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「座り時間が長い人」死亡リスク減らす運動時間

1日1時間と言われたが、もっと短くていい

The New York Times

2021年01月10日

1日に最低でも11分歩けば、何時間も座り続けることによる健康への悪影響を緩和できることが、新たな研究によって示された。この研究は、座っていることと運動の両方が寿命にどう影響するかを調べたもので、数万人の1日の過ごし方についての客観的なデータを使って行われた。その結果、座ってばかりの人は早くに死亡するリスクが高くなるが、その人たちも立ち上がって歩けば、たとえそれがわずかな時間でも、リスクを大幅に減らせるという。


 

*過去の研究では「1日1時間」が求められた

長時間にわたって座り続けることは、多くの人にとってもはや日常的だ。

とくに、新型コロナウイルス関連の制約と、寒くて日照時間の短い冬という2つの条件が重なっている現在では、その傾向が強くなっている。

パンデミックが始まって以降の行動を尋ねたアンケートによると、大半の人たちは1年前に比べて運動時間が減り、座っている時間が長くなっているという。

当然のことながら、このように動かないでいると、健康面で長期的な影響が生じる恐れがある。

これまでに行われた数々の疫学的研究で、座っていることと死亡率の関連性が示された。

それらの研究では、大まかに言うと、ソファーで過ごしがちな人たちは、活動的な人たちと比べると、早く死亡する確率がかなり高くなるという。

しかし、どのくらい活動的であれば、座っていることによるマイナスの影響を減らせるのかについては、あまり明確にされてこなかった。

例えば、仕事で8時間座っているとしたら、座りすぎのリスクを解消するためには、夜30分歩けば十分だろうか。

1日30分というのは、標準的な運動の指針によく示されている。

過去のいくつかの研究では、その答えは「ノー」だった。

例えば、2016年のある研究では、複数の調査から集められた100万人以上のデータを集計し、その結果、座っていることによる悪影響をなくすためには、女性も男性も1日60分から75分程度、適度な運動をする必要があるとした。

しかし、この研究は過去の類似の研究と同様に、被験者にどのくらい運動したか、あるいは座っていたかを尋ね、思い出してもらうものだった。

実は、その点が問題となる可能性がある。

自分の生活についての私たちの説明は、あまり信頼できるものではなく、運動の時間については長く見積もりすぎ、座っていた時間は短く見積もりすぎてしまうからだ。

大勢がこのように誤った記憶を伝えると、その結果、逆説的な結果が生じる。すなわち、運動が実際よりも効果がないように見えてしまうのだ。

なぜなら、「活動的な」人々でも、実際に運動した時間は申告した時間よりも少なく、その少ない時間で効果が出せたのに、申告した多くの時間に基づいて計算することによって、効果を出すにはたくさんの運動が必要であるように見えてしまうからだ。

今回実施された新たな研究は、『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・スポーツ・メディスン』の特別号に掲載されたもので、この号はWHO(世界保健機関)による身体的活動ガイドラインの改訂と、それに関連する研究を特集している。

2016年の論文の執筆者の多くが、今回も同じ調査方法と分析方法を用いたが、変更した点もあった。

それは、運動した時間と座っていた時間を客観的に測定するため、活動量計を装着した人々のデータを用いたということだ。

 

*活動量計で客観的に時間を測った

今回の新たな研究では、この活動量計を装着した男女、合計約5万人のデータが含まれた、9つの調査結果が集計された。

研究に参加した被験者は、ヨーロッパかアメリカに住む中年以上の年齢の人たちだった。

その結果わかったのは、多くの被験者がかなり長い時間座っていることで、その時間は平均で10時間近かった。

また、ほとんど動かない人も多く、運動は主に歩くことで、運動時間は1日わずか2〜3分という場合もあった。

続いて、研究者たちは死亡記録を調べた。

被験者がそれぞれの研究に参加して以降の約10年間の記録を調べ、生活スタイルと寿命を比べた。

被験者を、座っている時間および運動している時間に基づいて3分の1ずつのグループに分けて分析したところ、誰もが予想するとおり、座っている時間が極度に長い人が最も危険だった。

座っている時間で最上位のグループに属し、かつ運動している時間では最下位のグループに属する人たちは、最もよく運動し、座る時間が最も短い人たちに比べると、早くに死亡する確率は約260%高かった(研究者らは、喫煙や肥満度を表す指数のBMIなど、結果に影響する可能性があるほかの要因に関しては調整を行った)。

しかし、これ以外の座っている時間と運動している時間の組み合わせでは、あまり恐ろしい結果は見られず、むしろ元気づけられる結果が得られた。

運動時間で中間の3分の1のグループに属する人々は、1日の運動時間が11分ほどだったが、その人たちは運動量がそれより少ない人たちに比べて、早く死亡する確率がはるかに低かった。たとえ、その人たちが座っている時間が最も長いグループに属していても、結果は同じだったのだ。

 

*最も効果的なのは35分のきびきびした動き

研究者たちはさらに数字を分析し、運動時間と寿命の関係において最も効果的なのは、1日35分間、きびきびと歩くなどの適度な運動をすることだという結果にたどりついた。

座っている時間の長さにかかわらず、この運動時間である場合に、最も寿命を向上させる効果が見られた。

もちろん、この研究はデータの分析に基づくものであり、運動をすることによって寿命が長くなることは証明していない。

単に、身体的活動と座っていること、寿命とのあいだに関連があることを示しただけである。

しかし、この研究を率いたウルフ・エケルンドは、この研究結果が示すのは、もし私たちが1日中座って過ごすなら、私たちは意図して立ち上がり、動くべきだということだと言う。

エケルンドはノルウェー・スポーツ科学大学の教授で、疫学と身体的活動を専門としている。

「きびきびと歩くことは、中程度の運動としてはとても優れた運動だ」

30分でも、あるいはそれ以下でも、私たちの寿命を延ばす効果があるかもしれないのだ。

 

(執筆:Gretchen Reynolds、翻訳:東方雅美)© 2021 The New York Times Company

 




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