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生物が「オスとメスとに分かれた」究極の理由

多様性を求めたからこそ人間は絶滅から逃れた

五箇 公一 : 生物学者

2020年09月21日


なぜ人間を含む多くの生物は「オスとメス」に分かれたのか?

なぜ生物の多くがオスとメスに分かれたのか?

『NHKクローズアップ現代+』の解説を務める一方で、『全力!脱力タイムズ』などさまざまなメディアに出演する異色の生物学者・五箇公一氏による『これからの時代を生き抜くための生物学入門』より一部抜粋・再構成してお届けする。


 最初に性とはなにか? みんな考える設問ですね。

ほとんどの生物にオスとメスがいて、人間なら卵子と精子が接合することで子ども、子孫が生まれるという「有性生殖」を行っています。

生殖には「有性生殖」と「無性生殖」の2種類があります。無性生殖は自らの分身を作る形で増える方法で、いわゆる「クローン繁殖」のこと。アメーバ、ミドリムシ、ゾウリムシ、イソギンチャク、クラゲ、昆虫類、ダニ類など、どちらかというと進化の歴史上、古めの生物によく無性生殖が見られます

一方、われわれ人間を含め脊椎動物だと「無性生殖」はあまり見当たりません。少なくともわれわれが日常で目にする生物は植物でも動物でも性がある有性生殖が一般的。

でも考えてみれば、なんでメスとオスという性が存在するのか、不思議に思えませんか?

単純に増えることだけ考えれば、無性生殖の方が効率はいい。オスの存在なんて必要がなく、自らを分裂させて、あるいは自らのコピー遺伝子を持った卵を生んで増殖ができる。でも、増やす効率は一番いいんですが、同じ遺伝子セットのコピーを繰り返すため、増えた個体間には変異がない。環境が安定していればそれでも問題はないのですが、水質が悪くなる、気温が高くなる、エサが不足するなどの環境の悪化が起これば、全個体が適応できずに共倒れ=絶滅してしまいます。

原初の生物は「性別がなかった」

地球の歴史を振り返ってみると、生物の原初は無性生殖の方が優勢だったと考えられます。

しかし、地球環境の変化が起こるたびに、適応できなかった無性生殖生物は滅び、一方で手間のかかる有性生殖生物の中から適応できる個体が生き残る、という淘汰が繰り返されてきた。その歴史の中で、性を持つ生物が高等生物の中では一般的になったと考えられます。

もともと性ができた究極要因は、遺伝子を交換=シャッフルして、多様性を高めることだったのです。

無性生殖=クローン増殖だと、同じ遺伝子コピーを持った個体ばかりになって多様性がありません。そのため、環境変化に耐えられずに滅んでしまう確率が高い。もちろん無性生殖する生物でも、遺伝子の突然変異、すなわちDNAのコピー・エラーによって、新たな遺伝的変異を手にすることはあります。しかし、その頻度は極めて低く、急激な環境の変化にはついていけません。

そんな中で、生物が編み出した戦略が、個体同士でお互いに持っている遺伝子を交換して新しい遺伝子セットを生み出すという「有性生殖」だったのです。ここで有性生殖の進化原理として「赤の女王仮説」が出てきます。

これは「生物は進化し続けなければいけない」という仮説です。

ルイス・キャロルの『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王は、その場にとどまるために、全力で走り続けます。それは生物が変わり続ける自然環境の中で、自分の立ち位置を維持するために変化し続けることと似ています。そこから名付けられました。

生物の誕生はまさに「奇跡の連続」

そもそも生物とはどのように誕生したのか。最新の研究データに基づけば生物誕生はまさに奇跡の連続の産物だったとされています。その説のひとつに「ジャイアント・インパクト説」があります。

今から45億5000万年前、誕生して間もない地球に火星と同じ大きさの星が衝突するという一大事変が起こりました。この衝突によって地球の一部がえぐり取られて、宇宙空間で固まって地球の周りを回る衛星ができました。

