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「3つのバブル」が崩壊する瞬間が近づいている

短期のコロナバブル崩壊はきっかけに過ぎない

小幡 績 : 慶應義塾大学大学院准教授
2020年09月24日

コロナ禍は終わっていないが、どこかの時点で収束して「コロナバブル」は崩壊する。しかも、これを含め「3つのバブル」が崩壊する可能性がある(写真:つのだよしお/アフロ)

 世界はこれからどうなるのか。

 

コロナは収束する。そして、バブルは崩壊する。正確に言うと、崩壊しそうだったバブルがもう一度、最後の膨張を見せ、崩壊する。

すでに株式市場はその最終段階に入っている。これがラストバブル、最後のバブルになる。


新型コロナがバブル崩壊を救ったという皮肉

2020年に入ったときに、少なくとも株式市場はすでにバブル崩壊寸前だった。ウーバーやウィーワークなどに投資していたソフトバンクグループ(ソフトバンク・ビジョン・ファンドなど)、そして、テスラ……。しかし、これらの崩壊寸前のバブルを救ったのは、新型コロナショックだった。FED(アメリカの中央銀行)は前代未聞の金融緩和を行い、同国政府の財政出動も、リーマンショック時の対応をはるかに超えるものとなった。暴落した株価はこれで急回復。S&P500種株価指数やナスダック総合指数などはコロナショック以前の水準を超え、史上最高値を更新し続けた。

 

市場は都合よく、コロナショックを解釈した。引きこもり生活で利益を急拡大したズーム、アマゾン、その他の半導体関連やネット関連企業の株価は暴騰し、政府の経済対策で救済される古いセクターの株式もリバウンド狙いで急騰した。

相場は主役を変えつつ上昇を続け、暴落したはずのNYダウも、コロナショック前の株価を一時回復した。

では、今回のバブルは維持可能だろうか?

もちろん崩壊する。現在からさらに膨らんでから崩壊するか、このまま一進一退するなかで崩壊するのか、それはわからない。だが、まもなく崩壊することは間違いない。その結果、すべてのバブルは崩壊するのだ。では、すべてのバブルとは何か?

大きく言って、バブルは「短・中・長期」の3つがある。最悪の場合、この3つのバブルが同時に崩壊するだろう。少なくとも、2つのバブルは確実に崩壊する。

そして、3つ目のバブルが崩壊すれば、時代は大きく転換し、新しい社会が生まれる。コロナだけでは社会は本質的には何も変わらないが、もしすべてのバブルが崩壊するのなら、社会は「まともなもの」に戻っていく。ひとことで言えば、約500年前のような状態に戻るのだ。

少なくとも「短期」「中期」2つのバブルが崩壊する

少し説明しよう。まず、コロナショックへの救済策で膨らんだ今回のバブルは崩壊する。これは必然だし、明快だ。いつになるかは議論があるが、崩壊することは確実だ。1つ目のバブル崩壊は、コロナバブルという短期バブルの崩壊である。

次に、中期バブルも崩壊する。中期バブルとは、複数の短期バブルからなる。短期バブル(循環)の繰り返しが中期バブル(循環)である。今回のコロナショックバブルは、その前のバブルが崩壊するのを防ぐために、金融市場を救済したことによって生まれた。その前のバブルとは、2009年以降約11年間上昇を続けていた株式バブル、不動産バブル、そしてそれらを生み出した根源である、世界的な国債バブルだ。

この国債バブルは、2008年のリーマンショックによる世界的な金融バブル崩壊の救済措置のために行われた、前代未聞の大規模金融緩和で生まれた。具体的に言えば、世界中の主要な中央銀行(日本を除く)が、国債を中心にリスク資産を自ら大量に買い込んだのである。

これは中央銀行が作った金融緩和バブルであった。要は、世界的な金融バブル崩壊の処理を先送りするために、中央銀行がバブルを意図的に作り、リスクは自らが敢えて抱え込んだ。そのバブルが崩壊しかかったときに、コロナショックが起き、コロナショックのために金融財政政策を総動員し、バブルは崩壊するどころか、さらに新しい短期バブルが生まれ、膨らんだのである。

すでにコロナショックがバブルになっている理由は、コロナショックが社会的には印象的な衝撃が大きすぎ、当初無秩序に救済策がとられたからだ。コロナショックは、急激な需要減少だが、それは短期限定的で、需要減少の総量としてはリーマンショックよりも遥かに小さい。

