではない。

社会全体を持続可能な形にソフトランディングさせるための、政策の全体像を踏まえた取り組みだ。

負担と受益に関して、ある思考実験をいろいろな人に提示している。

あくまで極端な例として聞いてほしいが、例えば消費税と反対給付を単純化して、「消費税ゼロ&ベーシックインカムゼロ」から「消費税100%&ベーシックインカム毎月10万円。ただし医療・保育・教育・介護など社会福祉すべて無償かつ社会保険料負担ゼロ」まで選択肢を設けて選んでもらう。

これまで圧倒的多数が選んだのは後者、つまり「高負担、高福祉」の選択肢だ。かつ若い世代ほどその傾向が強い。

つまり、みんな負担が嫌なのではなくて、税を預ける政治に信頼が置けないということなのだ。

立憲民主党の国会議員として、2009~12年の民主党政権が未熟さ、稚拙さもあり3年で倒れたことは、国民に対して今でも申し訳ないと思っている。

国民が民主党にがっかりしただけならまだよかったが、政治そのものにまでがっかりしてしまった可能性がある。

民主党が政権を奪った2009年8月衆院選は、投票率が69.28%と近年類を見ない高さだった。

だがその後の衆院選は、投票率が3回とも50%台にとどまっている。

有権者の約20%に当たる約2000万人が、投票所から足の遠のく結果となってしまった。

中村喜四郎・前衆議院議員(立憲民主党)が国民の政治への関心の低下について、「安倍晋三政権は、国民を諦めさせることに成功した史上初の政権だ」と言っている。投票率を見ると、まさに中村氏の指摘が的を射ていると思える。

 

政権政党として再び認められるために必要なこと

野党が魅力を取り戻すにはカギが3つある。

1点目無私・無欲の姿勢だ。

経済が低迷する中、拡大成長期のように「パイの分配が政治の仕事」とは言えない時代になっている。

昭和の政治のように権力を私物化し、選挙区にパイを分配することは難しい時代だ。

厳しい時代だからこそ、政治家自らが無私・無欲の姿勢で政治に取り組まなければならない。

自民党の長期政権が権力を私物化した。

では一方の野党は無私・無欲の姿勢なのか、という有権者の問いかけに応えなければならない。

2点目はやはり政権時代の真摯な反省と総括だ。

民主党が政権を担った3年間について、何を反省しどのように総括し、それを今後どのように生かすのか。

その答えを国民に明確に伝えないと、聞く耳を持ってもらえない。

現実に10年近く経ってもなお、野党の支持率は上がらない。国民の傷は癒えていないと考えるべきだ。

3点目政策だ。

人口減、低成長、財政悪化、気候変動といった、歴史上経験したことのない構造問題に日本や世界は直面している。

このような大きな問題にどんな政策で臨むのか、体系立った全体像を国民に示す必要がある。

 この3点がそろわないと、政権政党として野党が再び認められることは難しい。

長期的には、日本の最大の問題は人口減少と高齢化だ。年間40万人の人口が減っており、やがて年100万人減のペースになる。また高齢化率も29.1%(2021年)が40%にまで上昇し、そこで天井を打つ。

人口減と高齢化を前提に社会の構造を大きく組み替えないと、財政危機、極端な円安、インフレなど多大な犠牲を払うハードランディングが避けられない可能性もある。

(日本が経験したハードランディングである)太平洋戦争の時代を振り返り、日中戦争や日米開戦といった不可逆的な危機を避け、ソフトランディングできる可能性はなかったのか、歴史のイフを考えることがある。

 今後の日本も、社会全体が持続可能性を回復しソフトランディングできるよう、政治家、政党はあらゆる不都合を包み隠さず国民に説明して、対話と説得に努めるべきだ。

全体的な構造問題に触れずに、成長戦略や少子化対策といった単体だけを議論しても、国民が暮らしの不安から解放されることはない。


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