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元国税が暴く“売国”の犯人とは

世界一の金持ち国家・日本が貧しくなった訳

2021.02.03

1月にNHKが行なった調査では、およそ80%が「中止」か「再延期」と回答した東京オリンピック・パラリンピック。しかし政府はあくまで今夏の開催にこだわり続けています。

なぜ彼らはここまで頑ななのでしょうか。

元国税調査官で作家の大村大次郎さんが、東京オリンピックの必要性を検証するとともに、日本は世界一の金持ち国家であるという事実と、そのカネを喘ぎ苦しむ国民に循環させることができない、政治家や財界人を強く非難しています。


 * 「実は豊か」な日本経済の闇。なぜ金が国民に回らない?

東京オリンピックの開催について、政府はあくまで決行するようですね。ワクチンの普及や今後の感染なども不透明なので今の状況では、なんとも言い難いのですが、去年と同じ過ちをすることだけはしてほしくないものです。 

去年、日本政府が、新型コロナ感染の現状を無視して、ギリギリの段階まで東京オリンピックを予定通りに開催しようとしていたことはご存じのとおりです。 

世界中に被害が広がり、その深刻さが知れ渡るようになった3月に入っても、政府や東京都は「オリンピックは予定通り開催する」と言い続けてきました。 

日本でPCR検査があまりされなかったことに関して、「感染者の数を少なく見せかけて、東京オリンピックを開催にこぎつけようとした」という疑いも持たれています。 

明確にその意図はなかったとしても、東京オリンピック開催のために、あまり感染者数は増やしたくないという思惑は、政府にも東京都にも少なからずあったはずです。

東京都の試算によると、東京オリンピックの経済効果は、誘致決定の2013年からオリンピック10年後の2030年ごろにまで及び、その総額は30兆円を超えるとう超巨額なものです。 

競技施設の建設など直接の経済効果は2兆円程度ですが、都市の再開発、宿泊施設など観光業への投資、選手村に使用するマンションの事後販売など多岐にわたります。 

もちろん、もし中止になれば大変なことになるはずです。 

30兆円の経済効果がふっ飛ぶどころか、下手をすれば費用回収ができないことにより、大きな負債を抱え込むことになりかねません。 

安倍前首相にとっても、東京オリンピックは自分の政治生命にかかわるものだったはずです東京オリンピック誘致計画は安倍前首相が首相に再就任する前から計画されたものでした。 

が、安倍前首相は首相に再就任して以降、東京オリンピック誘致に全力を傾けました。安倍前首相にとって、莫大な経済効果が見込めれる東京オリンピックは、アベノミクスの切り札とも考えていたはずです。 

また安倍前首相は、日本の「観光立国」を精力的に推し進めてきました。実際に安倍前首相の就任時から、外国人観光客は激増しています。 

安倍前首相の就任の年の2012年には800万人だった外国人観光客は翌2013年には1,000万人を超え、2016年には2,400万人、2019年には3,190万人に達していました。 

外国人観光客が落とすお金、いわゆるインバウンド需要も3兆円にまで増加していました。 

安倍前首相は、2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」と題した中長期の観光施策の指針を発表し、2020年までに達成すべき目標として訪日外国人旅行者数4,000万人などが掲げられました。 

この目標達成には、当然のことながら東京オリンピックの開催は不可欠でした。 

東京オリンピック延期の発表をするまで、政府は「新型コロナは大したことはない」というようなアピールを繰り返してきました。 

中国であれほど新型コロナの猛威が吹き荒れていたというのに、2020年2月いっぱいまで中国人は普通に日本に観光に訪れていたのです。 

3月5日になってようやく、中国、韓国、イランからの事実上の入国拒否にしました。しかし、それ以外の国々からはまだ普通に日本に入国できました。 

3月14日の時点で、安倍前首相はまだ「オリンピックは予定通りを行なう」と発言しています。が、世界中から非難されはじめたため、3月の終わりにようやくオリンピックの延期を決めたのです。 