また、ストックも傷んでいない。つまり工場の設備もインフラも多くのビジネスモデルも基本的には無事である。人々の不安が解消し、行動制限さえ緩和されれば、すべて元に戻る。さらに、銀行などの金融機関が、少なくとも直接にはほとんど傷んでいない。例えば不動産バブル崩壊で銀行の資本が毀損し、貸し渋り、貸しはがしなどが起きて、経済全体がバブル崩壊からの不況に陥ることはない。

それにもかかわらず、金融財政出動はまさに前代未聞であり、人類史上最大の救済策が採られた。一部の経済は過熱し、資産市場はそれ以上に過熱し、バブルが膨らむ以外にない。日本でもアメリカでも、投資経験のない個人投資家が、政府からの給付金で、ギャンブルに近い株式投資あるいは身近な銘柄(例えばアップルなど)へ投資し、この現象はロビンフッド現象とまで名づけられた。

実際にコロナショックが収束すれば、間もなく、どこかのタイミングでバブル崩壊となる。理由は単純で、バブルは膨らみ続けるか、崩壊するか、どちらかしかないからだ。そして、もはや、コロナショックバブルは膨らみ続けることはできない。なぜなら、膨らませる手段が尽きてしまっているからだ。

もし新型コロナウイルスの猛威が収まっても、次のウイルスがやってくる。「新型コロナにまつわる致命的な『3つの大嘘』でももふれたが、21世紀はウイルスの世紀で、この20年、ほぼ5年ごとに新たなウイルスが世界に脅威をもたらしている。「COVID-19」が最後のウイルスであることはありえない。

そのときには、再び財政出動が必要とされるかもしれない。しかし、それはもう不可能だ。財政は限界以上に支出してしまっている。これ以上支出するためには、中央銀行に引き受けさせるしかない。しかし、中央銀行は、コロナショックバブルの前の中央銀行バブルで、実質的に引き受けすぎている。もはや余地はない。金融市場のバブルは崩壊し、財政は破綻する。このどちらかは少なくとも必然であり、金融バブルと財政破綻が同時に起きる可能性が最も高い。

そして、金融緩和、財政出動と手段を出し尽くしてしまっているから、このバブル崩壊を救うためのバブルを作る余地はまったくない。ついに、バブル崩壊をごまかし、処理を先送りするためのバブルが作れなくなり、短期バブルの連続だった、中期バブルも崩壊する。

「中期バブルの起源」とは?

では、この中期バブルはいつ始まったか。1980年代末の共産主義圏の崩壊からである。これにより「平和の配当」が生まれたとされ、旧共産圏は市場経済への移行経済となり、絶好の投資機会を世界に提供したのである。フロンティア(新たな境界領域)の出現である。

中期の大きなバブルの波が生まれるには、3つの要素が必要だ。「流動化」「外部」「フロンティア」である。共産主義の崩壊は、西側諸国に、この3つを同時にもたらした。

その後、この移行経済バブルがはじけ、アジアを中心として新興経済バブルも1998年にはじけたはずだったが、アメリカを中心としたITバブルとなり、21世紀を迎えた。

しかし、そこで、2001年の同時多発テロや、エンロンショックなどがアメリカをたて続けに襲った。それを救済するために、金融緩和バブルがFRBのグリーンスパン議長の主導により、再度作られた。サブプライムバブルが生まれ、それは世界金融バブルとなり、崩壊してリーマンショックとなった。

前述したように、中期バブルの循環のなかで、短期バブルが繰り返されたが、それはバブル崩壊の処理を先送りするために作られたバブルであった、バブル・アフターバブルである。この中期バブルが、コロナショックバブルの後、完全に崩壊することになる。もはや新しい短期バブルが作れないからである。

そして、世界は財政破綻、金融危機に見舞われるだろう。

問題は、その後である。どうなるのか。

そこで3つ目のバブルである「長期バブル」の登場である。これからは、この長期バブルの崩壊となるかどうかにかかっている。

ここで長期バブルの循環とは、経済システムの循環であり、現在の長期バブルは、1492年以降の、世界の流動化以来始まった、近代資本主義というバブルである。

それ以前、欧州は、中世という固定化された世界のシステムで動いていた。それが大航海時代により流動化が始まり、「新世界」の発見という外部の登場、フロンティアの拡大、そして収奪などによる富の流入により、バブルが膨らみ始めたのである。

近代資本主義は、ひたすら、流動化を進めた経済社会システムであった。階級の流動化も起こり、宗教革命により権威の流動化も起こり、例えば貴族も流動化した。また資本も流動化し、それを蓄積し、拡大、増殖し続けようとする資本家が誕生した。その資本家も流動化し、分散化、大衆化し、資本は株式となり分割され、さらにそれは上場して分散し、極端に流動化された。そして、資本の移動速度は加速度的に速まり、人の移動も、社会の変化も、資本の戦いの勝負もスピードも速まり、栄枯盛衰の展開も加速した。そして、バブルは頻繁に短期に激しく起こるようになった。

