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元国税が指摘する「医療崩壊」のウソ。

病院のカネ儲け主義が日本を弱体化させる

2021.08.03

  2020年には100歳以上のお年寄りが初めて8万人を超えたものの、「世界一の寝たきり老人大国」などと揶揄されることも多い我が国。その数200万人とも言われますが、なぜこれほどまでに増加してしまったのでしょうか。 

元国税調査官として専門家の目線で紹介する「ギリギリまで節税する方法」や「最新の税金情報」等と並び、さまざまな社会問題をシビアな目で分析し考察する記事が人気の大村大次郎さん。今回、寝たきり老人を「量産」する日本医療界の闇を白日の下に晒しています。



* 国民を幸福にしない日本の医療システム

今までに何度かご紹介しましたが、日本の医療システムというものは非常にいびつです。

日本の病床数の約80%は民間病院にあります。国公立病院の病床は約20%しかありません。

これは先進国としては異常なことです。

ギリス、ドイツ、フランスなどの先進国ではほとんどが病床の大半は国公立病院なのです。

アメリカは国公立病院の病床数はそれほど多くはありませんが、しかし病床の大半は教会や財団などが運営する「非営利病院」です。そして、新型コロナで日本の医療は、欧米の数分の一、数十分の一しか感染者が出ていないのに、たびたび医療崩壊に瀕しましたが、この要因も「公立病院が少なすぎる」ことなのです。

大阪で医療崩壊が起き、日本で最悪の死者を出したのもこの「公立病院が少なすぎる」ことが大きな要因です。

大阪では、公立病院を「独立行政法人化」するなどで削ってきました。

「独立行政法人も公的な病院に変わりはない」と反論する方もいます。しかし、それは大きな間違いです。

確かに独立行政法人は、公的な補助を受けていますし、一定の公的な義務も負いますし、一定の自治体のチェックも受けます。

が、純然たる公立病院と違って、国や自治体が経営全般を担っているわけではありません。

原則として病院の経営は「独立行政法人」自身が責任を持つことになるのです。

だから「商売にならないことはしない」ようになるのです。むしろ体質としては民間病院に近いものなのです。

自治体の方も、経営の面倒を全部見るとお金がかかるから、「独立行政法人化」をしているわけです。

言ってみれば「生活の面倒を全部見る」のをやめて「一定の金額だけ渡すから後は自分でなんとかしろ」ということです。

独立行政法人病院側としても、自治体からもらっている補助金分の義務は果たしますが、それ以上のことはしないわけです。

経営優先にならざるを得ないのです。

新型コロナでも、純然たる公立病院であれば、自治体が指示すれば全面的に動きます。

しかし独立行政法人の場合は、自治体の命令を聞く義務はありませんから、経営の算段の方が優先されます。

新型コロナのようなリスクが高い患者は受け入れたくないのです。

そのため大阪は東京よりもはるかに人口が少ないにも関わらず、病床が不足し、入院できずに亡くなってしまう方が続出したのです。

 

* 医療は営利になじまない

ところで、なぜ日本で民間病院が多いのかというと、これも何度かご説明しましたが、日本では最強の圧力団体と言われる「日本医師会」という団体があるからです。

この日本医師会は医師の団体ではなく開業医の団体で、開業医の利権を頑強に主張してきて来たために、こうなったのです。

【関連】国民の命より開業医の利権。コロナで物言う日本医師会の正体とは

が、いくら日本医師会の圧力が強いといっても、政治がしっかりしていればこういう異常なシステムにはならなかったはずです。政府は、この数十年、公立医療を削減し、民間医療を増やすという政策を施してきました。

大阪の場合も、この国の方針をまともに実行したという面もあるのです。

国としては、財政赤字を減らすために金のかかる公的医療を減らし、民間の競争原理を導入し、医療費を削減しようというつもりだったのでしょう。

しかし産業の中には、営利を取り入れることによって発展する分野が多々あります。

というより、産業の大半は営利を取り入れた方が発展します。

しかし、営利を全面的に取り入れると人を幸福にしない方向に行く分野もあります。その代表格が医療なのです。

というのも、医療機関が「儲けること」を第一に考え始めると、非常にヤバいことが起きるのです。

「儲けること」の基本は、原価や労力をいかに少なくし、いかに売上を多くするかです。

医療がその方向に向かえば、とんでもないことになります。「楽して儲けられる患者をつくる」ということになるからです。

「治療にそれほど労力はかからないけれど治療費をたくさんもらえる」そういう患者を、医療機関が故意に増やすことになるのです。

だからこそ、欧米では公的医療機関の割合が高いのです。

民間病院の割合が高い日本の医療は、実際にそういうヤバい方向に行っているのです。

その最たるものが「寝たきり老人」です。

日本の医療機関では寝たきり老人などを増やして入院させ、多額の医療費を稼いでいることが多いのです。

 

* なぜ日本は寝たきり老人が多いのか?

