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迫られる「米国か中国か」の選択。どっちつかずで沈む日本、覚悟を決めて成長するインド


2021年3月25日

原彰宏

日本では重要な海外情勢がほとんど報じられません。

先日の米中外交トップ会談では、米中対立がより鮮明になりました。

日本は「米国か中国か」の選択を迫られています。


* 世界情勢に疎い日本人

3月19日、米中外交トップ会談の2日間の日程が終了しました。今の世界ツートップ会談の結果は世界が注目するところですが、日本ではあまり報じられていませんね。

日本では国内情勢は報道されますが、海外情報はなかなか報じられないようです。コロナでそれどころじゃないのでしょうか。

中東事情、アジア諸国、そして世界的会議内容など重要なニュースはたくさんありますが、日本はどうも内向きで、世界情勢には“疎い”と言えそうです。

日本国民が世界情勢に興味がないのか。それとも、あえて国民を鎖国状態にしているのか。

たとえばスイスで行われるダボス会議(世界経済フォーラム)の内容もほとんど報じられないですし、ASEAN会議の内容も詳しくは伝えられません。G7の主要国首脳会議は一種のイベントのように伝えられますが、G20主要20ヶ国・地域の会議の報道は扱いが軽いようです。

海外のスポーツも、日本人選手が活躍するものは報道でも扱われますが、その競技で日本人が活躍できなければ、誰が優勝したかは報じられません。日本人選手が決勝に残らなければ、決勝戦も報じられません。オリンピックで、やたら金メダルを強要するのも、日本人の特徴かもしれませんね。

情報面でも心理面でも、未だ日本は「鎖国状態」だと感じます。

* インドの影響力が増してきた

米中外交会談は、バイデン米大統領就任後の初の対中交渉の場です。米国側はブリケン国務長官、
中国は楊潔篪(よう けつち)政治局員が出席しました。

米中協議が世界的に注目されるのは、かつての米ソ冷戦の様相にも似た「新冷戦」となっているからです。

今世界では、安全保障の観点からも大きな対立構造があります。

米・豪・日・印「QUAD(クアッド)」 vs. 中・露

この「QUAD(クアッド)」に、英国も参加の意思を表明しています。

確認ですが、インドの存在感が増しており、太平洋地域を「インド太平洋」と表記します。暖流の流れから生物地理学的に「インド太平洋」と、海洋を1つにまとめるだけでなく、外交戦略上、QUAD(クアッド)のような日米豪印戦略対話と称されるように、インドのプレゼンスが大きく増してきたことが伺えます。

もうインドは、無視できない存在になっているということです。

日本では、安倍前総理が、2016年8月のケニアで行われたアフリカ開発会議(TICAD)で打ち出した外交戦略「自由で開かれたインド太平洋戦略(FOIP:Free and OpenIndo- Pacific Strategy)」を提唱しました。“自由で開かれた”というところが“ミソ”です。

「QUAD」に関しては対中包囲網の様相が強いですが、日本側の立場としては、中国を牽制するイメージを和らげたいという意図があるようでもあります。

* 米国か、中国か。日本は双方から選択を迫られている

外交問題のポイントは、米国と中国が「新冷戦」として対立する中で、インドが明確に中国と対峙する姿勢を表明したことで、アジア諸国とりわけ日本に対しても「米国か中国か、どちらかを選べ」と迫っていることにあります。

もちろん表立って踏み絵を求めているわけではないですが、その背景には、常に「米中選択」を迫られていることを理解しておくべきです。政治では親米でも、経済では中国抜きでは語ることはできません。

それはアジア諸国も同じで、一帯一路で中国経済包囲網に取り込まれたアジアや、借金外交で中国に抑え込まれたアフリカなどの既成事実からして、もはや中国には逆らえないという風潮ができ上がろうとしています

次世代インフラもそうですし、デジタル通貨競争、金融の側面でもそうですし、そしてワクチン競争でもそうですが、もはや中国の世界制覇は着々と進められていると言えそうです。

そういった中で、世界第3位の経済大国日本は、今後、事あるごとに米国か中国かの選択を迫られるようになってくると思われます。

* 安全保障上でも日本の立ち位置は危うい

「QUAD」に関しても、日本の立場は微妙です。

QUADの意味は「4つ」で、安全保障上では「4ヶ国」。それは日本、アメリカ、オーストラリア、インドの4ヶ国による「日米豪印戦略対話」を意味します。

日本は「QUAD」と前述の「FOIP」をどう使い分けるかが問われます。

このQUADにイギリスが参加することを、ジョンソン首相は表明しています。中国の人権問題が、米中対立におけるテーマとなっています。それはウイグル地区や台湾や香港に関わるもので、香港並びにインドは、かつての大英帝国を彷彿させますからね。香港に対する中国の態度は、イギリスとしても看過できないというものでしょう。それより、EU離脱後の英国の存在感を求めているのかもしれませんね。

欧州は、米国とは別路線を歩むことは決めていますが、ドイツは中国との貿易が活発で、自動車産業においては、中国抜きでは存続できない状況でもあります。また天然ガスは、ドイツはロシアからパイプラインで供給してもらっています。

欧州と中国、欧州とロシアの関係も、今後の世界情勢を見るうえでは、すごく重要になってきます。

中国は、かつての中華思想そのままに、世界の中心に君臨することを狙っていて、ロシアのプーチン大統領は、ロシア帝国の復活を目論んでいると言われています。

日本は地位協定を含め、戦後一貫して「親米路線」を貫いてきています。日本国内での構造改革においても、かつてあった「年次改革要望書」の指示通りに郵政を民営化し確定拠出年金制度を導入しました。いまは、安全保障面で「アーミテージ・ナイ報告書」に従って行動しています。「年次改革要望書」は、米国産業界からの日本への構造改革指示書のようなもので、日本はずっと、その指示に忠実に従ってきました。

「アーミテージ・ナイ報告書」は、最新のものは、昨年12月に出された第5次報告書になっていて、QUADのことも触れていますが、尖閣諸島に関して、日米安保第5条の適用にも触れています。
※参考:【アメリカ】第5次アーミテージ・ナイ報告書 – 国立国会図書館

世界における日本の立場としては、米国と中国、どちらか一方を選択を迫られることだけは避けたいわけで、日本の本音はまさに「Don’t make us Choose!」だとのことです。


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