そして東京オリンピックの延期が決まってからようやく本腰を入れて対策に乗り出したのです。 

日本政府がアメリカ、ヨーロッパなどからの入国拒否を決定したのは、3月末のことでした。3月まではアメリカやヨーロッパからの観光客がたくさん日本を訪れていたのです。 

イタリアではすでに2月の時点で感染爆発がおき、3月にはそれがヨーロッパ全土におよび、数千人単位の死亡者がでていたにもかかわらずです。 

日本が、入国拒否をだらだらと引き伸ばしたのも、東京オリンピックやインバウンド需要への配慮があったのです。 

総額30兆円のオリンピックの経済効果、毎年3兆円にも達するインバウンド需要と、国民の命を天秤にかけ、オリンピックの方を選んで入国拒否をだらだらと遅れさせました。 

このことは、現政権と現都知事の大きな失政として、子々孫々まで語り継ぐ必要があると思われます。 

そして、菅首相も安倍政権と同じ過ちを繰り返そうとしています。菅首相は、安倍政権でも観光事業の旗振り役でした。

去年の秋、GoTo事業を菅首相が強引に行ったことは、記憶に新しいところです。

 

*  日本は本来、世界最高レベルの外貨保有国

そもそも、なぜ日本は東京オリンピックやインバウンド需要にこれほどこだわらなくてはならないのか、という大きな疑問があります。というのも、観光産業で外貨を稼がなくても、日本は世界一外貨を持っているのです。 

国内の工業などがあまり栄えておらず、観光産業で稼がなくてはならない国というのは世界中にたくさんあります。

が、日本はそういう「観光産業に頼らなくてはならない国」ではないのです。 

にもかかわらず、日本は「観光産業」に過度に依存しようとしています。それは一体なぜでしょうか? 

実はそこには「日本経済の闇」があるのです。

「東京オリンピック」も「観光立国計画」も、平成の長い不況を打開するためのものでした。

平成時代は、失われた20年とも失われた30年とも言われる長い不況の時代とされています。 

その閉塞感を打破するために、東京オリンピックを誘致したり、観光産業を発展させようとされてきたのです。 

しかし、しかし、です。実は平成の30年の間の日本の景気というのは、決して悪いものではありませんでした。

もうすっかり忘れ去られていますが、2002年2月から2008年2月までの73カ月間、日本は史上最長の景気拡大期間(好景気)を記録しています。 

この間に、史上最高収益も記録した企業もたくさんあります。トヨタなども、この時期に史上最高収益を出しているのです。また2012年からはさらにそれを超える景気拡大期間がありました。

つまり、平成時代というのは、「史上まれに見る好景気の時代」だったのです。日本企業の営業利益はバブル崩壊以降も横ばいもしくは増加を続けており、2000年代に史上最高収益を上げた企業も多々あるのです。 

そして、日本企業は、企業の貯金ともいえる「内部留保金」を平成の時代に倍増させ、現在は400兆円を大きく超えているのです。 

また日本企業は、保有している手持ち資金(現金預金など)も200兆円近くあるのです。これは、経済規模から見れば断トツの世界一であり、これほど企業がお金を貯め込んでいる国はほかにないのです。 

アメリカの手元資金は日本の1.5倍ありますが、アメリカの経済規模は日本の4倍です。

だから経済規模に換算すると、日本の企業はアメリカ企業の2.5倍の手元資金を持っていることになるのです。

世界一の経済大国であるアメリカ企業の2.5倍の現金預金を日本企業は持っているのです。 

貿易収支も、バブル崩壊以降もずっと10兆円前後の黒字を続けてきました。

赤字になったのは、東日本大震災の後になってからなのです。 

また2011年以降、貿易赤字が続いているので、日本はヤバいのではないか、と心配している人もいるかもしれません。が、2011年以降の赤字額も、これまで積み上げた貿易黒字に比べると、屁のような額なのです。 

しかも、赤字になっているのは、「物」の輸出入のみの換算なのです。

近年、日本企業は、自国でモノをつくって輸出するよりも、海外に子会社をつくって現地でモノをつくるという傾向にあります。つまり、物ではなく、資本を輸出するようになったのです。 