「新しい中世」とも呼べる時代が到来するか

この長期のバブルが、ついに今回で終焉する可能性が、僅かだが、あるかもしれない。加速がこれ以上起きようがない、流動化がこれ以上起きようがないかもしれないからだ。

実際、政治権力よりも大企業の権力が強くなったが、企業は、その権力とビジネスモデルを、プラットフォームという言葉に示されるように、固定化しようとして、競争を激しく行っている。皆が固定化を目指すようになりつつある。流動化が限界を超えたとすると、これは近代資本主義という流動化の時代が終わり「新しい中世」とも呼べるような、固定化の時代、蓄積の時代が始まるかもしれない。

グローバル化が進み、外部が存在しなくなり、フロンティアも存在しなくなったことも決定的だ。長期バブル、近代資本主義が終わる可能性が見えて来てはいる。だが、新たな覇権国家を目指す中国が外部であり、外部になり、旧来からの欧米の覇権国家群を助け、新しい覇者となり、近代資本主義を延長する可能性もないわけではない。ただ、それがそもそも可能であるか危ういし、中国の意思が持続するかどうかもわからない。

したがって、第3のバブルである長期バブルが終わるかどうかは、現時点ではわからない。

しかし、その前の中期バブルが崩壊し、一定期間、激しい変化と流動化の時代から、違ったペースと様相の時代が来ることは間違いない。その”ミニ”新しい中世がどんなものになるか、今後、考察をする必要がある。

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「預金引き出し事件」あなたが安全といえない訳

「ドコモ口座事件」で考える今すべき「自衛策」

松崎 のり子 : 消費経済ジャーナリスト
2020年09月25日

NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」に端を発した不正引き出し被害が拡大している。 口座名義人ではない悪意ある第三者が、銀行口座から預金を決済サービスへと移動させ、勝手に使ってしまうという手口だが、とくに件数が突出していたのがゆうちょ銀行だ。

ドコモ口座(d払い)のほか、PayPay、LINE Pay、PayPal、メルペイ、Kyashでも被害を確認。ゆうちょはこれらの決済業者を含めた計10業者への即時振替サービスを停止した。被害は全額補償する方針だが、ぞっとするような事態が起きたことに変わりはない。

今回の犯罪は何らかの方法で入手した口座情報等を基に、預金者の名義で決済業者のアカウントを開設し、そのチャージ元として銀行口座をひもづけたことで不正引き出しが起きたのだが、口座ひもづけの際の本人確認が甘かったせいではと指摘されている

昨今、国策でキャッシュレス決済が強力に推進されてきた。国の未来投資会議で、決済インフラの見直しおよびキャッシュレスの環境整備は重点項目の1つとされ、さらに銀行は2017年の改正銀行法によって電子決済等代行業者との連携を進めよと求められてきた。

また、銀行免許を持たない事業者でも1件100万円を超える送金ができるようになる改正資金決済法も成立。新型コロナ禍も後押しし、決済のデジタル化をとにかく進めよと国を挙げて前のめりになっていたといえなくもない。残念ながら、その負の面が突かれた事件ともいえる。

われわれがサイバー犯罪を完璧に防ぎきることはできないだろう。

しかし、なるべく被害に遭わないに越したことはない。銀行利用者が、自衛策としてできることをいくつか挙げてみたい。(※以下の取り組みは各銀行のサービスによって異なる)

自衛のためにできること

ネットバンキングで通知メールの登録をする

今やどの銀行でも、インターネットやスマホアプリでのネットバンキングを推奨している。   オンライン上で取引確認ができるので、まだネットバンキングの登録をしていない銀行があれば早めにしておきたい。

とくに、通知メールの設定は忘れずに。ログインがあった、パスワードの変更があった、振り込みをしたなどの際にメールで通知が届くからだ。

一部のネット銀行は、普段使っていないデバイスからログインしたときもメールが来る。    どこまで通知してくれるかは銀行によって異なり、通知サービス自体がない銀行もあるが、その場合は銀行のスマホアプリや家計簿ソフトを利用して、定期的に確認する方法を取ろう。     セキュリティーを重視するなら、メール通知サービスがある銀行を利用するほうが安心だ。   とくに自分のメインバンクがどこまでお知らせをしてくれるか、改めて確認しておくといい。

