おがわの音♪ 第1060版の配信★


中国包囲網は日本の国益。なぜ親中ドイツは習近平を見捨てたのか?

2020.10.05

 

米大統領選の候補者2人による第1回討論会では本質が論じられなかった「米中対決」ですが、ここに来て各国の対中政策に大きな変化が起きているようです。元国連紛争調停官の島田久仁彦さんが、親中ドイツの「中国切り敢行」により習近平政権との対決へと舵を切ったEU諸国をはじめ、各国による中国包囲網が強化されつつある現状を解説。

さらに菅新政権に対しては、「米中双方に顔が利くアドバンテージを活かした外交をすべし」との提言を記しています。


 

*Chinaと“決別”する世界

米中対立が激化する中、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが世界各国を襲い、そこで生じた混乱に乗じて中国が勢力圏を広げてきました。

マスク外交や医療戦略物資の供給、そして資金援助などを通じた“コロナ外交”を武器に、アジア各国、アフリカ諸国、中東諸国、そして中東欧諸国と南欧諸国へと親中派の形成が進んでいました。9月25日ごろまでは、親中派増勢計画は着々と進んでいたように思います。

欧州では、EUによる対中批判のブロックや骨抜き(ギリシャを中心とした動き)、準加盟国セルビア共和国による中国賛美とEU批判、英・独・仏のコア国の切り崩しなどが進められ、アメリカのトランプ大統領が呼びかけた対中制裁への参加をためらわせるきっかけとなりました。

アジア諸国(ASEAN)では、カンボジア・ラオス・ミャンマーが進めていた“諸手を挙げての中国賛美”が影響し、ASEANとしての中国非難を弱めるかブロックしてきました。

アフリカ諸国、中東諸国の外交的支持も取り付け、中国の覇権拡大は確実視されてきました。

ついに米中の2ブロック化が進み、他国はそのどちらに与するのかを決めないといけないという状況になるのではとの懸念も高まりました。

しかし、その潮流が今、大きく変わろうとしています。

そのきっかけは、やはり欧州各国による対中政策180度転換でしょう。

これまで欧州各国は共通して、経済・貿易政策上、中国への依存度が非常に高く、Chinaマネーと技術は欧州各国の“毎日”にしっかりと組み込まれていました。

アメリカが制裁対象にするHuawei社も、最初の欧州拠点をドイツに置き、その後、各国に普及していったという経緯から、Huaweiに対する態度も温度差がありました。

そのような経緯から、トランプ大統領が求めてきた対中強硬策は見送ってきました。

しかし、この潮目が変わったのが、欧州各国からの懸念と抗議にも関わらず、香港国家安全維持法の制定と人権弾圧(新疆ウイグル、チベットなど)が強行され、そして新型コロナウイルス感染症発生の情報を習政権が隠ぺいしていた疑惑が確証に替わると、最も中国と近しいと思われていたドイツ政府が中国切りを敢行すると、フランスをはじめとする他のEU諸国も中国との対決へと舵を切りました。

その証がドイツアジア戦略の大転換と呼ばれた【インド太平洋外交のガイドライン】とフランスの【インド太平洋国防戦略】の発表でしょう。

この動きを止めようと、中国政府も王毅外相を急遽派遣して5か国首脳と会談させましたが、すでに報じられているように、各国とも丁寧に王毅外相を遇したようですが、歩み寄りは全く見られませんでした。

これに習近平国家主席が激怒し、「中国は人権の教師は不要!!」とメッセージを送り、欧州各国に“警告”を送りましたが、EUはこれまで数年かけて進めてきたEU-China経済・貿易協定の交渉を打ち切り、中国との対決を選択しました。

これにより“西側自由諸国”の温度差が縮小したのみならず、中国が画策していた欧州の分断もとりあえず阻止できたようです。

 

*ASEANの親中国ですら習近平政権に懸念を表明

この流れは、これまでブリュッセルをはじめ、北西の裕福な欧州に対抗してきた中東欧諸国もChina Feverから目覚め、マスク外交への謝意は示しつつも、中国による世論と政治のコントロールを警戒し、EU内でのわだかまりを横において、欧州一体となって中国切りに参加することにした模様です。

その結果、【インド太平洋戦略】を旗印に日米豪とASEANに接近することで外交的な方向性を転換し、EUのアジアシフトが加速しています。 

【中国に威圧されない、自由で開かれた地域の維持】を謳う日米の“インド太平洋戦略”に欧州が参加することになりました。 

この背景には、英国のTPP参加への関心の高まりと加盟交渉の開始、フランスの安全保障政策のアジア展開とインフラ整備のパートナーを中国から日本に転換するという政策上の転換、そしてドイツの中国一辺倒からの脱却があります。

結果、EU各国は、「中国によるtoo muchな圧力に人々の自由が侵されてはならない!」との精神の下、経済・貿易の多様化を兼ねて、ASEAN/アジア太平洋諸国とのパートナーシップを強化し、次の世界経済発展のパワーハウスとなるインド太平洋地域における権益の確保と影響力の獲得に動き出しました。