この「資本」を含めた輸出入(経常収支)では、日本は震災以降もずっと黒字なのです。

「近年、日本経済の国際競争力が落ちた」などと言われることがありますが、決してそんなことはありません。 

毎年、毎年、10兆円もの貿易黒字を何十年も続けてきた国、何十年もの間、経常収支が黒字を続けた国など、世界中にどこにもないのです。 

国際競争力から見れば、日本は世界のトップクラスであることは間違いないありません。

日本の外貨準備高は1兆2,000億ドルをはるかに超えています。 

これは、EU全体の倍以上という巨額さです。

国民一人あたりにすれば、100万円以上の外貨準備高を持っている計算になり、断トツの世界一です。

中国の3倍以上にもなるのです。 

実際に日本というのは、現在、実質的に世界一の金持ち国です。日本の個人金融資産残高は現在約1,900兆円です。

一人当たりの金融資産1,000万円を大きく超え、アメリカに次いで世界第2位となっています。 

しかも、これは金融資産だけの話であり、これに土地建物などの資産を加えれば、その額は莫大なものです。 

また日本は、対外純資産は、約3兆ドルで世界一です。日本は世界一の債権者の国でもあります。

つまり「日本人は世界一の金持ち」といっていいのです。 

なのに、なぜ我々は、平成時代ずっと不景気だと思ってきたかというと、その答えは、実は明白です。

日本のサラリーマンの給料が下がっているからです。

 

日本経済新聞2019年3月19日の「ニッポンの賃金(上)」によると、1997年を100とした場合、2017年の先進諸国の賃金は以下のようになっています。 

  アメリカ 176

  イギリス 187

  フランス 166

  ドイツ  155

  日本   91 

このように日本の賃金状況は、先進国の中ではこの20年で唯一、賃金が下がっており、異常ともいえるような状態なのです。

 

*  今の日本に必要なのは「成長」ではなく「循環」

今の日本で問題なのは金がないことではなく、金があるのにそれがきちんと循環していない、ということなのです。

週に40時間まともに働いて、家族を養うどころか自分がまともに食う事さえできない国というのは、世界中そうそうあるものではありません。 

政治家や経済界の人は、それを恥じてほしいものです。

これだけ金を持っているくせに、国民をまともに食わせることさえできないのか、ということです。 

極端な話、景気対策などは必要ないのです。

必要なのは、大企業や富裕層がため込んでいる金を引き出して、金が足りない人のところに分配することだけなのです。 

それも、特別なことをしろといっているわけではありません。

先進国として最低限度の賃金政策、雇用政策をとるだけでいいのです。 

たったそれだけのことで、日本全体が救われます。

今の日本の最大の課題は、「経済成長」ではありません。もちろん、経済成長も大事なことではあります。

しかし日本の経済競争力はまだまだ健在であり、それほど差し迫った問題ではないのです。 

今は、それよりもはるかに切迫した問題があります。

世界の10%以上という莫大な金を持っているのに、たった1億数千万人の国民を満足に生活させることができない、という「経済循環の悪さ」です。その点に、為政者、経済界のリーダーたちは気づいていただきたいものです。

 

「爆発的な経済成長をすれば全ての問題が解決する」という、安直で愚昧な政策を、もうこれ以上繰り返さないでいただきたいのです。

何度も言いますが、今の日本は十二分に競争力はあるし、資産も持っています。経済循環が悪いだけなのです。 

今、経済競争力や資産の余力があるうちに、この問題を解決しておかないと、近い将来、経済競争力や資産も失っていきます。 

そもそも日本の高い競争力は、誰が担ってきたものでしょうか?

日本の高い技術力というのは、十分な教育を受けた勤勉な多くの国民が支えてきたものです。 

だから競争力を維持したければ、まずは国民が普通の生活をしていける環境を整えるべきです。

そして「金がないから進学できない」「金がないから結婚、出産できない」というような若者を絶対に出さない事です。 

企業を優遇すれば、目先の経済指標は上向きます。

しかし、国民生活をおざなりにするような国は、長い目で見れば確実に国力を失っていくのです。

決して多くない子供の教育さえままならない今の日本では、近い将来、国際競争力を失っていくのは火を見るより明らかです。 

東京オリンピックについては、それほど大きな問題ではありません。

無理してやる必要はないし、無理してやめる必要もないという程度の問題なのです。

 

まずはバブル崩壊以降、すっかりしぼんでしまった国民の生活をきっちり立て直すこと、それが大先決の問題なのです。


いまこそ夢を語ろう



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