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日本のIT業界「2つの騒動」から見えた深すぎる闇

2021.02.11

 1月29日に発表された三井住友銀行のソースコード流出問題ですが、その経緯は思った以上に闇が深いようです。世界的エンジニアの中島聡さんが、同ソースコード流出問題の発生した構図を明らかにするとともに、厚労省のコロナ接触確認アプリ「COCOA」のバグ問題からも日本のIT業界の「深い闇」を感じたとして、その理由を記しています。


 私の目に止まった記事

三井住友銀ソースコード流出を招いた「エンジニア冷遇」と日本の社会構造

先週、三井住友銀行のシステムのソースコードがインターネットに流出したことが判明しましたが、その理由は、開発を担当していたエンジニアが、自分の年収に不満を持ち、自分の市場価値をソースコードから示してくれるFindyというサービスに評価してもらうために、一般公開されているサーバー(github のパブリック・リポジトリ)にアップロードしてしまったことにあるそうです。

流出したコードの一部から、三井住友銀行以外のシステムのソースコードも流出したことが判明していますが、

あるソースコードは、

  • NTTデータが銀行からシステム開発の委託を受注
  • それを子会社のNTTデータ ジェトロニクスに委託
  • そこがさらに、下請けに委託
  • その委託先から流出

という経緯で流出したことが判明しているそうです(SMBCに続きNTTデータも被害を確認、広がるGitHub上のコード流出問題)。典型的な「ITゼネコン」構造です。

ちなみに、流出を起こしたエンジニアは、Twitter上に匿名のアカウント(現在は非公開)を持っており、そこで、20年のキャリアを持つ40代のエンジニアでありながら、年収は300万円であることを嘆いていたそうです。

この人が、Twitterで韓国人を揶揄する発言をし、それが炎上するなかで、彼の Facebookアカウント、本名、githubアカウントが晒され、そこで公開されたソースコードの中に三井住友銀行向けのソフトウェアであることが分かる文言が入っていたことから、流出が判明したそうです。

Twitterでのやりとりを見る限り、本人にはまったく罪の意識はなく、Findyでの評価を受けるために、特定のフォルダーに入っているファイル全てをGithubのパブリック・リポジトリに上げてしまったそうです。

この年収から予想するに、この方は孫請け会社の社員ですらなく、大学でコンピュータ・サイエンスも勉強していない派遣社員だと思いますが、これがまさに、日本のIT業界の闇なのです。

ソフトウェア・エンジニアとして勝負するのであれば、ITゼネコンやITゼネコンの下請けには入るべきではないし、派遣会社に登録などもしてはいけません。そこには、このような低賃金の過酷な労働環境しかないのです。

 

私の目に止まった記事2

「COCOA」のAndroid版、機能していなかった。2020年9月末から。田村厚労相が謝罪

厚労省が配布している新型コロナウィルスの接触確認アプリ「COCOA」の Android 版に致命的なバグがあり、去年の9月から(一番大切な機能である)通知機能が働いていなかったことが分かったそうです。

厚生省の発表によると、この不具合に関しては、既にSNS上でユーザーの間で話題になっていたそうですが、その情報を開発に反映することは出来なかったそうです。

ちなみに、Twitter 上では、この不具合に関する issue (不具合の報告)がgithub上に11月上がっていたそうですが、「正式なルートでのバグレポート」ではなかったために、無視されてしまったようです。

この 「COCOA」はもともとは、有志が集まってオープンソースとして開発していたものを、政府が「パーソルプロセス&テクノロジー」という会社に委託して製品化したものだそうですが、この会社は、人材派遣会社のパーソルホールディングスの子会社であり、そこに日本のIT業界の闇を感じます。

この会社は、こんな問題を起こしたにも関わらず、今度はコロナワクチン摂取者の管理システムを受注したそうです(パーソル子会社などコロナワクチン接種者の管理システム)。 

☞  人工知能(AI)開発スタートアップのAI inside(AIインサイド)は、パーソルホールディングス傘下のパーソルプロセス&テクノロジー(パーソルP&T、東京・江東)とともに、新型コロナウイルスのワクチン接種の情報管理システムの提供を始める。AIインサイドは書類の文字の画像をAIが自動で読み取る同社のソフトを活用し、ワクチン接種者の氏名や住所、年齢、接種日といった情報をテキストデータにする。それをパーソルP&Tの技術を使ってシステムに登録。デジタル化してワクチン接種の管理などに関わる自治体の業務負担の軽減を目指す。具体的な仕様と料金は未定。

 

【関連】なぜ、日本政府が作るソフトウェアは使えないモノばかりなのか?

 


  「心配は全くない」あの松下幸之助が終戦翌日に語った名スピーチ

2021.01.28

パナソニックの創業者にして「経営の神様」と呼ばれる松下幸之助。多くの名言を残していることでも知られますが、終戦翌日の社員に向けたスピーチは、聞く者の魂を揺さぶるものだったと言います。

 

心震える伝説のスピーチ

丁稚奉公から身を起こし、一代で世界的企あの松下幸之助が終戦翌日に語った名スピーチ業をつくり上げた松下幸之助氏。戦後は予期せぬ財閥指定や公職追放などの逆境に見舞われるも、それを見事に乗り越えていきますが、終戦のまさに翌日、驚くべき内容のスピーチを社員に向けて行っていました。

直に幸之助氏の薫陶を受けたお二人は、「経営の神様」から何を学んだのか。ウィズコロナ時代への示唆となる松下幸之助の終戦スピーチをご紹介します。

 

上甲 「先ほど中さんもお話しされていた敗戦翌日のスピーチ。これには本当に感動しました。

 

『ついに大東亜戦争もその目的を達成し得ずして、ここに残念な形において幕を閉じることとなった。ここに至っては、如何(いかん)とも致し方がない。

(略)

ここ当分、次々と予想もできない困難な事態に逢着(ほうちゃく)もしよう。しかしこれを快刀乱麻を断つ如く捌(さば)いて、結末を与えていく基礎は、やはり真の日本精神である。しからば日本精神とはいかなるものか。日本精神とは畢竟(ひっきょう)至誠、誠を全うする心である。

(略)

日本精神を体得すればいかなる難問題に直面しようともこれを打開する方途(ほうと)が生まれ、万事が自ずから成就し、成功するものである。この精神の消長は国家の隆替に密接な関係を有し、日本精神が国民に保持されている時は必ず繁栄したのである』

 

そして最後にこう締め括っているんです。

『我が社に関する限り、今後絶対に懸念することは要らない。仕事がなくなっても人を会社から離さず、積極的に仕事を見出してむしろ仕事を与えていきたい。いかなる困難に立つとも最善の努力を尽くすつもりである。ゆえに松下電器に関する限り、心配は全くないのであって、安心して業務に当たってもらいたい』」

 

中 「いや、もう痺(しび)れますよね」

 

上甲 「敗戦の翌日によくこんなことを社員に向けて熱く語りかけた人がおったなと」

 



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