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今こそ再認識すべき「ワクチン望まぬ人」への配慮

ワクチン接種を受けない自由もあります(写真:ブルームバーグ)

接種は法律で義務づけられているわけではない

戸舘 圭之 : 弁護士

2021年06月07日

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために、ワクチン接種をいかに拡大するかが目下の課題となっている。現在、多くの人々がワクチン接種を希望しており、政府もワクチンの確保、接種に向けた計画を立てており、より多くの人にワクチン接種の機会が訪れると予想される。

一方で、無視してはならないことがある。報道などでもワクチン接種が当然の前提で話が進んでいるが、国民の中にはワクチン接種を希望しない人もいるという点だ。

 今後、職場や学校、施設などでの集団的なワクチン接種機会が増大する中、さまざまな事情によりワクチン接種を希望しない人に対して、非難をしたり、差別的な取り扱いなどの不利益が生じたりすることも考えられる。法的な観点からこの問題を検討してみたい。



 予防接種法上は「努力義務」、接種しない自由もある

前提として、予防接種法上、新型コロナウイルスワクチンの接種は「努力義務」とされている。

つまり接種が法律によって義務づけられているわけではなく、ワクチン接種を受けない自由は当然ある。

厚生労働省もホームページにおいて、以下のように説明している。

「新型コロナワクチンの接種は、国民の皆さまに受けていただくようお勧めしていますが、接種を受けることは強制ではありません。しっかり情報提供を行ったうえで、接種を受ける方の同意がある場合に限り接種が行われます。

予防接種を受ける方には、予防接種による感染症予防の効果と副反応のリスクの双方について理解した上で、自らの意志で接種を受けていただいています。受ける方の同意なく、接種が行われることはありません。職場や周りの方などに接種を強制したり、接種を受けていない人に差別的な扱いをすることのないようお願いいたします

また今回の予防接種法改正時の国会の付帯決議においても、

政府は、本法の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。

一   新型コロナウイルスワクチンの接種の判断が適切になされるよう、ワクチンの安全性及び有効性、接種した場合のリスクとベネフィットその他の接種の判断に必要な情報を迅速かつ的確に公表するとともに、接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること

     新型コロナウイルスワクチンを接種していない者に対して、差別、いじめ、職場や学校等における不利益取扱い等は決して許されるものではないことを広報等により周知徹底するなど必要な対応を行うこと

としている。

予防接種が強制ではないこと、予防接種をしていないことを理由にした差別、いじめ、職場や学校などでの不利益な取り扱いは許されないのだ。

 

職場や学校の対応として注意すべきこと

このように、ワクチンの予防接種は強制ではなく、同意に基づいて行わなければならないと法律上は明確にされている。

だが、実際の職場などの現場においては、ワクチン接種の機会があるのにワクチンを接種しないという選択は、事実上困難かもしれない。とくに、職場や学校で一斉に予防接種が行われるような場合、強制ではないと言っても、事実上、ワクチン接種をしなければならない圧力を感じてしまうかもしれない。

例えば、職場においてワクチン接種を社員に義務付けてワクチン接種を拒否した社員の出社を拒否する、ワクチン接種をしていない社員だけを在宅勤務にするなどの取り扱いをする企業が出てくる可能性がある。

しかしそのような取り扱いは、ワクチン接種が強制ではない以上、許されない。

企業側は、感染防止対策という社員の安全の観点から業務命令としてワクチン接種を義務付けようと考えるかもしれないが、法律上、予防接種は強制ではない以上、そのような業務命令は違法、無効となる。

学校においても、ワクチンを接種しない生徒、学生の授業への出席を認めないなどといった措置をとることも考えられるが、同様に、ワクチン接種を強制できない以上、そのような取り扱いをしてはいけない。

また老人ホームなどの施設においても、ワクチン接種を拒否した入所者に対する差別的な取り扱いや、利用契約を解除して退所を求めるなどといったことも許されない。

では、飲食店やイベント会場などにおいて「ワクチン接種をしていない人の入店、入場を認めない」などといった対応を店側、主催者側が行った場合はどうなのか。

ワクチン接種の有用性は認められる一方、副反応などのリスクがあるために受けない人がいることなどを鑑みれば、接種者のみ入店・入場を認め、非接種者を拒絶する対応は、ワクチン非接種を理由とする差別的な取り扱いとして違法と評価され、損害賠償責任が生じる可能性がありうる。

日本弁護士連合会も、今年2月に発表した「新型コロナウイルスワクチン接種に関する提言書」の中で、国に対し「ワクチン接種はあくまで個人の選択により行われるべきものであることの理解を広げるとともに、本件ワクチン接種に関する偏見差別防止やプライバシー保護を行うための、有効な施策を講じること」を求めている。

 

ワクチン接種は自分自身の判断で決めるべき

誤解のないようにあらためて述べておくが、筆者は新型コロナウイルスワクチンが有効でないとか、危険であるとか、予防接種を受けるべきではないなどと主張しているわけではない。

感染拡大防止、収束のためには予防接種が有効であり、政府の施策として、ワクチンを必要量確保し、速やかに多くの人々に接種の機会を与えることが急務なのも理解している。

しかし、ワクチンの予防接種を受けるかどうかは、ワクチンに関する正確な情報を与えられたうえで自分自身の判断で決めるべきだ。ワクチン接種を受けないことを理由に差別したり、不利益な取り扱いをしたりするのは許されない。

では、差別や不利益な扱いを受けた場合にはどうすればよいのか。

労働者が会社からワクチン接種を受けないことを理由に不当な取り扱いをされた場合、労働組合や労働問題に詳しい弁護士に相談してほしい。

老人ホームなどの施設や学校での差別的な取り扱いの場合は、弁護士に相談をするほか、その施設を監督している県や市などの行政機関の担当部署に連絡、相談すれば対応してもらえる場合もある。

また、新型コロナウイルスワクチンに関しては、厚生労働省が特設サイトを設けて詳細な情報提供を行っているので、そちらも参照のうえ、相談することをおすすめする。

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Q. 副反応は1回目の接種後より2回目の接種後の方が強いと言われるのはどうしてですか。

 

A. 1回目のワクチン接種でいくらか免疫がつくことで、2回目の接種の方が、免疫反応が起こりやすくなる

      ため、発熱や倦怠感、関節痛などの症状が出やすくなります。

mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンの接種に伴う軽い副反応の症状は、1回目の接種後よりも2回目の接種後の方が頻度が高いことが分かっています。

海外の臨床研究の結果に加え、ファイザー社のワクチンの場合、接種開始後に実施された健康状況調査でもその傾向がみられます。

1回目の接種で新型コロナウイルスのスパイクタンパク質に対する抗体等ができます。

そして2回目の接種時には、既にこれらの抗体等が誘導されていることから、接種されたmRNAを基に体内で1回目と同じスパイクタンパク質が作られると、1回目より強い免疫応答が起こり、発熱や倦怠感などの副反応がより出やすくなります



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