実は先進国の中で日本は寝たきり老人が異常に多いのです。

日本では寝たきり老人が、200万人いると推計されています。

これほど、寝たきり老人のいる国は、世界中どこにもないのです。

というより、欧米の先進国では、医療機関などには「寝たきり老人」はほとんどいないのです。

日本が高齢者大国だということを考慮しても、この数値は異常値なのです。

そのカラクリも、せんじ詰めれば「医療の儲けの構造」につながるのです。

なぜ、日本にこれほど寝たきり老人がいるのか、というと、日本の医療現場では点滴、胃ろうなどの延命治療が、スタンダードで行われているからです。

自力で食べることができずに、胃に直接、栄養分を流し込む「胃ろう」を受けている人は、現在25万人いると推計されています。

これらの延命治療は、実は誰も幸福にしていないケースも多々あります。

寝たきりで話すこともできず、意識もなく、ただ生存しているだけ、という患者も多々いるからです。

親族なども、もう延命は望んでいないという場合であっても、日本の場合、一旦、延命治療を開始すると、それを止めることが法律上なかなか難しいのです。

想像してみてください。自分が、自力で食事も排泄もできず、意識もない状態でただただ体だけは機械で生かされ続けていることを。ほとんどの人は、そういう状況は嫌なはずです。

「自力で生きることができなくなったら無理な延命治療はしない」ということは先進国ではスタンダードとなっています。

日本がこの世界標準の方針を採り入れるだけで、医療費は大幅に削減できるはずです。

なぜ日本はそれをしないのでしょうか?

先ほども言いましたように、この延命治療が、医療の儲けのシステムの中に組み込まれているからです。

日本は民間病院が多いので、楽して高収入を得られる延命治療をしたがります。

そして延命治療で儲かっている民間の病院たちが政治家に圧力をかけ、現状の終末医療をなかなか変更させないのです。

新型コロナ禍では、症状が悪化しても入院できなかったり、入院できてもICUなどが不足し高度な治療を断念するケースも多々生じています。新型コロナなどリスクの大きい患者の受け入れなどは、民間病院はなかなかしたがらないからです。

その一方で、誰も幸福にしない延命治療が延々と続けられているのです。

日本の医療システムは、本当に助けてほしい時に助けてくれず、助けがいらないときに余計な助けをするのです。

 この「国民を幸福にしない医療システム」は根本的に改革しないとならないのです。


 【関連】戦犯は「橋下維新」。大阪のコロナ医療崩壊を招いた知事時代の愚策

 

なぜこれほど大阪では死者が多いのでしょうか?

はっきり言うと、橋下徹氏や「維新の会」の責任が大きいのです。

2008年に橋下徹氏が知事になってから、大阪府や大阪市は、行政の無駄を省くという号令のもと急激に公立病院を減らしました。市立病院を独立法人化したり、府立病院に統合したりして、大幅に病院施設の削減を図りました。

もちろん人員も大幅に削られることになります。総務省の統計によると、2007年の大阪府の公立病院には医者と看護師は8,785人いましたが、2019年には数半分以下の4,360人になっているのです。

ざっくり言えば、大阪の公立病院の「医療力」は、橋下氏と維新のために半減させられたといえるでしょう。この医者と看護師の数を半分以下にしたことが、新型コロナでの大阪の死者数の激増の最大の要因だといえるのです。

橋下氏は維新の会は、ぜひこのことについて明確に説明していただきたいものです。

また維新は、赤十字病院や済生会病院など、慈善事業系の病院の補助金も大幅にカットしました。

赤十字病院や済生会病院は、その地域の救急医療や感染症医療も担っていましたので、これも新型コロナの被害が拡大する要因となりました。現在、大阪は「新型コロナ対策の医療関係者が不足している」として、自衛隊や近隣府県から看護士を派遣してもらったりしていますが、何のことはない、自らが医療関係者の数を減らしてきていたのです。

公立病院や慈善系の病院は、感染症や救急医療などにおいて中枢を担うものです。

公立病院や慈善系の病院の戦力がダウンすれば、それはそのまま感染症対策や救急医療の低下につながるのです。

 

大阪のコロナ死者数を激増させた維新の責任。この医療崩壊は人災だ

新型コロナの第4波がひどいですね。特に、大阪は目も当てられない状況です。

大阪で目を引くのは、死者の多さです。下のように、人口当たりの死者数は、大阪が群を抜いています。

100万人あたりの直近7日間の死者数(5月15日現在)

