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コロナ禍どさくさで電気料金「爆上がり」のナゼ

元国税が暴露する大幅値上げのウラ事情

2021.10.19

 日本全国の家計を直撃している、電気料金の値上げ。

その原因としてLNGの高騰などが上げられていますが、事はそう単純ではないようです。

元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、信じられないほどいい加減に運営されている電力事業の実態と、それでもメディアが一切批判的に報じない理由を暴露。その上で、電力会社の宣伝広告費と役員報酬に厳しい制限を設けるべきとの提言を記しています。



* 電気料金爆上がりの謎

実はこの1年間で、電気料金が爆上がりしているのをご存じですか?

この11月も値上げが決定しており、平均的家庭の年間の値上がり率は各社とも10%を超えています。

東京電力などは17%も値上がりしているのです。

この値上がりについて昨今の報道では「液化天然ガスなどの燃料の高騰による」されています。

確かにこの数か月の値上がりについては、燃料の高騰が原因です。しかし、燃料の高騰は10%以上の値上がりのほんの一部分に過ぎません。値上がりの最大の理由は、再生可能エネルギーへの転換費です。

電力会社は再生可能エネルギーへの転換が義務付けられており、その費用を今年から電気料金に上乗せすることになっていたのです。つまり、電気料金の値上げは、最初から決まっていたことなのです。

消費者から見れば、新型コロナのどさくさに紛れて、電気料金を値上げしたような感じがします。

いや、実際にどさくさに紛れて値上げしたというのは本当のところかもしれません。

10%以上の値上げというのは相当なものです。本来ならもっと文句が出てもいいはずです。

が、世間が新型コロナに気をとられており、電気料金のことにまでなかなか目がいきませんでした。

そもそも日本の電気料金というのは、非常に不透明というか、曖昧な方法で決められています。

電力料金は、電力会社が勝手に決められるものではありません。

電力会社が政府に申請し、政府が認めた料金が、電気料金ということになります。

しかし、この電気料金は、事実上、電力会社の言い値になっているのです。

そして、その算定基準はというと「総括原価方式」という方法が採られています。

これは、電力会社が、税金、燃料費、人件費設備取得費用、株主への配当金なども、費用として算出し、これを「電気料金の原価」ということにします。

電力会社は、どれだけ設備投資をしても、人件費をかけても、必ずそれを支払えるだけの料金設定がされるのです。

つまり、電力会社というのは、かかった費用が必ずペイできるような仕組みになっており、どれだけ費用をかけてもいいという特権を持っているのです。もちろん、政府もある程度は監視します。しかし、電力会社のような巨大組織の経費について、いちいち細かい査定は不可能です。だから、ほぼ電力会社の要望通りの額が、電気料金として認められることになります。

先にご紹介した関西電力の裏役員報酬なども、国のチェックをすり抜けて原価として計上され、電気料金に上乗せされていたわけです。

 

* 莫大な広告費で批判を封じ込める

電力会社は、高い役員報酬など批判されるべき点は多々あるのですが、あまりメディアで批判されることはありません。

それは、電力会社が莫大な広告費を使っているからです。

この電力会社の広告費は、福島第一原発事故のときに世間から批判されました。

福島第一原発の事故が起きる前の2011年3月度の決算によれば、電力会社10社の広告費の合計額は866億円でした。

これは日本最大の民間企業トヨタの約2倍です。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌にとっては、電力会社は「超VIP」ということになります。

もちろん、電力会社の批判などはそうそうできるものではありません。

そして電力会社は、原発の安全性を大々的にPRしてきました。そのあげくに、福島第一原発の事故が起きたのです。

そのため、福島の原発事故以降は、いったん、電力会社の広告費は減少しました。

しかし、最近になってまた電力会社の広告は増えてきており、ほぼ福島原発事故前の水準に戻っています。

だから、電気料金の値上げについても、批判するメディアはほとんどなかったのです。

 

* 非常に割高な日本の電気料金

日本の家庭用の電気料金は、先進5か国の中ではドイツに次いで2番目に高くなっています。

が、ドイツの場合は、発電に使うエネルギーの40%以上が再生可能エネルギーという環境大国です。

日本の場合、再生可能エネルギーの割合は20%にも達していませんので、その差は明らかです。

また産業用の電気料金の場合、日本は先進5か国の中では、もっとも高いのです。

産業用の電気料金は、電力全体の約半分を占めるので、日本の電気料金は実質的に先進5か国の中でもっとも高いということになります。高い電気料金の割には、日本の電力インフラはまったく整っていません。

たとえば、先進国の大半で電線は地中に埋めていますが、日本では未だに電柱で通しています。

先進国の中で、これほど電柱があるのは日本だけなのです。

国土交通省の発表データによると、先進国の「無電柱化」は次のようになっています。

ロンドン    100%

パリ      100%

ハンブルク   100%

香港       95%

台北       95%

シンガポール   93%

ニューヨーク   83%

ソウル      46%

ジャカルタ    35%

東京23区      8%

大阪         6%

これを見ると、先進国はおろか香港や台北でも、ほぼ無電柱化が達成されているのです。

隣国のソウルでさえ、46%も進んでいるのです。東京の8%、大阪の6%というのは、異常に低い数値です。

地震や台風が頻発する日本こそ、無電柱化をどこよりも進めなくてはならないはずなのに、この体たらくはどういうことでしょう? 無電柱化の推進というのは、阪神淡路大震災のころから言われていました。

が、30年経っても、まったく進んでいないのです。

無電柱化の費用は、国と自治体と電力会社が負担することになっていますが、高い電気料金を取っているのだから電力会社が率先して負担していいはずです。

その一方で、電力会社の役員報酬は非常に高いのです。

たとえば、先ほどご紹介した関西電力の会長の役員報酬は7,500万円です。これは民間企業であってもかなり高い部類に入ります。これが純然たる民間企業の役員報酬であれば、まあ業績に見合っているのならばいいでしょう。

しかし、日本の電力会社の場合、実質的に経営努力はしなくても利益は上げられますし倒産の心配もありません。

公的にがっちり保護された半公営企業です。いわば公務員のようなものです。

公務員では最高の報酬とされる総理大臣でも4,000万円程度なのです。

関西電力の会長は総理大臣の2倍近い報酬をもらっているのです。

こういう電力会社の汚点について、メディアが報道することはほとんどありません。

それは先ほども述べましたように、電力会社は莫大な広告費を使ってメディアを抑え込んでいるからなのです。

電気というのは、国民生活の基本中の基本のインフラですし、あらゆる産業の原価に関わってくるものです。

その電気事業が、信じられないほどいい加減に運営され、利権の温床になっているのです。

とりあえず、至急、電力会社の広告宣伝費と役員報酬に厳しい制限を設けるべきでしょう。

与党でも野党でもいいので早くやってください。


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