月の誕生です。ぶつかった衝撃で灼熱のマグマの塊となった地球と月は徐々に冷やされていき、地球上では水蒸気が雨となって降り注ぎ、今から43億年〜40億年前の間に海が誕生しました。その間も地球には無数の隕石が落下を続け、生命の原材料となるアミノ酸などの有機物が隕石とともに海中に持ち込まれたと考えられています。

当時、は今よりずっと地球の近くを周回していて、その引力によって、海は激しく波打ちました。この波動の中で、海中に溶け込んでいる分子同士が結合して、遺伝子=DNAの基となる核酸といわれる物質が生成されました。そして高い波によって常に波打ち際に漂い続ける無数の「泡」の中で、この核酸という物質が取り込まれて濃縮し、核酸同士が鎖状につながり、DNAが偶然に合成されましたこのDNAこそが自身のコピーを作る能力を持つ物質であり、生命の「核」となったのです。

最初の生命は膜の中でDNAのコピーを作るだけの単純なユニットでしたが、やがてDNAの情報からタンパク質が合成されるシステムが完成し、タンパク質から細胞というDNAの入れ物が作られ、単細胞生物が誕生しました。

このとき細胞同士の増殖競争が始まりました。よりたくさんのコピーを残したものが勝ち、という生物の基本原理」の登場です。正確にはDNAが誕生したときからDNA同士の増殖競争は始まっていました。ですが、単細胞生物が誕生したことにより遺伝子同士の競争が、生物同士の競争に置き換わったわけです。

ただし、「競争」といっても、遺伝子や細胞に意思があって増え始めたわけではありません。単に限られた資源の中で先に増えて資源を消費した方が「生き残る」という結果論にすぎず、増える=コピーを繰り返す、というDNAの化学反応自体は偶然に生み出されたものなのです。

やがて単細胞生物同士がくっつき多細胞生物が誕生し、多細胞生物はさらに複雑な構造を持つ生物へと変化を繰り返していきました。単細胞生物にしろ、多細胞生物にしろ、最初のうちは無性生殖=自身のコピーで増殖をしていました。

寄生者であるウイルスとの戦い

ところが、ここで困ったことが起こり始めました。

生物が高度化するに従い細胞にとりついてエネルギーをもらおうとする寄生者が進化してきます。これがウイルスバクテリアなどです。宿主としてはエネルギーを吸い取られたら、当然増殖の効率が落ちてしまいます。

だから、宿主である細胞生物体もエネルギーを取られないように進化します

例えば、細胞の殻を硬くして寄生者が侵入しにくくしてみたり、免疫を発達させたりと、抵抗力をつけるわけです。そして寄生者もそれを突破しようと自身の構造を変化させ、宿主との間で進化のいたちごっこが始まります。

これを軍拡競争型共進化といいます。

そのとき、分がいいのはDNA構造が単純で世代交代の早い小さい寄生者です。次から次へと新手の寄生方法が編み出され、宿主は進化が追いつかなくなります。

寄生者の素早い進化とは、宿主にとっては、自らのコピーの存続に関わる劇的な環境の変化にあたります。この絶え間ない環境変化に対抗するために宿主生物が編み出した戦略が「遺伝子を宿主の間で交換する」という画期的な方法、すなわち有性生殖でした。この方法によって、宿主生物集団内の遺伝子の多様性を高めることで、寄生者の蔓延を防ぎ、それぞれの宿主生物の子孫を残す確率を上げたのです。

ただし、有性生殖が登場した時点ではまだオスとメスという性は存在しませんでした。例えば、単細胞生物のゾウリムシは普段は無性生殖で増えますが、ある程度、細胞分裂を繰り返すと、ほかの個体と接合(いわゆる合体)して、お互いの遺伝子の交換を行います。この接合は有性生殖の先駆けと考えられます。

ゾウリムシにはオス・メスの区別はなく、異なる遺伝子を持つもの同士で行われます。接合の後、分かれたゾウリムシはまたそれぞれ細胞分裂によるクローン繁殖を繰り返します。

多細胞生物になるとゾウリムシみたいに細胞同士の接合という単純な形での遺伝子の交換は難しくなります。

そこで、自身の遺伝子セットが半分入った生殖細胞を体内で作って、それを他個体の生殖細胞と合体させることで新しい遺伝子セットの子孫を生み出すという生殖様式を進化させました。つまり精子と卵子の合体=受精です

