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世界的エンジニアが選ぶ、リモートワーク向き「ベスト居住地」とは?


時差が小さく災害にも強い“天国”、世界の二極化と大移動が始まった
2021.02.17
新型コロナウイルスの感染拡大により日本でも話題となった都心部からの脱出の動きですが、アメリカでも本格化しているようです。
「Windows 95を設計した日本人」として知られ、新世代プレゼンツール『mmhmm(ンーフー)』の開発にも参加しているシアトル在住の世界的エンジニア・中島聡さんが、理想的なリモートワークスタイルを求めて訪れたハワイ島から、アメリカの移住事情等をレポートしています。


*理想的なリモート・ワークスタイルを求めて
今週のメルマガは、ハワイのハワイ島(通称、ビッグアイランド)で執筆しています。
ハワイには、これまで何度かバケーションで来ていますが、今回は「理想的なリモートワークスタイル」を求めて不動産を見ることが主たる目的です。
私は現在、本拠はワシントン州のシアトルにあり、リモートでシリコンバレーのmmhmmで働いています。
mmhmm自体は、シリコンバレーで立ち上げた会社とは言え、オフィスは既にキャンセルしており、私も含めた全員がリモートで働いています。
私以外の主要なメンバーも、サンフランシスコ(カルフォルニア州)、ボストン(マサチューセッツ州)、シドニー(オーストラリア)とバラバラで、今の時代を代表するような、「100%リモート」な会社です。
私は、コロナ以前は、シアトルを拠点として、年に5~6回日本に行って1週間ほど滞在する、という働き方をして来ましたが、去年は1月に日本に行ったきりで、そこから1年以上日本には行っていません。日本に入国するためには2週間の自宅隔離が必要なため、人に会うことも会合を開くことも出来ないからです。
そんな中で、9月にはmmhmmに開発メンバーの一人として参加し、今後のワークスタイルをどんなものにしようかと色々と考えて来ました。
夏はシアトル、冬はカルフォルニアという暮らし方も候補の一つでしたが、実際に数ヶ月を過ごしたいような場所はカルフォルニアにはなくロサンゼルスは渋滞がひどい、サンフランシスコは無駄に不動産が高い、ナパは山火事が怖い、パームスプリングスは人工的過ぎる、など)、そんな中で候補として浮上して来たのがハワイなのです。
ハワイは、一年中気候が温暖で(通年を通して20度から30度の間で、真夏でも日本のような猛暑日はありません)、日本にも近く、かつ、日本食のレストランや、日本の食材も簡単に手に入るという利点があります。
さらに、日本との時差も少ないため(1日マイナス5時間日本とのZoom会議もしやすいという利点もあります。
そんなこともあり、最初は(オアフ島の)ホノルルのコンドミニアムを入手しようとしばらく物色していたのですが、色々と調べているうちに、地球温暖化のためにホノルルがハイリスクゾーンであることを知り、投資意欲が失せてしまいました。
現時点でも、1フィート(30センチ)しか余裕がなく、満潮(月の潮力で水位が上昇すること)と高潮(台風などの影響で水位が上昇すること)が重なると街が水浸してしまうそうです。今後、地球温暖化で水位が上がると、冗談抜きで街ごと沈没してしまうリスクがあるのです。
そんな中で浮上してきたのが、ハワイ島です。ハワイ島は、比較的新しい溶岩で出来た島で、オアフ島のように賑やかではありませんが、コナ空港の近くにいくつかのリゾート地があり、私たち夫婦のように、海・ゴルフ・テニスが好きな人間にとっては、天国のような場所なのです。
そこで、今回は、不動産見学を主たる目的として、Manua Laniに1週間、Hualalaiに1週間滞在することにしました。
Manua Laniには、以前にも滞在したことがありますが、ホテルの前にある砂浜がスノーケリングに最高です。
今回も初日にゴルフをした後で、30分ほど泳ぎましたが、数千を超えるアジかイワシの大群と泳ぐことが出来ました。
運が良ければ海亀にも出会える場所です。
しかし、今回不動産の購入先として真剣に考えているのは、Manua Laniではなく、2週目に一軒家を借りたHualalai Resortと、その隣のKukioという場所です。
Hualalai Resortは、元々は、日本の鹿島建設と大成建設が、日本の不動産バブルの絶頂の時期(1989年)に開発をスタートした場所ですが、今は別のディベロッパーが所有し、ホテルも含めたリゾートの経営をFour Seasonが行っています。
ここの魅力は、素晴らしいゴルフ場が2つある上に、不動産の持ち主はFour Seasonによるサービスが受けられる点に尽きます。
ゴルフコースは、毎年 PGA シニア・ツアーの「Mitsubishi Electric Championship」が行われ、ホテルのゲストにもオープンなHualalai Golf Courseと、メンバーのみが使えるKe‘oluがあり、どちらも、とても魅力的なコースです。特に、Ke‘oluの方は、ティータイムの予約もせずに、いつでも気楽に出来るので、私のようなライフスタイルの人間には最高です。
Hualalai Resortには少し前から目をつけ、オンラインで不動産を物色し、2つの物件に狙いを定めていたのですが、どちらも去年の12月に売れてしまい、少し焦っています。
一方のKukio(正式にはKukio Golf and Beach Club)はHualalai Resortの南側にあるリゾートですが、Hualalaiのようにホテルを持っておらず、不動産の持ち主しか来ることの出来ない、排他的な空間が魅力です。
Kukioのことは、私がシアトルで属しているOverlake Country Clubのヘッドプロが、Kukioで働いていた経験を持ち、彼がとても素晴らしいゴルフコースだと勧めるので興味を持ったのです。
ちなみに、Kukioに関しては、ZOZOの前澤友作氏が、土地を購入し、建物を建設中であることをYoutubeで公開しているので、そちらをご覧ください(「前澤友作のハワイ編、はじまります。」)。前澤氏の土地は、海岸沿いの一等地で、土地の価格だけで$20 millionする場所です。
案内してもらった不動産屋さんによると、去年の11月ぐらいから、ハワイ島の不動産は大きく動き始めているそうです。
私と同じように、リゾート地からリモートワークをしようと考えている人が多いようです。
また、ワクチンの摂取が始まったとは言え、なかなか収束する気配を見せない様子から、「もう人の多い都会には住めない」と感じている人も多いのだろうと、彼女(不動産屋さん)は言います。
彼女によると、アイダホ州のサンバレー(こちらはスキーリゾート)でも似たような不動産ブームが起こっており、全米各地で、都会からリゾート地への人の移動が起こっているようです。
新型コロナの影響により、数多くのビジネス(特に中小のレストランやバー)が廃業に追い込まれ、街に失業者とホームレスが溢れる中、株価だけは高騰し、リゾート地の不動産市場が活気を帯びているというのもなんだか変な話ですが、これがまさに、新型コロナが世界にもたらした「二極化」の象徴なのだと思います。

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