送金や出金限度額を下げておく

ネット上での手続きで、自分の口座から振り込み・送金できる金額の上限を設けることができる。銀行によって異なるが、1回ずつの限度額、1日当たりの限度額というように上限を決めておけば、それを超えた送金はできない。あまり振り込む機会がない人なら、1回に送れる額を数万円まで下げておいてもいいのではないか。

また、ATMからの引き出し金額の上限は通常50万円だが、それをもっと少なくすることもできる。万が一キャッシュカードをだまし取られても被害を抑えることにつながるだろう。

最近のキャッシュカードはデビット一体型カードも多いが、デビット支払いの利用金額についても、1回当たり、1日当たり、ひと月当たりで上限設定できる銀行は多い。

個人の家計管理レベルなら、数十万円を一度に引き出したり支払ったりという機会はそれほどないのでは。振り込みも出金も、必要以上に高額の設定になっているようなら今のうちに変更しておこう。

すぐには引き出せない定期預金にスイッチする方法も

普通預金には多額のお金を置かない

給与振り込み口座にうなるほどお金があるという人は少ないかもしれないが、聞いてみると「給与口座に全部入れっぱなし」という人も結構いる。住宅ローンやカード利用料、公共料金の引き落としなどのために一定額を残しておく必要はあるが、なんとなくお金はそのまま……というのでは、もし不正引き出しのターゲットにされたら泣くに泣けない。

そこで、すぐには引き出されない定期預金にスイッチしておくのも方法だろう。

例えば、1カ月や3カ月といった満期が短い定期を月をずらして数本作り、自動継続にしておく。お金が必要なときには満期が来たものを解約すればよく、普通預金感覚で利用できる。もちろん、その金額をコツコツと積み立て投資に回すのも悪くない。証券口座にあるお金は、預金以上に簡単には引き出せないからだ……と思ったら、なんと9月16日にSBI証券で証券口座からの不正流出事件が起きてしまった。なんて世の中だろう。

休眠している口座は速やかに整理する

ほとんど使っていない口座は誰にもある。

大した金額はなかったはずと思っても、こうした事件が起きて該当の銀行に口座があったりすれば気になるものだ。そもそも通帳だってどこにあるかわからなければ残高確認のしようもない。  平時のうちに、使っていない口座は解約しておくほうがいいだろう。

それに、2年間取引がない口座(不稼働口座)に口座管理手数料をかけるという動きが銀行間に起きている。りそな銀行はすでに導入済みで、昨年には三菱UFJ銀行が2020年秋から年間1200円の手数料を検討しているとの報道が出た。

もし実現すれば、ほかのメガバンクもそれにならうことだろう。銀行はさまざまなコスト削減策や手数料の引き上げ・新設をもくろんでおり、使わない口座を抱えていることは逆に自分のお金を減らすことになりかねない。また、いざ不正被害に遭ったときも、口座数を適切に絞っていれば気づきやすいだろう。

ゆうちょ銀行はなぜ狙われたのか

ここまで自衛のためにできることを挙げてきたが、それで十分では決してない。というのも、改めて被害の大きかったゆうちょ銀行を見ると、書いてきた対策がほとんど実行できるのだ。

まずはメール通知。

連絡が来るのは、ログインがあったこと、振り込みなどの取引、ログインパスワードの変更や再登録時などかなり細かい。ログインするにも生体認証式やパスワード以外に合言葉が必要だったりと、結構面倒だ。さらに、振込金額の上限やATM等での1日の引き出し回数を決めたりもできる。推測でしかないが、もしゆうちょの利用者があまりネットバンキングを利用しない高齢者が多いとすれば、目をつけられやすいのだろうか。被害に遭った方々が、どんな手続きをしていたかは気になるところだ。

とはいえ、残念ながら「完璧な防御策」はない。今回の事件では、メールやスマホのSMS(ショートメッセージサービス)を利用したフィッシング手法により銀行の情報が盗まれていたのではとも言われている。

とくに最近では、宅配業者を装って不在通知をSMSで送り、URLをクリックさせることで偽サイトに誘導するといった手口が多く、各銀行が注意喚起をしている。メールであれSMSであれ、それに付帯しているURLはクリックしないに限る。

 

銀行のログインパスワードや何らかの暗証番号を入力する場合は、必ず正規のサイトから行うという慎重さが必要だ。

筆者はサイバーセキュリティーのプロから話を聞いて以来、携帯会社からスマホに届いたSMSのURLですら開かないでいる。どれが本物か、素人には絶対に見破れないからだ。実に嫌な時代だが、まずは自助だと新総理にも言われたではないか。改めて肝に銘じよう。

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