これに加えて、年々中国の食指が伸びている南太平洋の欧州の権益獲得という地政学的な思惑も見えてきます。

例えば、referendum(国民投票)を行ってフランスからの独立の是非を問うニューカレドニアや、英国の影響がまだ強く、地域・島ごとに州首相を置くソロモン諸島の分離独立運動などへの中国の影響力の波及を、EU各国は危惧しています。

これらが独立した場合、単独での経済活動は無理だと考えられ、そこに膨大な中国の経済力を投入することで、南太平洋において中国が影響力を拡大することに懸念を持っているということになります。

そしてこの懸念は、オセアニアのオーストラリアとニュージーランドも共有し、今、インド太平洋戦略を、別名【対中国防衛網】と位置付けて、中国包囲の幅が大きく拡大してきました。

ゆえにフランスや英国がインド太平洋における合同軍事演習への参加を拡大したり、自由で開かれたインド太平洋での協力構築と中国に対する抑止力拡大のため、日米豪インドと協力した枠組みを近く構築したりすると言われています(Xデーとされるのが、10月6日に東京で開かれる予定の日米豪印のインド太平洋パートナーシップ外相会合と言われています)。

では、これまで親中派と対中ハードライナーが併存し、組織としての対中政策を決めることが出来ずにいたASEAN(東南アジア諸国連合)はどうでしょうか。

ASEAN諸国に共通しているのは、【中国との経済的な結びつき】や【受ける恩恵については重視】するが、【南シナ海を舞台にした中国の傍若無人な強硬姿勢に対しては深刻な懸念を有する】という点です。

これまでは、カンボジア・ラオス・ミャンマーという超・親中国のグループは、国際社会、特に欧米諸国を中心とする支援国から、人権問題を盾に支援を断られたり、条件の見直しを求められたりしてきた国ですが、そんな内政干渉または価値観の押し付けにも思われるようなことは“一切気にせず”、ただ単に経済的な利益だけで支援をしてくれる中国はありがたい存在でした。

ゆえに、国際社会において中国の人権問題などが大きな批判に晒される際は、外交的にことごとく中国支援に回ってきました。

それは、ASEANにおいて、中国に厳しい態度で臨むべきという対中ハードライナー国(ベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンなど)に対抗して、中国に対する制裁などには反対してきた要因です(そしてASEANを機能不全に陥れました)。

ところが南シナ海において中国の軍事化が進み、それにアメリカが予想以上の反対を示したことで、米中の直接的な武力衝突が起こるのではないか、との恐れから、中国に自制を求めるうえで、先月中旬辺りから親中国でさえ、懸念を表明するようになってきています。

それには【アメリカの影響力を地域に再度引き込みたい】との思惑もあり、米中双方と“適切な”距離を保つことで“逃げ道”を確保しようという思惑が透けて見えます。

ちょうどアメリカ大統領選挙に向けた時期と重なるおかげで、今のところ、米中双方から「どちらかを選べ」というような圧力は小康状態と言えるかと思います。

 

*加速する各国の中国離れ

しかし、同じアジアでもインドだけは違います。

経済の中国依存が高まっていることは大きなジレンマとしてモディ政権を襲っていますが、中国がコロナの混乱に乗じて歴史的な境界線論争を武力で終わらせようという試みには断固として反対しています。

中印双方にそれなりの犠牲が出ていますが、今、インドにちょっかいをかけることは、中国にとっては一種の賭けとなっています。

インドはこれまで災害時でも自力で再建するのだ!という姿勢を保ってきましたが(ゆえに地震や大洪水に見舞われた際にも、支援を断ってきました)、中国の迫りくる脅威に対する抑止力という観点から、日米豪とともに4か国の枠組みを作り、インド太平洋戦略を通じ、安全保障上の協力を深めています

今、そこにインドと歴史的な繋がりが深い英国や、経済的なパートナーシップが存在するドイツなどが加わり、中国の勢力拡大に対する防波堤の役割を強めようとしています。

それはもちろん、地域における緊張の高まりにもつながりますが、コロナへの対策の失敗や行き過ぎた中国の経済的な侵襲に対する国内からの反感を抑えるためにも、パートナーと共に中国に毅然と対峙しているという姿勢は、インドの政治的安定も助けていると言えます。

そこにアメリカと台湾の急速な接近が加わり、アジア太平洋地域およびインド太平洋地域は一気に中国包囲網が強化される様子が窺えます。

中国と台湾の直接的な軍事対決は起こらないだろうと見ていますが、もし起きた場合は、この包囲網に参加している様々な国々が一気に中国と対峙するか、もしくは、不干渉を貫いて様子見をするのかになりますが、間違いなく大きな緊張が生まれるでしょう。