大阪   28.0人

東京   2.6人

北海道  7.4人

全国平均 5.4人

大阪府は2021年3月1日以降は、全国の死者の20%以上を占め、4月以降は30%以上を占めています。

しかも2021年5月1日時点では、7日間の人口当たりの死者数が、インドやメキシコよりも多くなっています。大阪は「世界でもっとも新型コロナの死者が多い地域」となったのです。

感染症対策において、もっとも重要なことは「死者を出さないこと」です。

それを考えたとき、大阪はもっとも新型コロナ対策に失敗しているということがいえるはずです。

また大阪は医療を受けられないままに死亡した人が18人にも及びます。日本でもっとも医療崩壊が激しい地域だといえます。

よくSNSなどでは、「大阪は高齢者が多いから死者が多いのだ」という意見が散見されます。

が、これは的をはずしています。 

大阪は高齢者が多いといっても東京と比べて数%程度であり、これほどの死者の差が出るほどではないはずなのです。


人口当たり死者数はインドの1.5倍。ニュースが伝えぬ大阪の惨状

2021.05.13 

 by 山崎勝義『8人ばなし』

新型コロナの感染爆発が止まらず死者の火葬が間に合わないなど、インドの惨状が連日伝えられています。

現在の大阪はそんなインドより酷い状態にあることを示す恐ろしい数字が最近明らかになりました。

直近7日間の人口当たり死者数がインドを大きく上回っているのです。

山崎勝義さんは、こうした数字のインパクトとインドからの映像を正しく組み合わせて大阪の惨状を伝え、「わがこと」として受け止めさせるのがニュースの役割であると主張。この1年の政府の無策だけでなく、メディアの責任にも言及しています。

 

* 組み合わせのこと

数字というものは、比較対照の組み合わせ次第で随分と違って見える代物である。

このところ連日、インドにおける感染爆発の惨状がテレビなどで報道されている。

そういったニュースに触れるたび「何という現実か」とそら恐ろしくなっているのは自分だけではないであろう。日々増え続ける死者の数に火葬が間に合わず、どうしようもないので原っぱなどで死体を焼く。まさに地獄の沙汰である。

これに比べれば日本はまだまだましな方である。そう思ってそっと胸を撫で下ろす自分がいる。

インド16.5人

大阪 22.6人

この数字を見た途端に撫で下ろした筈のものが恐怖と驚きとともにムカムカと喉から口へと逆流してくるのを感じた。実はこの数字は5月8日時点での直近一週間における人口100万人当たりの死者数である。

データはWHOの調査をもとに札幌医科大学医学部附属フロンティア医学研究所ゲノム医科学部門が解析したものである。(※編集部注:11日現在の同解析値では、インド17.2人に対し、大阪府26.5人)

この数字の通りなら、人口比的にはインドよりも多くの人間が大阪ではコロナで死んでいることになるのである。この数的事実と前述のインドの惨状を合わせて考える時、日本の現状の深刻さがいやでも見えて来るのではないだろうか。しかもインドと大阪を比べた場合、公衆衛生観念、医療提供体制、環境要因等全てにおいて大阪が不利ということはとても考えられない。いよいよただならぬことである。

ニュースもただショッキングな映像を流すだけでなく、ただ驚くべき数字を羅列するだけでなく、こういった映像と数字を有機的に組み合わせて報道すべきなのである。

誰だってこの種のニュースはあまり見たいというものではないであろう。

それでもなお報道する価値があるとすれば、誰もがリアルに我が身とその周辺に置き換えて想像する、その一助となることである。

コロナは「ひとごと」ではなく「わがこと」である。インドの嘆きや叫びは大阪のそれと同じなのである。

変異株N501Yは、大阪を巨大中心核として波動し全国に周圏的に拡がって行った。

そして今、東京に最大の中心核が生まれようとしている。そう、東京にとっても「わがこと」なのである。二つの核から生まれる大波は干渉を繰り返してはまた繰り返し、やがては全国を丸呑みするほどにもなりかねない。くれぐれも「わがこと」として身を慎みたい(つまりは身を守りたい)ところである。

残念ながら政府は当てにならない

5月10日の総理の国会答弁を見て確信した。おそらくワクチン接種の一重一段構えでそれ以外は無策であろう。東京五輪に関しても行き当たりばったりである。

それにしても、今さらではあるが国民に対して1年以上もの間、ただただお願いしかできない政府とは何とも情けない限りではないか。実際やっていることはこの1年というもの全くと言っていいほど変わっていない。 

それどころか下手をすると悪くなっている。そろそろ忍耐も限界である。

こう感じるのはおそらく自分だけではないであろう。



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