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「医療崩壊の危機」を訴える都医師会の矛盾とは?


現場の医師ら怒りの声

2021.01.10

ついに首都圏の主要都県で緊急事態宣言が発出され、1日あたりの罹患者が東京で2000人を連日超えるなど、感染拡大が止まらない新型コロナウイルス感染症。

そんな中、東京都医師会長の尾崎治夫氏が年末に発言した内容に賛否が巻き起こっています。

その発言に居たたまれなくなったという元大学病院副院長の友人らからメールが届いたと明かすのは、軍事アナリストで危機管理の専門家である小川和久さん。

 

*東京都医師会・尾崎会長に医療現場が激怒する理由

東京都医師会長の尾崎治夫さんの発言に賛否の嵐が巻き起こっています。

  「東京都医師会のトップが焦りを募らせている。尾崎治夫会長は連日のようにメディアに出演し、新型コロナウイルスへの感染防止を呼びかけているが、一向に人の動きが止まらず、東京都の1日の感染者数は過去最高を記録。『1日1000人の感染者は現実になる。既に助かるべき命が助からない状態になってきている。ロックダウンに相当する強い対応を』語気を強め、人々や政府に訴えかけている」   (出典:12月28日付毎日新聞)

尾崎さんは続けます。

  高齢者が外出しなくなると、認知症や(心身の機能が低下する)フレイルを引き起こす心配もあります。だから本当はロックダウンや緊急事態宣言はいらないし、出してほしいとは思っていません。

  でも、みなさんに守ってもらえないなら、緊急事態宣言やロックダウンに相当する対応しかないんです。まだ1日の感染者数が1000人を超えていないから、と現状の数字で判断していては手遅れになります。今、この時点で人の動きを止めず、このまま感染者が増えれば、医療が崩壊するんです。自分や自分の周りの人が、体調が急変したのに、どこの病院にも受け入れられずに亡くなっていく、そういうのは誰でも嫌でしょう 」

私は尾崎さんの発言について、同様の危機感を国民が共有すべきだと思い、SNSで拡散しました。

そして、尾崎さんは12月31日から元日に掛けてのテレビ朝日『朝まで生テレビ』に出演、持論を展開しました。

これに対して、第一線の医療に関わる旧友から「居たたまれずにメールした」と厳しい指摘が寄せられました。

この人は旧帝国大学の医学部教授や大学病院の副院長を歴任し、厚生労働省でも行政実務を経験しています。

日本の医師は診療科目によって緊急事態にも手を汚さず、「楽をできる自由」を満喫している、その代表格が尾崎さんだというのです。

 ・国民皆保険が実現して60年になるのに、まだ無医村がある実情をどう思うのか。電力会社は発足10年で日本国内の100%の電力供給を実現したのに、医師会は声をあげ、どこまで本気で政府を動かそうとしてきたのか。

 ・大規模災害で政府、自治体、マスコミなどを糾合してバックアップに取り組んだ経験からして、尾崎さんにはそんな経験をしたことはおろか、緊急事態に対する図上演習すらしたことがないのは、発言を聞けば明らかだ。

 ・江戸時代まで「医者」と呼ばれていたのが、明治維新後に「医師」と尊称されるようになったのは、常に住民とともにあり、陸軍の師団長と同等の影響力のある存在と認識されたからで、だからこそ、警察とともに内務省の一翼を担うよう法制上も位置づけられた。

 ・いまこそ医師会はその原点に戻り、医療の責任と任務分担を政府に投げかけるべきだ。

 

私の友人だけでなく、SNSでの尾崎さんのコメントには第一線でコロナと戦っている勤務医から、激烈な批判が寄せられ、コロナとの戦いの語られざる一面を見せつけられた思いです。

 「(前略)あの時は、入院が必要なインフルエンザ肺炎の患者さんが行く所は残っているのだろうか?と本気で『医療崩壊』を危惧した。所詮、A会員(開業医)中心の医師会のオジサンどもにはわからないだろう。(中略)

 日本の病床数は世界一、ところがPCR陽性者も死亡者も欧米より2桁も少ない。こんなんで『なんちゃって医療崩壊』するようなら、一度本当に医療崩壊しちまえ

   オジサンたちよ、医療崩壊とやらを国民のせいにばかりしてんじゃねえよ、根本から日本の医療制度を改めろよ。

 ちなみに日本医師会長は脳外科開業医、どれだけコロナ感染の患者を診ているのか聞いてみたいものだ。現場の最前線にいるのは、我々B会員(勤務医)だからね。

 東京都医師会長も同罪、『モーニングショー』と並んで悪名高い『サンデーモーニング』にお呼ばれされた時点で、もう終わっている。

    またこの2つの番組など、過剰に不安を煽りまくるマスゴミが最悪。『なんちゃって医療崩壊』を現実のものとしようとしている原因は、コロナワイドショーじゃないのか。

 ちなみに東京都医師会長は循環器内科開業医、12/27~1/3まで休診だそうだ。日本医師会長のクリニックも12/30~1/3まで休診。

     コロナにお休みはないんでしょう?、総合病院の医療がひっ迫しているのなら、開業医レベルの軽症の患者くらい、休まず診療したらどうなのですか。(後略)」

 

私の友人も、この勤務医も、基本的には同じ考えのようです。

医師会をリードする尾崎さんのような立場であれば、感染症にも耐えうる日本の医療体制の改革に取り組んできてしかるべきなのに、いまになって目立つような発言を繰り返し、次なる医師会のポストでも狙うつもりか、と怒り心頭に発しているように感じられます。

診療科目が違えば、確かに現場の苦境を実感することはないでしょうが、それでも医師会をリードする立場であれば、診療科目や開業医かどうかとは関係なく「コロナ戦線」をサポートできる構想を描き、全国の医師会に声を掛けて医療従事者の総力投入を実現し、コロナ以外の医療も確保することが期待されます。

これがいま、尾崎さんたちに求められる行動ではないかと思います。(小川和久)

 


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