一つハッキリ言えることは、ここにきて、各国の中国離れが加速していることでしょう。

それに対して中国の習近平体制と共産党体制がどのような策を講じてくるか。非常に注目です。

菅政権に変わった日本は、米中双方とどのような距離感で外交を行うのでしょうか?双方に顔が利く非常に特異なアドバンテージを活かしてもらいたいと願います。

 


なぜ能力が低い人ほど自分の脳力を著しく過大評価するか

  能力がないのに自信満々な人、かならず話をややこしくする人など、世の中は「面倒くさい人」に溢れています。

そんなタイプと日常的に付き合うことを余儀なくされているという方、多いのではないでしょうか。

【日刊デジタルクリエイターズ】』の編集長・柴田忠男さんが紹介しているのは、読めば「面倒くさいと感じる身近な人の心理に理解が深まる」という一冊。さらに本書には、「自身が面倒な人と思われないためのヒント」も記されています。

 

 なぜあの人は他人を疲れさせるのか?職場からご近所、親戚関係まで、社会に蔓延する「面倒くさい人」のメカニズムを、心理学博士が徹底的に解剖する、と謳った新書。

タイトルに興味を持ったので読んだが、もはや隠居の私は他人とリアルで関わることが殆どなくなったので、この本に出てくる「あー、ホント面倒くさい」と思う相手は存在しない。妻は別だが、そこはおいといて。なにしろ私は過去何十年も「面倒くさい人」といわれてきた。理由はわからないウソ

著者も、ある種の人たちにとっては、「ものすごーく面倒くさいヤツ」のようだ。

心理学を専門にしていると、単に人を観察するだけでなく、人の反応を参考にしながら自分自身を振り返ることが多いため、そうした自己認識もちゃんとあるというが、自分なりのこだわりは持ちたいという。

悪い人じゃないんだけど「面倒な人」は確かに存在する。何年も関わっている市の委員会では、主流派にとって私はそういう存在だ。

それはおいといて、周囲の人がとても面倒くさがっているのに、本人は平然としていて、そもそも自分が面倒くさい人物になっているという自覚がない。周囲を苛つかせているということに気づかない。だから困る。いるんだな、今も昔も、そういう人が。

そんな人物のために生活をかき乱されてはたまらん。

何とかうまくかわす術を身につければ、心のエネルギーを吸い取られずにすむ。

そのためには、身近によくいる面倒くさい人の行動パターンや、その背後で作動している心理メカニズムを知ることが必要だ。って、素人には無理な話だから、MP人間科学研究所の代表が、10タイプある「あの人」の正体をわかりやすく説明してくれる。

さらに、その面倒な人の背後に潜む心理メカニズムを解説する。

手がつけられないくらい「話をややこしくする天才」とどうつきあうかをアドバイスし、最後は「面倒な人と思われないために」はどうすべかを示唆する。

現役向けの本だから、私が読んでもあっそーなの、で終わってしまいそうだが、実は私も「面倒くさい人」を卒業した好々爺ではないことを実感するのだった。

能力の低い人ほど自分の能力を著しく過大評価しており、逆に能力の高い人は自分の能力を過小評価する傾向があることを実証したのが「ダニング=クルーガー効果」である。

能力の低い人は、ただ何かをする能力が低いというだけでなく、自分の能力がまだまだ低いことに気づく能力さえ低いということだ。

まさに、このことが、なぜか仕事のできない人ほど不釣り合いな自信をもっている理由といえる。

そうだったのか。できないくせに「できるアピール」をする妙な自信を持つ部下に手を焼いている人よ。

本人は自覚していない、できるつもりでいる。だからこそ面倒なのである。バカは死ななきゃ治らない。

「本書を読むことで、面倒くさいと感じる身近な人の心理に理解が深まり、イライラが軽減し、寛容になれた。自分がどんな人を面倒くさいと感じるかをはっきりさせることで、自分の弱点や偏りに気づくことができた。そんな反応を期待したい」と後書きにある。

働き盛りの人にお奨めしたい。


 ダニング=クルーガー効果

この効果が正式に定義されたのは1999年であるが、優越の錯覚を生み出す認知バイアスが存在することは、歴史を通じて古くから言及されている。

古代中国の思想家孔子は 「真の知識は、自分の無知さを知ることである」と語り、古代ギリシアの哲学者ソクラテスは「無知の知」について語っている。他にはイングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアは「愚か者は自身を賢者だと思い込むが、賢者は自身が愚か者であることを知っている」(自身が作成した喜劇『お気に召すまま』より)、生物学者のチャールズ・ダーウィンは「無知は知識よりも自信を生み出す」、哲学者で数学者のバートランド・ラッセルは「私達の時代における苦しみの一つは、確信を持っている人間は愚かさに満ちており、想像力と理解力を持っている人間は疑いと執拗さに満ちていることだ」と、それぞれ語っている。



メール・BLOG の転送厳禁です!!  よろしくお願いします。