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部屋に引きこもる息子を工場で働かせた結果


常人であれば「説得」してしまいがちなところを、「自分で納得した上で始めさせる」という、「これぞ成功者の教育」と感じたエピソードを紹介。

無理強いされたことが長続きしないのは、ある意味当然。言葉を尽くされ説得され始めたことに関しても、あまり身が入らないというケースもよく聞く話ではないでしょうか。

 

*幸せな成功者は、説得せずに納得させる?!

ヴァンクーバーから飛行機で約3時間、カナダ中部の街ウィニペッグ。

訪問したのはまだ11月中旬だったのに、空港に到着すると外はすごい吹雪です。

外に出ると、顔に雪が当たって、痛っ!寒っ!と思わず叫んでしまうような状態の日でした。

その日は空港でカナダのひとたちと合流し、車で2時間かけてBrandonという町まで移動する予定だったのですが、さすがのカナダ人の運転でも、猛吹雪の中の移動は危険と判断して、結局、その日は、ウィニペッグに急遽ホテルをとって、みんなでそこに泊まることになりました。

部屋で少しのんびりしてから、何人かでちょっと薄暗い感じのバーに集まり、「寒い日には、これに限る!」と、スコッチのシングルモルトを、ショットグラスでぐぃっとやりながらいろんな話をして盛り上がっていました。

そして、話は、その中のメンバーだった、翌日に訪問する予定の工場の工場長が高校を卒業したすぐ後の頃の話になりました。

彼は高校を卒業して、大学の申込みをしなければいけなかったらしいのですが、あまり大学に行きたいとは思えなかったので、大学の申し込みもせず、部屋に閉じこもっていたのでそうです。

すると、そこに彼の父親がやってきて、大学にいかないのか?と聞いたので、大学には行きたくない!と答えたんだそうです。

すると彼の父親は、よし、そういうことなら俺の会社で働け!と言って彼をいきなり会社まで連れて行ってしまった。

彼の父親はそのとき、カナダ最大の加工チキン製品メーカーのマーケティング部長をやっていたらしいのですが、彼は、息子をオフィスではなく、工場に連れて行って、当時の工場長に、こいつを、この工場の、人手が足りないところで働かせてやってくれ。と頼んだんだそうです。

人手が足りないところ、というのは、きつい仕事、ということです。

つまり、自分の息子を、とにかく工場の中で一番きつい仕事に就かせようとしたんですね。

結局、工場の中でも一番きつい、生きた鶏をフックに掛ける作業員が不足している、ということで彼がその作業をして働くようになったんだそうです。

「断ればよかったじゃない!?」と一緒に飲んでる誰かが聞きました。

すると彼は、「それをやらないと父親に殺される!」と思ったそうです。

そして、しかたなくその仕事を始めたんだそうです。

毎日、あばれる生きた鶏をフックに掛ける作業の繰り返しです。

とにかく早く辞めたい!辞めるためには、大学に行かなくては!と彼は思って、すぐに大学に申込書を出しに行ったのだそうです。そしたら、大学には、既に今期の受付は終わっているので、6ヶ月後しか申込みは受けられません。と冷たく断られ、結局6ヶ月間、同じ作業を続けたそうです。

そして、半年後には、今度は大喜びで大学に入り、将来はこのような厳しい作業をしなくてすむよう、とにかく一生懸命大学で勉強したのだそうです。

そんな彼が工場長をしているその工場は、とても離職率が低くて、優秀なワーカーがたくさん集まっているのだそうです。現場の厳しさを知っている彼だから、現場のひとたちに愛されているのでしょう。

厳しく育てられたからこそ、深いやさしさを身に付けることができた。そういうことなのでしょうね。

無理やり大学に行かせるのでもなく、言葉で説得するのでもなく、自分で納得して大学に行きたくなるように育てる。これぞ成功者の教育!って納得させられた夜でした。