「男と女の体」に違いが生まれた理由

しかし、ここでまた疑問が生まれます。

なぜ精子と卵子というふたつの生殖細胞が進化したのか、ということです。そしてこれこそが性の分化の根源でもあるわけです。生物が複雑化・高度化するにつれ、成長に時間がかかるようになります。配偶子が接合して細胞分裂を始めて個体に成長するまでの過程を胚発育といいますが、この胚発育には栄養素が必要となります。栄養を外界から吸収したのでは、環境に左右されて途中で成長が失敗するリスクが高くなります。そこで胚が個体になるまでの栄養を蓄えた配偶子として卵が進化ます。

一方、卵は栄養を蓄えた分、個体は大きくなり、生産量を稼ぐことが難しくなります。つまり1回に生産できる数に限りが生じます。数が減れば配偶子同士が出会う確率は低くなってしまいます。そこで限られた卵子に対して、サイズを小さくすることで、大量に生産可能な配偶子が進化します。これが精子の進化です。さらにこの小さな配偶子には、大きくて動きにくい卵子との遭遇確率を上げるための運動性も備わるようになりました。

こうして配偶子に卵と精子という二型が生まれ、それぞれを生産するのに特化した個体としてメスとオスが生まれました。生物が進化して複雑になるにつれ、メスとオスの間の形態的・機能的な差異はどんどん大きくなっていきました。

これを性的二型といいます。

高等動物では、機能的な制約で、メスとオスの分化がどんどん進みました。

人間でいえば、女性が子どもを生む。男性が狩猟をする。そのようにそれぞれの役割が特殊化すればするほど、女性と男性の体格差は大きくなっていったのです。

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 2020.09.22. 秋分の日の「夕焼け」をBLOGにアップしました。

関西エリアでは、特に真っ赤に燃える「夕焼け」現象について、以下 気象予報士の説明です。

大阪など関西の空が染まる4連休を締めくくる真っ赤な夕焼け

前線の北上によって空気中の水蒸気が増えたことや、雲が少ない西側からの長い距離を通って届く光が、普段以上に散乱されて、より赤く見えていると考えられます。
夕焼けは晴れの前兆という言葉があるものの、今日の夕焼けはむしろ前線接近の証。

明日9月23日(水)は近畿でも雨が降りやすくなる見込みです、との話でした。


☞ 空はなぜ青くて、夕焼けはなぜ赤い? 

光は、太陽から降り注ぐ電磁波の一種で、その中で人が目で感じることができる波長のものを

可視光線」といいます。

可視光線は、波長の短い方から紫・藍・青・緑・黄・橙・赤の順の虹の七色です。

また、紫よりも波長の短い光は紫外線、赤よりも波長の短い光は赤外線です。

 

太陽から届く可視光線は、すべての波長が重なると、ほぼ白になります。

では、なぜ空が青く見えるのでしょうか?

それは、波長の短い青の光は、空気の分子などにぶつかると早く散乱して空に広がるからです。

最も波長が短い紫ではないのは、紫の光が青の光のエネルギーに比べて弱く、平地では人間の目まで届かないためですが、高い山に登ると、暗いぐらいの紺碧の空を見ることができます。

 

一方、日の出や日没のときに空が赤や橙に見えるのはなぜでしょうか?

朝や夕方は、太陽の高度が低く、光が空気の層を斜めから差し込むため、大気の中を通る距離が長くなります。

波長の短い青い光は、早い時点で散乱し、そのエネルギーが弱いため私たちの目に届く前に消えてしまい、波長の長い赤や橙の光だけが届くようになるのです。

 

このように、人の目は、細かな色の区別をつけることができますが、すべての動物が、この7色を見分けることができるわけではないのです。

人間は、犬や猫などの他の動物よりも、色を見分ける力が高く、その一方で、鳥は、人間が見ることのできない紫外線が見えます

こういったことを考えると、青く抜けるような青空や感動的な夕焼け、雨上がりの美しい七色の虹を見ることができるのは、人間の特権なのかもしれませんね。



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