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子供も部下も育つ「一流のほめ方」、超簡単7秘訣


資生堂・魚谷社長の「スゴい人心掌握術」も紹介

岡本 純子 : コミュニケーション・ストラテジスト

2021年01月01日

日本を代表する一部上場企業の社長や企業幹部、政治家など、「トップエリートを対象としたプレゼン・スピーチなどのプライベートコーチング」に携わり、これまでに1000人の話し方を変えてきた岡本純子氏。たった2時間のコーチングで、「棒読み・棒立ち」のエグゼクティブを、会場を「総立ち」にさせるほどの堂々とした話し手に変える「劇的な話し方の改善ぶり」と実績から「伝説の家庭教師」と呼ばれ、好評を博している。

その岡本氏が、全メソッドを初公開した『世界最高の話し方1000人以上の社長・企業幹部の話し方を変えた!「伝説の家庭教師」が教える門外不出の50のルール』は、発売たちまち7万部を突破するベストセラーになっている。コミュニケーション戦略研究家でもある岡本氏が「やる気が爆上がりする世界最高の褒め方」について解説する。

 

岡本 純子(オカモト ジュンコ)
株式会社グローコム 代表取締役社長
「伝説の家庭教師」と呼ばれるエグゼクティブ・スピーチコーチ&コミュニケーション・ストラテジスト。
株式会社グローコム代表取締役社長。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業。英ケンブリッジ大学国際関係学修士。

米MIT比較メディア学元客員研究員。
1991年、読売新聞社に入社。経済部記者時代に、孫正義ソフトバンク社長など、世界の経済人、政治家を多数取材する。

2001年に退社後、渡米してメディア研究に従事したのち、電通パブリックリレーションズに入社。

「PRコンサルタント」として日本のトップリーダーのメディアトレーニング、プレゼンコーチングを始める。
2014年に再び渡米し、ニューヨークで、俳優や大学教授、企業エグゼクティブ、ボイストレーナー、ボディランゲージやプレゼンの専門家たちから、「グローバルリーダー」のコミュニケーション術を学ぶ。帰国後、株式会社グローコムを立ち上げ、以後、エグゼクティブ向けコミュニケーションコーチ、企業PRコンサルタント、ジャーナリストとして活動する。



*「褒める=甘やかす」が浸透している日本社会・企業

みなさんの今年の抱負は何でしょうか。

もし、決めていないということであれば、「もっと周りの人にポジティブな言葉を贈るようにする」はいかがでしょうか?

みなさんは日ごろ、周りの人を褒めていますか?  

海外のエグゼクティブと一緒に仕事をすると、この「賞賛力」が非常に高く、やる気が大いに刺激されます。 

一方で、日本では「褒める」ことが「人を甘やかす」ととらえられ、否定的に受け止められがち。

日本のエグゼクティブはダメ出しをすることが仕事だと思い込んでいるような節があり、とにかく「褒め下手」な人が多い印象です。 

これまで「話し方の家庭教師」として、1000人を超えるエグゼクティブに寄り添ってきましたが、みなさん口をそろえて「褒められるとやる気が出る」とおっしゃいます。

とくに地位が上がるほど、褒められることがなくなるからだそうです。 

弊社の行った調査では、8割の人が「褒められたい」と思っているのに、実際に褒められているのは4割。若い女性は褒められやすい一方で、とくに、40~50代のおじさま世代はほとんど褒められていない実態が浮かび上がりました。 

もちろん、褒めすぎはよくないかもしれませんが、とにかく、日本社会・企業はあまりにも「褒めなさすぎ」です。 

「学生時代に先生から言われた褒め言葉で、人生が変わった」。そんな話はよく聞きます。「絵がうまいね」「歌の才能があるね」。

たった一言でも人生を変える可能性があるわけです。 

「褒める=甘やかす」は大いなる誤解ではないでしょうか。

そんな日本文化の中でも、「褒め力の達人」ということで思い浮かぶエグゼクティブが、実はいます。 

「褒め力の達人」として私が真っ先に思い浮かぶエグゼクティブは、私が以前スピーチの原稿を作成するお手伝いをした資生堂の魚谷雅彦社長です。 

新刊『世界最高の話し方』が出る少し前、私は「以前、仕事でご一緒させていただいたものです。覚えていただけていないかもしれませんが、この度、本を出版することになり、社長のエピソードも使わせていただきました。本を送らせていただいてもよろしいでしょうか」というメールを彼に送りました。 

すると、メールの送信からなんと30分後に、こんな返信が来たのです。 

 

*行動に焦点を当てて、より具体的に褒める

社長のご了解を得て、全文を紹介します。 

岡本さん、

ご連絡ありがとうございます。

お元気そうで何よりです。

もちろん覚えています。日本にはスピーチのコンサルタントはいないことはないですが、グローバル視点で、英語ベースの戦略コミュニケーションをデザインして、実務指導できる人はあまりいない中で、岡本さんと接点ができたことはとても嬉しく思ったので、よく覚えています。

