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ワクチン、効率よく免疫獲得

抗体の量、実際の感染より多い場合も

2021年7月4日

 

 新型コロナウイルスに感染すると、ワクチンを打ったのと同じ免疫がつくのだろうか。最近の研究によれば、国内で接種が進むmRNAワクチンを打つと、実際にウイルスに感染するより、感染を抑える「抗体」を効率よく作れることがわかってきた。

 感染すると、体内でウイルスが分解される。分解されたウイルスは「樹状細胞」に取り込まれ、様々な免疫細胞にウイルスの情報が伝えられる。

この情報をもとに免疫細胞の一種「B細胞」が、ウイルスを認識してくっつく多様な抗体を作り出す。ただ、樹状細胞が免疫細胞に伝えるウイルスの情報には様々な種類があり、中には、感染防御に役立たない情報もある。こうした情報をもとに作られた抗体は、たとえウイルスにくっついても感染を防げない。(朝日新聞デジタル)



 

 米ニューヨーク大のチームが新型コロナ感染から回復した101人の血液を調べたところ、感染を抑える効果が高い抗体を十分持つ人は6%、中程度持つ人は20%にすぎず、大部分の人は少なかった。

 感染を抑える効果が高い抗体は「中和抗体」と呼ばれる。

ウイルスが細胞に侵入する時に使う「スパイクたんぱく質」を認識してくっつき、侵入をじゃまする抗体だ。

 mRNAワクチンは、効率よく中和抗体を作るために開発された。

ウイルスに感染するときとは違って、スパイクたんぱく質の情報だけを免疫細胞に伝える仕組みだ。

 国内で接種が進むファイザーモデルナ製のワクチンの臨床試験では、実際に感染した人と同等か、上回る中和抗体ができたと報告された。

 また、長崎大などのチームが、新型コロナの感染者と、感染せずにファイザーのワクチンを2回接種した人の血液の抗体を比べたところ、ワクチン接種者のほうが中和抗体が多くできたと推定された。

 チームの柳原克紀教授は「感染しても感染予防に十分な抗体を獲得できていないことがあり、油断しないほうがいい」と話す。ただ感染者は1回の接種で、感染せずに2回接種した人と同等の抗体の量になったという。

 

* 予防対策、続ける必要

 米フレッドハッチンソンがん研究センターは、感染者と、モデルナのワクチンを2回接種した人の血液を詳しく比べた。

すると、ワクチン接種でできた抗体は、スパイクたんぱく質の中でも、特に細胞に侵入する時に使われる「RBD」と呼ばれる部分にくっつくものが多かった。

 一方、感染でできた抗体は、RBD以外にくっつくものが多かった。RBDにくっつく抗体がたくさんあれば、変異ウイルスに対しても感染を抑えられる可能性が高まるという。

 病気や受けている治療によって、ワクチンの効果がどうなるのかについても研究が進められている。

 米ニューヨーク大のチームは、血液のがんである悪性リンパ腫の患者53人について、ワクチンを受けた後の血液を調べた。受けている治療によって、38~100%と、抗体のできかたに差があった

 チームの小出昌平教授は「免疫細胞の働きを抑える治療中の患者でもワクチンの効果が出る可能性を示した。ただ、効果が低い場合もあるため、ワクチン接種後も、マスク着用や人との距離をとるなどの感染対策は必要だ」と話す。

 また、米国で4月末までにワクチン接種を終えた1億100万人のうち、1万262人の感染が報告された。

接種後の感染は「ブレークスルー感染」と呼ばれ、ごくまれに起きることがある。

発症や重症化を防ぐ高い効果は確認されているが、流行が続くうちは、マスクや手洗いなどの感染予防対策を続ける必要がありそうだ。




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