この危機を乗り越えるためには、コミュニケーションの量と質が重要です。

特にリーダーのあり方、オープンなダイアログ、インスパイアする発信…日々努力の最中です。そういう時に今回のご出版は、非常に的確なタイミングではないでしょうか。

ぜひ読ませて頂きますし、また当社でもお世話になることもあるかと思います。

会社の方にお送りいただけると幸いです。

ぜひ役員みんなにも買わせて読ませます。

その素早さ、そして、具体的かつ気持ちのこもった「褒め言葉」。私の人生でもこんな素晴らしい賞賛の言葉をもらうことはそうそうありません。

本当に心が震えました。 

そしてこのメールは、「褒め方の3原則」を満たした、まさに「お手本」といえると思うのです。 

3原則とは、以下の通りです。 

①(該当する行動の直後に)すぐ褒める

② 具体的に褒める

③ 気持ちを込めて褒める

その頭文字をとって「す・ぐ・き」のルールとして紹介しています。

 

*褒め方の3原則「す・ぐ・き」のルール

何か褒めるべき点があれば、「全部終わったあとに」「思い出したように」褒めるのではなく、「すぐに」褒める。

そうすることで、何が賞賛の対象になったのかがすぐにわかります。 

また、たんに「よかったね」で済ませるより、「この書き方、すごくいいよ」「いまの話、すごく説得力があったよ」というように、「行動」に焦点を当て、より具体的に評価するのです。そのほうが、日ごろからきちんと目を配っていることが伝わります。 

そして、何より、おざなりでありきたりな言葉ではなく、「気持ちのこもった言葉」でなければなりません。 

魚谷社長のメールは、そのスピード感、「どういった点がよかったのか」というと極めて具体的な内容、そして、他人行儀な褒め方ではなく、気持ちが伝わってくる真摯な言葉……。

 「すぐ」「具体的」「気持ちを込めて」の「す・ぐ・き」のルールに沿った、まさに「超一流の褒め技」がぎっしり詰まっていました。 

以前、魚谷氏の下で働いていた知人は「転職する最後の日に、直接彼から電話がかかってきてびっくりした」と話していました。

 知人が辞める前に、魚谷氏は、すでに別の会社に移っていたそうですが、その精いっぱいの励ましのメッセージに感動したそうです。 

きっと、こうしたエピソードには事欠かない方なのかもしれません。彼がコミュニケーションに並々ならない情熱を注いでいるという話はあちこちで耳にします。 

世界のトップエリートほど、きちんと「相手を育て・動かす一流の褒め方」を身につけており、それによって、まわりの人の心をわし掴みしているものなのです。 

超一流の達人は、一言で終わらせるのではなく、以下の4つの要素を組み合わせて褒めます。

 

*一流の褒め方は「4つの要素」が組み込まれている

「承認」――相手の存在や行動に気づき、認めること

(例)

「なるほど、そういうやり方もあるね」

「最近、目の色が違うね」

「お母さんは毎朝早くから、お弁当づくり、大変だね」

 

「共感」――相手の気持ちや意見に同調し、賛同・肯定をすること

(例)

「その気持ちすごくわかるよ」

「そのとおりだね」

「つらかったでしょう」

 

「賞賛」――優れた点を褒めること

(例)

「いいセンスだね」

「非常に勉強になったよ」

「さすがプロの仕事だね」

 

「感謝」――「ありがとう」と礼をいうこと

(例)

「いつも、きめ細かく気を配ってくれてありがとう」

「的を射たアドバイス。感謝の気持ちでいっぱいです」

 

それぞれの言葉「承認(みとめる)」「共感」「賞賛(褒める)」「感謝」の頭の1文字をとって、「ミカンほかん(保管)の法則」と名付けています。

先ほどの魚谷社長のメールにも、この4要素がふんだんに盛り込まれています。 

たんに「すごいね」と褒めるのと、この4つを組み合わせながら褒めるのでは、効果がまったく違うのです。

例えばこんな感じです。 

●「大口の契約がとれたそうだね」(承認・認める)

●「なかなかうまくいかず、つらい思いをしたから、余計うれしいよね。その気持ちはよくわかるよ」(共感)

●「チームのメンバーにも気を遣い、お客様への心配りも素晴らしかった。よくがんばったよ」(賞賛・褒める)

●「心からおめでとう。そして本当にありがとう」(感謝)

 

*「ポジティブな言葉」であふれた1年を

おざなりな「お疲れさま」の代わりに、「1日、笑顔でがんばってくれたね。お客さんも喜んでいたよ」。

「ごちそう様」だけではなく、「やっぱり、〇〇さんの××は史上最高においしいね」。 

「がんばったね」だけでなく、「もう宿題終わらせたなんて、すごく成長したよね、すごいよ」。

もう一声「盛ってみる」ことで、気持ちの伝わり方が変わってきます。

 どうですか。こんな声掛けをされたら、子供も部下も、やる気がぐんと上がるのではないでしょうか。

「食べるもの」が体を作るように、「発する言葉」が心を形作ります。

 

 今回紹介した「3つの原則」と「4つの要素」を盛り込んだ「7つの秘訣」を使えば、「世界最高の褒め方」は誰でも、今日から実践可能です。

 みなさんの2021年が、「世界最高の褒め方」で「ポジティブな言葉」にあふれた、周りの人がぐんぐん育つ1年になりますように。

 

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